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七月の季節

【怪盗に告ぐ】
 取り返さなくちゃ、取り返さなくちゃ――!!

 僕は走った。全力で街を駆け抜ける。
「頑張れよ、少年探偵!!」
 そんな声援が僕の背中を押す。

 ハンチング帽を押え、石畳の街を駆ける。一体全体どこへ行った?? どこに隠れているんだ、怪盗め!! こんなにも大切なものを盗むなんて!! 街中の人が取り返してくれと声援を送る。それはもう誰もがそれを盗まれてしまったから。

 取り返さなくちゃ、みんなの為に取り返さなくちゃ!!

 そんな僕をあざ笑うように、怪盗は水の上を通り抜け、空を駆け、屋根の上でダンスを踊る。息も絶え絶えに僕は怪盗の背中に叫ぶ。

『怪盗め!! この少年探偵が絶対に取り返してやるからな!! 僕らの2月を、29日と30日を絶対に取り返してやる』

 不敵に笑う怪盗の手の中で光っていたあのきらめきが盗まれた日付だったのだろうか。この謎だけは、大人になっても、どれだけの犯罪者を捕まえても解き明かせない謎だ。
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