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七月の季節

【笑い顔】
 その年の教室の生徒はいつも笑っていた――。

 穏やかな年。教室の生徒はみんな真面目に、笑顔で授業を聞いてくれていた。休み時間も問題を起こす生徒はおらず、イジメも決してない。
 去年のクラスは本当に酷かったから、私はこんなクラスの担任になれて嬉しかった。

 半年くらい経った頃だろうか。一人の生徒が近づいてこんな話をし始める。
「ねえ、センセ。こんな話、知ってる?? 口がないキャラクターはね見た人によって表情が変わるんだって」
 笑顔でその話をしてくれた生徒の声は何処か震えていた気がしたが、気のせいだろう。

 それから数日も立たないうちにクラスに空席ができた。

 去年の悪夢が蘇る。ホームルームの時間、私は教壇からクラスをいつものように見回す。いつも通り笑顔のあふれる生徒達。
 何故みんな笑っているの?? こんなことが起きたのに。不安な気持ちのまま口を開こうとすると一人の女子生徒が立ち上がり私にこんな問いを投げた。

「ねえ、先生。先生はこのクラス全員の名前言える??」
「当たり前じゃない」

 この子は何を言うのだろうと思いながら笑顔で返事をする。

「じゃあ、あたしは誰??」

 そういって、鋭い目つきでこちらを睨む生徒に背筋が冷えていった。この子は誰??
 私のクラスには笑顔があふれていて、もう一度真剣に自分の生徒を見回した。

 “嘲笑”

 生徒の笑顔は嘲笑で、私の顔に張り付いていた微笑みが次第に剥がれ落ちていくのがわかった。
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