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七月の季節

【世界で唯一の椅子の話】
 とある惑星の砂漠の果てに木製の椅子が置いてあった。それは何の変哲もない、むしろボロボロの椅子。

 それでも多くの人は、その椅子に座ろうと必死になって金を積む。

 政治家。貴族。ときには一国の王。

 なんでもその椅子に座った人はその“星”を独り占めできるそうだ。

 広大な砂漠から、小さな一脚の椅子を探し出すのは至難の業で、まだ誰も見つけ出すことはできていないらしい。

 隣の国へ行くために、一人の旅人がその砂漠を渡っていたそうだ。居場所を決めることなく放浪を続けていた旅人。

 彼もその砂漠の椅子の噂は聴いていたと言っていた。だから初めは座るつもりはなかったそうだが、好奇心が勝ったということだ。

「あの椅子の噂は本当だったよ」

 そう。彼は見つけたのだ星を独り占めできる椅子を。日が昇っている間はなかったそうだが、夜になるとその椅子は夜風に吹かれて現れたという。

 椅子に座っている間、それも夜だけの間だけ彼は砂漠の真ん中で“月”を独占したと笑っていた。
 けれど、強欲な人達は未だに金を積み上げているのだから笑い種だ。地球を支配できると勝手に信じてね。
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