TAKE2.one more kiss
「なぁお前ってさ、キスすんの好き?」
最初何と問われているのか分からず、何の回文だろうかと思ってしまった。
部活帰り、今日あった面白い話や授業中のこと、部活で気になったことなどいつものように話していた時だ。それらと同じような調子で言われたのだから分からなくて当然だろう。
先日、宮城リョータは決死の覚悟で三井に好きだと告白した。すると三井は、「じゃあ付き合うか」と軽く返事をよこしてきて、2人のお付き合いはスタートしたのだった。
それから2週間ほど経過したが、恋人らしい事も素振りも無く。やはり三井に告白の真意が伝わってなかったのではないかと思い始めていた時だった。
「だから、キス好きかって聞いてんだよ」
好きかどうかと問われてもしたことがないのだから、そもそもの判断材料がない。事実をそのまま述べれば良いのだろうが、何だか癪に障るので言いたくはなかった。
それに、こんな聞き方をしてくるということは、三井の方には経験があるということで、それも面白くない。
「なんでそんなこと聞くんすか」
「なんでって、そりゃあお前、こういうのは相手の了承得ないと駄目だろ。それに、やっぱよぉ、恋人になったからにはキスしてえーじゃん?」
「ふーん、俺別に嫌いじゃないんで。したかったらしていいっすよ」
精一杯平気なふりをして、そう答えた。
「まじで?よっしゃ!俺よーキスすんのすげぇ好きなんだわ」
これで漸く三井と恋人らしいことができる、と宮城は前向きに捉えようとしただけにすぎない。だが、三井の言う『すげぇ好き』を正しく理解できていなかったと、この後思い知らされることとなる。
それから三井との関係は、ただの先輩後輩から少し恋人らしいものに変化した。
朝練前に待ち合わせて一緒に行ったり、昼休みに屋上でご飯を食べたり、部活の後必ず示し合わせて帰るようになったり。
とても楽しい恋人ライフを満喫ーーしてはいるのだが、如何せん唇を狙われ続ける日々に困惑しているというほうが正しかった。
宮城は女の子ほどではないが、キスにひいてはファーストキスに夢見ていた。それなのに、三井とキスが好きかどうかという問答をした翌日、あっさりと奪われてしまったのだ。初めてだったのにという文句を言う暇さえも与えてもらえない。したかったらしていいといったのは紛れもなく宮城なのだが、ここまでとは誰しも思わないだろう。
ついこの間までゼロ回だったのに、もう数えきれないくらいしてしまった。世の恋人たちがどのくらいの頻度でキスをしているかなんて分からないが、多すぎるということだけは分かる。
そう、この三井寿という男はキス魔だったのだ。
キスがどうのと話をしたその日の夜、明日朝練一緒に行かねぇ?と三井から電話がかかってきた。
良いっすよとだけ返し、時間を決めて通話はすぐにきれてしまう。本当なら誘ってもらえてすごく嬉しかったと伝えたかったし、せっかくの電話なのでもっと長く話したかった。それなのに、実際はただ素っ気ない返事をしただけ。三井は気を悪くしなかっただろうか。
それに、出来ることなら自分のほうから誘いたいと思うのだが、それは自身の性格上難しいだろう。だから、こうやって三井の方から誘ってくれるのは有り難かった。
学業に部活にと忙しい学生にとって恋人との逢瀬は隙間時間になってしまうのは致し方ないことだ。それでも忙しい合間を縫って、会いたいと思ってもらえるのが嬉しい。
明日朝から会えるの楽しみだなと思いながら、宮城は床についた。
次の日、待ち合わせ場所に行くともうすでに三井の姿があった。笑顔ではよっと言ってくる恋人に軽く感動していた時だ。早いっすねと答える前にちゅっとキスをされた。目にもとまらぬ速さだ。
え、何、今もしかしてキスされた?
それを皮切りに、昼休み部活帰りにと三井のキス攻撃は止まらない。初めてを噛みしめる暇などありはしない。次の日もまた次の日もやむ気配はなくてー
「おい、ちょっと、いい加減止まれよ!」
「おーなんだ?どしたぁ」
「なんだ、どうしたじゃねぇし。アンタさーキス好きって言っても限度ってもんがあんでしょ」
今は、最近定番となった屋上でのランチタイムなのだが、三井は母親の手作り弁当を食べながらもキスしてくる。もはや弁当を食べているのかキスをしているのかどちらがメインか分からなくなってくるほどだ。
「弁当食べるのに集中してくださいよ」
「お前とキスしてたほうが飯が上手い気するんだよなー」
「人をおかずみたいに言うなよ」
「飯時に下ネタかよ、宮城」
「そんなわけないでしょ!」
宮城は買ってきたパンがあることも忘れ、怒りのまま地面を叩きつけてしまう。案の定パンは、残念なことにぺしゃんこである。あーくそっと思わず不機嫌さを表に出す。それで漸く三井も宮城の機嫌の悪さを感じ取ったようで、不貞腐れたように口を尖らせる。
「なんだよ、キスしていいって言ったじゃねえかよ」
「言いましたけど、何ていうか、思ってたキスと違うっていうか」
「じゃあどんなのが良いんだよ」
「なんかこうーもっとゆっくり味わいたいというか、一回を大切にしたいていうか、とにかく、もっと、ドキドキしたいの!」
「おう、良いじゃねぇか、そのお前の理想の?キス、してみせろや」
三井は何故か喧嘩腰で、今から恋人とキスをしようという雰囲気ではない。しかも宮城からのキスをご所望ときた。さて、どうしたものかと宮城が困っていたら、助け舟のごとく、時計の針が昼休み終了を示していた。
「もう教室戻らないと、次体育なんで、俺」
宮城はその場から逃げるように立ち去った。
(三井サン、怒ってっかな)
なんとなく三井と険悪な雰囲気になってしまったような気がして、午後の授業には身が入らなかった。放課後、部活の時間になっても気分がのらず、体育館へと進む足取りは重い。
もしかしたらこのまま三井と別れることになるのではないかと危惧し、はぁーと溜め息をついた。
「長ぇ溜め息だな、ねみいの?」
「三井、サンー?え?あ、いや、別に」
考え事をしていたため、三井に話しかけられるまで全く気配に気づけなかった。だが、彼の様子から察するにいつも通りなようで怒っていなかったとほっとする。
それからも三井はキスの話を追求してくるわけでもなく、普段通りに過ごしていた。けれど、それが宮城の思い違いだったと気づいたのは、さらに1週間たった頃だった。
あれだけキスの雨を降らせていた三井が、全くと言っていいほどしてこなくなったのだ。なくなったらなくなったで気になるもので、あれほどキスの多さに困惑していたのに、今はキスのきの字もなくて困惑していた。
「ねぇ何でしないんすか、キス」
この日は屋上に先客がいたため場所を変更し、体育館裏での昼食となっていた。三井はいつも、このおかずが一番上手いとか三井家秘伝の味付けだとか聞いてもいないのに弁当の解説をしてくる。そして本来ならその間もキスが止まらないのだが、今日は全くもって普通にただ食べ物を咀嚼しているだけだった。
そんな三井をじっと見つめていた宮城だったが、ついにしびれを切らし質問した。すると、はあ?と弁当の唐揚げを頬張りながら三井は聞き返してくる。
「もう、俺とキスするの飽きたんすか!?」
これは付き合う前から感じていたことだが、三井という男は、飽きやすい性格だった。
バスケ以外長く続いているものも無く、これが好きあれにハマっているという話をよくしているが、少し経つと興味を無くしていることが多い。ころころと好きなものが変わる人だなくらいに、その時は思っていた。
宮城自身は一度ハマると長くて、あまり飽きるということがなく、そのため余計に三井の飽きやすさが目についたのかもしれない。
以前はそれほど気にならなかったが、付き合いだした途端気になって仕方がなかった。
飽き性の三井のことだ、宮城とのキスにもしくは宮城自身に飽きてしまったのかもしれない。そう思うと泣きそうになってくる。
「飽きたって何だよ、お前が嫌がったんだろうがよ」
「俺は嫌だなんて言ってねえし、ちょっと回数減らしてくれればそれで…」
「つうかよ、そもそもなんで俺からするの前提なんだよ。お前からすりゃあ良いだろうが、こっちはお前からしてくんのずっと待ってんのによー
あれから、キスについても考えてみたんだぜ、俺。お前が言うキスってどんなんかっていうのも悩んだしなーそりゃあ、今までと違って?相手が男でしかも仲良くしてる後輩ってことで、多少調子に乗ってキスの回数も多くなっちまったなぁってのは思ってるし反省もしてる。
大体よーお前も悪いんだぜ、あんなに必死な顔して告白しておいて、いざ付き合ったら冷めてぇっておかしいだろうがよ。告白したら満足なのかよ!」
そう、一気に捲し立てられて、宮城は面食らってしまった。情報量の多さにもついていけてない。ただ、冷めるとか告白だけで満足とか、そんなことはあり得ない。
「…俺、あんたと違って誰かとお付き合いするの初めてなんすよ。だから、き、キスも初めてだったし。どうして良いかよく分かんなくて」
こんなのみっともなくてしょうがない。
顔がすごくあつい、きっと真っ赤になっているに違いない。けれど、ここは正直にありのままを吐露しなければ、この関係は終わってしまうそんな気がしたのだ。恥ずかしがってばかりいては、大切なものを取りこぼしてしまう。
「…え?お前初めてだったの?なんで早く言わないんだよ」
「いや、言えるわけないでしょ、そんなん恥ずいし。しかもわけ分かんないうちに終わってたし」
まじかーと三井は項垂れている。
そんなに落ち込まれてもなんだか複雑だなと、目の前の恋人を見つめながら思った。
そんな宮城の視線に気づいたのか、三井は顔を上げ宮城の頭を撫でながらごめんなと申しわけなさそうに微笑んだ。
謝る必要はない、言わなかった自分も悪いのだから、そう告げようとしたが、三井の言葉に遮られてしまう。
「だったらよぉ、やり直そうぜ。お前の初めてってやつを」
「え?やり直すって、そんなんありなんすか」
「何でもありだろ、俺らのことは俺らがルールってな。つーわけで、いっぱつかますか」
「いや、ムードなさすぎるじゃん、勘弁してよ」
くすくすと笑いながら、顔を寄せ合いゆっくりと唇を重ねた。やはり予想通りと言うか、その時交わしたキスの味は三井が直前に食べていた唐揚げの味だったが、今までで一番美味しい唐揚げだった気がするので良しとする。
そんなこんなで、この日、宮城の2回目の初めては恙無く終了したのだった。
最初何と問われているのか分からず、何の回文だろうかと思ってしまった。
部活帰り、今日あった面白い話や授業中のこと、部活で気になったことなどいつものように話していた時だ。それらと同じような調子で言われたのだから分からなくて当然だろう。
先日、宮城リョータは決死の覚悟で三井に好きだと告白した。すると三井は、「じゃあ付き合うか」と軽く返事をよこしてきて、2人のお付き合いはスタートしたのだった。
それから2週間ほど経過したが、恋人らしい事も素振りも無く。やはり三井に告白の真意が伝わってなかったのではないかと思い始めていた時だった。
「だから、キス好きかって聞いてんだよ」
好きかどうかと問われてもしたことがないのだから、そもそもの判断材料がない。事実をそのまま述べれば良いのだろうが、何だか癪に障るので言いたくはなかった。
それに、こんな聞き方をしてくるということは、三井の方には経験があるということで、それも面白くない。
「なんでそんなこと聞くんすか」
「なんでって、そりゃあお前、こういうのは相手の了承得ないと駄目だろ。それに、やっぱよぉ、恋人になったからにはキスしてえーじゃん?」
「ふーん、俺別に嫌いじゃないんで。したかったらしていいっすよ」
精一杯平気なふりをして、そう答えた。
「まじで?よっしゃ!俺よーキスすんのすげぇ好きなんだわ」
これで漸く三井と恋人らしいことができる、と宮城は前向きに捉えようとしただけにすぎない。だが、三井の言う『すげぇ好き』を正しく理解できていなかったと、この後思い知らされることとなる。
それから三井との関係は、ただの先輩後輩から少し恋人らしいものに変化した。
朝練前に待ち合わせて一緒に行ったり、昼休みに屋上でご飯を食べたり、部活の後必ず示し合わせて帰るようになったり。
とても楽しい恋人ライフを満喫ーーしてはいるのだが、如何せん唇を狙われ続ける日々に困惑しているというほうが正しかった。
宮城は女の子ほどではないが、キスにひいてはファーストキスに夢見ていた。それなのに、三井とキスが好きかどうかという問答をした翌日、あっさりと奪われてしまったのだ。初めてだったのにという文句を言う暇さえも与えてもらえない。したかったらしていいといったのは紛れもなく宮城なのだが、ここまでとは誰しも思わないだろう。
ついこの間までゼロ回だったのに、もう数えきれないくらいしてしまった。世の恋人たちがどのくらいの頻度でキスをしているかなんて分からないが、多すぎるということだけは分かる。
そう、この三井寿という男はキス魔だったのだ。
キスがどうのと話をしたその日の夜、明日朝練一緒に行かねぇ?と三井から電話がかかってきた。
良いっすよとだけ返し、時間を決めて通話はすぐにきれてしまう。本当なら誘ってもらえてすごく嬉しかったと伝えたかったし、せっかくの電話なのでもっと長く話したかった。それなのに、実際はただ素っ気ない返事をしただけ。三井は気を悪くしなかっただろうか。
それに、出来ることなら自分のほうから誘いたいと思うのだが、それは自身の性格上難しいだろう。だから、こうやって三井の方から誘ってくれるのは有り難かった。
学業に部活にと忙しい学生にとって恋人との逢瀬は隙間時間になってしまうのは致し方ないことだ。それでも忙しい合間を縫って、会いたいと思ってもらえるのが嬉しい。
明日朝から会えるの楽しみだなと思いながら、宮城は床についた。
次の日、待ち合わせ場所に行くともうすでに三井の姿があった。笑顔ではよっと言ってくる恋人に軽く感動していた時だ。早いっすねと答える前にちゅっとキスをされた。目にもとまらぬ速さだ。
え、何、今もしかしてキスされた?
それを皮切りに、昼休み部活帰りにと三井のキス攻撃は止まらない。初めてを噛みしめる暇などありはしない。次の日もまた次の日もやむ気配はなくてー
「おい、ちょっと、いい加減止まれよ!」
「おーなんだ?どしたぁ」
「なんだ、どうしたじゃねぇし。アンタさーキス好きって言っても限度ってもんがあんでしょ」
今は、最近定番となった屋上でのランチタイムなのだが、三井は母親の手作り弁当を食べながらもキスしてくる。もはや弁当を食べているのかキスをしているのかどちらがメインか分からなくなってくるほどだ。
「弁当食べるのに集中してくださいよ」
「お前とキスしてたほうが飯が上手い気するんだよなー」
「人をおかずみたいに言うなよ」
「飯時に下ネタかよ、宮城」
「そんなわけないでしょ!」
宮城は買ってきたパンがあることも忘れ、怒りのまま地面を叩きつけてしまう。案の定パンは、残念なことにぺしゃんこである。あーくそっと思わず不機嫌さを表に出す。それで漸く三井も宮城の機嫌の悪さを感じ取ったようで、不貞腐れたように口を尖らせる。
「なんだよ、キスしていいって言ったじゃねえかよ」
「言いましたけど、何ていうか、思ってたキスと違うっていうか」
「じゃあどんなのが良いんだよ」
「なんかこうーもっとゆっくり味わいたいというか、一回を大切にしたいていうか、とにかく、もっと、ドキドキしたいの!」
「おう、良いじゃねぇか、そのお前の理想の?キス、してみせろや」
三井は何故か喧嘩腰で、今から恋人とキスをしようという雰囲気ではない。しかも宮城からのキスをご所望ときた。さて、どうしたものかと宮城が困っていたら、助け舟のごとく、時計の針が昼休み終了を示していた。
「もう教室戻らないと、次体育なんで、俺」
宮城はその場から逃げるように立ち去った。
(三井サン、怒ってっかな)
なんとなく三井と険悪な雰囲気になってしまったような気がして、午後の授業には身が入らなかった。放課後、部活の時間になっても気分がのらず、体育館へと進む足取りは重い。
もしかしたらこのまま三井と別れることになるのではないかと危惧し、はぁーと溜め息をついた。
「長ぇ溜め息だな、ねみいの?」
「三井、サンー?え?あ、いや、別に」
考え事をしていたため、三井に話しかけられるまで全く気配に気づけなかった。だが、彼の様子から察するにいつも通りなようで怒っていなかったとほっとする。
それからも三井はキスの話を追求してくるわけでもなく、普段通りに過ごしていた。けれど、それが宮城の思い違いだったと気づいたのは、さらに1週間たった頃だった。
あれだけキスの雨を降らせていた三井が、全くと言っていいほどしてこなくなったのだ。なくなったらなくなったで気になるもので、あれほどキスの多さに困惑していたのに、今はキスのきの字もなくて困惑していた。
「ねぇ何でしないんすか、キス」
この日は屋上に先客がいたため場所を変更し、体育館裏での昼食となっていた。三井はいつも、このおかずが一番上手いとか三井家秘伝の味付けだとか聞いてもいないのに弁当の解説をしてくる。そして本来ならその間もキスが止まらないのだが、今日は全くもって普通にただ食べ物を咀嚼しているだけだった。
そんな三井をじっと見つめていた宮城だったが、ついにしびれを切らし質問した。すると、はあ?と弁当の唐揚げを頬張りながら三井は聞き返してくる。
「もう、俺とキスするの飽きたんすか!?」
これは付き合う前から感じていたことだが、三井という男は、飽きやすい性格だった。
バスケ以外長く続いているものも無く、これが好きあれにハマっているという話をよくしているが、少し経つと興味を無くしていることが多い。ころころと好きなものが変わる人だなくらいに、その時は思っていた。
宮城自身は一度ハマると長くて、あまり飽きるということがなく、そのため余計に三井の飽きやすさが目についたのかもしれない。
以前はそれほど気にならなかったが、付き合いだした途端気になって仕方がなかった。
飽き性の三井のことだ、宮城とのキスにもしくは宮城自身に飽きてしまったのかもしれない。そう思うと泣きそうになってくる。
「飽きたって何だよ、お前が嫌がったんだろうがよ」
「俺は嫌だなんて言ってねえし、ちょっと回数減らしてくれればそれで…」
「つうかよ、そもそもなんで俺からするの前提なんだよ。お前からすりゃあ良いだろうが、こっちはお前からしてくんのずっと待ってんのによー
あれから、キスについても考えてみたんだぜ、俺。お前が言うキスってどんなんかっていうのも悩んだしなーそりゃあ、今までと違って?相手が男でしかも仲良くしてる後輩ってことで、多少調子に乗ってキスの回数も多くなっちまったなぁってのは思ってるし反省もしてる。
大体よーお前も悪いんだぜ、あんなに必死な顔して告白しておいて、いざ付き合ったら冷めてぇっておかしいだろうがよ。告白したら満足なのかよ!」
そう、一気に捲し立てられて、宮城は面食らってしまった。情報量の多さにもついていけてない。ただ、冷めるとか告白だけで満足とか、そんなことはあり得ない。
「…俺、あんたと違って誰かとお付き合いするの初めてなんすよ。だから、き、キスも初めてだったし。どうして良いかよく分かんなくて」
こんなのみっともなくてしょうがない。
顔がすごくあつい、きっと真っ赤になっているに違いない。けれど、ここは正直にありのままを吐露しなければ、この関係は終わってしまうそんな気がしたのだ。恥ずかしがってばかりいては、大切なものを取りこぼしてしまう。
「…え?お前初めてだったの?なんで早く言わないんだよ」
「いや、言えるわけないでしょ、そんなん恥ずいし。しかもわけ分かんないうちに終わってたし」
まじかーと三井は項垂れている。
そんなに落ち込まれてもなんだか複雑だなと、目の前の恋人を見つめながら思った。
そんな宮城の視線に気づいたのか、三井は顔を上げ宮城の頭を撫でながらごめんなと申しわけなさそうに微笑んだ。
謝る必要はない、言わなかった自分も悪いのだから、そう告げようとしたが、三井の言葉に遮られてしまう。
「だったらよぉ、やり直そうぜ。お前の初めてってやつを」
「え?やり直すって、そんなんありなんすか」
「何でもありだろ、俺らのことは俺らがルールってな。つーわけで、いっぱつかますか」
「いや、ムードなさすぎるじゃん、勘弁してよ」
くすくすと笑いながら、顔を寄せ合いゆっくりと唇を重ねた。やはり予想通りと言うか、その時交わしたキスの味は三井が直前に食べていた唐揚げの味だったが、今までで一番美味しい唐揚げだった気がするので良しとする。
そんなこんなで、この日、宮城の2回目の初めては恙無く終了したのだった。
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