はじまりの出会い
名前変換
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「どうしてまたあの町に……?」
『……わたし…』
『自分のこと…なにも知らない』
カカシの問いにか細い声で呟いた
『親も知らない…家も知らない。生まれたとこも…なんでひとりなのか知らない………自分がだれなのか知らない』
『此処(木ノ葉)もおなじ……
知らない道…知らない家…知らないところ』
『だけどあの町はちがう…知ってる。食べものがあるところ…雨にぬれないところ…寝れるところ……知ってる』
『……わたしが知ってるのは名前とあの町だけ……だから…わたしの居場所はあそこだけ……』
『だって…なにも知らないことは“こわい”……』
僅かに顔を上げたスイ
その長い前髪に隠れた臙脂色の瞳からは涙が溢れ頬に一筋流れる
「(………この子…)」
再び俯いてしまったスイの話にカカシは言葉を失う
スイには自分の名前以外の記憶がない
親も家も故郷は勿論自分が何をしてきたのか、自分に何があったのか…そもそも自分は何者なのか……自分自身の事をスイは何一つ知らない
カカシはスイの事を何も知らないがそれはスイ自身も同じなのだ
だがカカシと違いスイにとって知らないことは不安であり恐怖でもある
だからスイは求める
何も知らない自分が知っている場所を……
例えそこが食べる物も住むところもない明日を生きれるか分からない貧民街だとしても
そこだけがスイの居場所なのだ
「………」
「………確かに…何も知らないことは怖いことかもしれないな」
俯くスイを見つめカカシがポツリと呟く
「でも…今みたいに怖がって逃げてばかりじゃずっと怖いままだ」
「知っていけばいいんだよ。知らないこと、分からないこと……少しずつ…ゆっくりでいいから」
ぽん…っ
『……!』
そう言うとカカシは半ば無意識にスイの小さな頭に手を置き優しく撫でていた
一方スイは驚いたように目を見開いてカカシを見上げた
「大丈夫怖くない…オレがいる。今までのスイを知ることは出来ないけど…これからのスイを知ることなら出来る。この里で一緒に色んなことを知っていけばいいさ」
『一緒に…?』
「あぁ…オレとスイ二人で一緒に。
そうだな…例えばまずは靴の履き方とかな」
そんな事を言いながらカカシの唯一見えている右目がニッコリと笑みを浮かべ足元に転がっていた靴を手に取る
そしてスイの前に屈むと彼女の足に付いてた土を軽く払い手にした靴を履かせる
スイはそれをじっと見つめていたー
「さてと…帰るか」
靴を履かせるとカカシは立ち上がる
『帰る…?』
「オレの家…スイの家にだよ」
『わたしの…家……』
「そう今日からあの家がお前の家だ。……そしてこの里がお前の新しい居場所だ」
『……っ』
その言葉に見開いたスイの瞳からさらにまた涙が溢れる
「だからもう一人であの町に戻らなくてもいいんだよ。さぁ帰るよスイ」
また無意識にスイへと手を差し出すカカシ
『……ゔん……かえる……っ』
スイは差し出されたその手を包帯の巻かれた小さな手で握り締めた
ー出会った最初はお前を引き取るつもりなんて全くなかったのに……
“何も知らないことは怖い…”と感情なんてないと思っていた虚ろな目から涙を流して言うお前の姿を見たあの時ーオレは決心した
お前と生きていくことをー⋯⋯
不思議なもんだ
孤児なんて昔から任務でいくらでも見てきたが何故か唯一お前だけはほっておけなかった
どうしてか理由は自分でもわからない
俯く小さな頭を撫でたのも…帰ろうと手を差し伸べたのもどれも無意識にやったことだった
ただそんなオレの手を握ってくる包帯だらけの小さくて温かい手が自分にとってとても大切なモノのように思えた
スイを守りたいと強く思った