はじまりの出会い
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「(あ、でも……)」
ふと後ろを振り向き居間にいるスイを見た
見るとスイはさっきと変わらず飲みかけのお茶が入ったコップを持ったままソファーに座ってベランダから見える空を見つめていた
「(ま、あの格好で連れ回すのも可哀想だろ)」
あの格好とはガーゼや包帯だらけの姿をしたスイのことで流石にそんな傷だらけの格好で買い物に連れて行くのは悪い
何より火影邸からここに来た時のようにスイの歩調に合わせて歩いていては買い物を済ませて家に帰るのにさらに時間がかかる
自分一人で行ってきた方が手っ取り早いと思ったカカシはスイには留守番をしてもらうことにした
「今から買い物に行ってくるから少しの間だけ留守番を頼めるかな」
『……』
コクン…
ベランダから空を見ていたスイはカカシの方へ振り向くと少し間を置いて僅かに頷く
「じゃあ頼んだぞ」
一人だけ残して行くのに若干心配ではあるが家の中にいる分には大丈夫だろうとカカシは玄関へ向かう
履き慣れた靴で床を打ちドアを開けると最後にソファーに座るスイの後ろ姿を一目見てそのままドアを閉めた
バタン
外気との空間を断つ低い音がして部屋は静寂に包まれたー
――――⋯⋯⋯
家を出たカカシはフーッと気を抜くように一息吐く
応接間でスイと顔を合わせてから家を出る今の今までスイ相手にどこか気を使い緊張の糸が張っていたのだ
それがようやく一人になり気を楽に出来た
「(ま、明日までの辛抱だな…)」
ポケットに両手を入れぼんやり空を見上げたカカシはそう思案しながら近所の店を目指し一人歩きだした
―――⋯⋯
買い物を終えたカカシが自宅へ帰る頃には明るかった空もすっかり夕暮れ時になっていた
ガチャ
「…帰ったよ」
家へ着いたカカシは鍵を掛けず出たドアを開けながらそう言うと日が落ち薄暗くなった家に入る
部屋の中から返事はない
そうだろうと思っていたカカシは気にせずまずは玄関の電気をつけた
パッと照明で明るくなる玄関
靴を脱ごうと足元へ視線を下ろした時あったはずの小さな靴が一足無くなっているのに気付く
「スイ…?」
カカシはスイがいるはずの部屋の奥へもう一度呼びかける
だが返事も物音もなくそれどころか人のいる気配さえ感じない
慌てて靴を脱ぎ居間へと向かうカカシ
案の定そこにスイの姿はなくお茶の入ったコップが結露でテーブルを濡らした状態で置かれていた
他の部屋を全て見てスイを探すがやはりどこにもいない
「く…っ……!」
冷や汗を浮かべたカカシは荷物を居間に放ると家を飛び出した
――――⋯⋯⋯
「口寄せの術!」
口寄せした忍犬達も放ちスイを探すカカシ
「(オレが迂闊だった…っ)」
スイが勝手に出て行くとは予想もしなかったことだが…しかしそれ以前に出会ったばかりで何をするか分からない幼いスイをたった一人だけで家に残していった自分の甘さを責める
「(どこに行った…!)」
子供のスイの足ではそう遠くへは行ってないと考え自宅周辺を捜索するも中々見つからない
探し回りながらカカシはスイならどこへ行くか、何をするか、そもそも何故出て行ったのか…推測しようとするが全く思い浮かばなかった
スイの事を何も知らないから
「(いや…違う……。
そうじゃない……オレは………)」
屋根を走るカカシの足が止まる
「(オレはあの子の気持ちを何も知らない…いや知ろうともしなかった……)」
どうせ引き取るつもりはない
たった一晩預かるだけ
明日になればもう会うことはない
そんなあの子の事を知る必要ない
そう決めつけてスイを理解しようとすることも歩み寄ろうともしなかった
スイの気持ちを少しだけでも理解してあげていたらどこに行ったのか分かったかもしれない
いや…それ以前にスイを一人家に残して行くこともスイが勝手に出て行くこともなかったかもしれない
考えれば考えるほど後悔の念は深くなる
その間にも日は暮れていき辺りは暗くなりカカシの焦りは大きくなる
その時ー⋯
ウオォォー⋯ン
北の方角からかすかだがカカシが放った忍犬の鳴き声が聞こえた
「……っ!」
カカシはその声のする方角へ急ぎ飛んで行く
―――⋯⋯
スイは道端にあるベンチに一人で小さくうずくまって座っていた
日が暮れた辺りはすでに暗くなり道にある街灯には明かりが点く
人気の全くない静かで薄暗い道端で一人のスイ
そこへ風が吹き辺りの木々の枝を揺らすと一枚の木ノ葉がスイの頭に落ちるが俯いたまま微動だにしないスイ
もう一度風が吹くと木ノ葉はスイの頭を離れある人物の足元に落ちた
その人物は足元に落ちた木ノ葉の流れを辿るようにゆっくり一歩ずつスイに近付く
「スイ」
目の前まで来ると座っているスイを見下ろしたカカシが呼びかける
しかし膝を抱え俯いたままのスイから反応はない
見たところ最初に会った時と変わらず包帯だらけの体にはケガなどの跡はないが家を出た時に自分で上手く履けなかったのだろう脱げた靴がベンチの下に転がっておりスイの足は土で汚れていた
「ケガがなくて良かったけど勝手にいなくなってたから心配したよ。どうしたんだ?」
『………』
「黙ってちゃわからないよ」
『…………』
「オレのところにいるのが嫌だったのか?」
『…………違う……』
小さくそう言うとスイは俯いていた顔を上げた
『………帰りたかった…』
「帰る…?火影様のところにか?」
だが首を横に振るスイ
「…………あの町にか…?」
コクン…
今度は頷いたスイのまさかの返答に困惑するカカシ
食べる物も住むところもない生きていくのさえ過酷な貧民街に戻りたいと思う者など普通はいない
だがそこへ帰りたいというスイ