第4話:文字に囲まれた者
「そっかあ……じゃあこれの続編があるってこと?」
「うん。タイトルがちょっと違うから、分かりにくいかも知れないけど……」
「へー……お兄さんって詳しいんだね」
「そうでもないよ。昔に読んだきっりだから……。僕も、帰ったらその本探してみようかな」
エトガーが、誰かと喋っている声が聞こえてくる。本と本の隙間を這うようにして聞こえる声は、オレが足を動かすたびに段々近くなってくる。何だかよく分からないけど、盛り上がっているように聞こえた。
「ところで、お兄さんって貴族?」
「え? ああ……まあね」
「へー……俺、貴族の人とはじめて喋ったかも」
……なんか、とても嫌な予感がする。そういえば、エトガー以外の誰かの声。この声を、オレは何処かで聞いたことあったような気がしてならない。足を進めていけば、自然と本棚が視界から無くなり、通路が見える。少し開けた場所にたどり着くと見えたのは、エトガーのいるテーブル。そこには、エトガー以外に見たことのある人がふたり。
ひとりはさっきのアルセーヌ。そしてもうひとりは、何処かで聞いたことのある声の主。あれは確か、あの時路地裏でアルセーヌと一緒にいた、もうひとりの貴族の人だった。
そういえば、確か前に会った時もこのふたりは一緒だった。少し考えれば分かることだったのに、完全に忘れていた。名前は……なんだっけ。
「……アルベル君、キミは一体何をしているんだい?」
「いや、何か意気投合しちゃって……あ」
アルベルと呼ばれた人と目が合う。その様子に気づいたのか、エトガーの体がこちらに向いた。
「あ、シントお兄ちゃんだ。お帰りー」
「はは……」
ひらひらと手を振るエトガーにつられ、本を持っていない手で降り返す。それとなく笑顔を貼り付けはするものの、何となくひきつってしまっているのが自分でも分かってしまった。
「さて……アルベル君。我々はそろそろ行こうじゃないか」
「え、もうですか?」
「我々がいると落ち着かないだろうからね。じゃあシント君。明日、宜しく頼むよ」
「え、ちょっと待ってくださいって……あ、じゃあねふたりとも」
ぱたばたと歩く音が段々と遠退いていく。受付にいる人と少しだけ会話を交わしているかと思うと、出入り口の扉を開け、早々に出ていってしまった。
「はー……」
何か、よく分かんないけどすごく疲れた。本当にいなくなったことを確認するかのように、どさりとエトガーの隣に座る。テーブルの上に雑に置かれた本が、何処と無くオレの心を表してようだった。
「お兄ちゃん、明日貴族の人と会うの?」
「まあ、ね……」
「何やったの?」
「……何やったんだろう」
そういえばそうだ。貴族に呼び出されるような事をオレはしたんだっけ?路地裏に入ったから?でも、そんなの言い出したらオレだけじゃないだろうし……。
ああ、もしかして魔法で作られたらしいブレスレットが関係しているのだろうか。あの二人に見られたのかどうかは知らないけど、確かにあの時、これは光を放っていた。ということは、やっぱりこのブスレットは魔法で作られたのだろうか?でも、だからって別に家にまで招待しなくても、あの場で問い詰めればよかったのに。
ふと、シャツの下から覗かせているブレスレットを見つめる。外そうとも思ったんだけど、それはちょっと悪い気がしてしまったのと、外せない理由があったから。
これに、本当に魔法という力が込められているのだろうか?例えそうだとしても、オレの答えはひとつ。
「……行きたくないなぁ」
言いながら、力なくテーブルへと身体を預けた。
「うん。タイトルがちょっと違うから、分かりにくいかも知れないけど……」
「へー……お兄さんって詳しいんだね」
「そうでもないよ。昔に読んだきっりだから……。僕も、帰ったらその本探してみようかな」
エトガーが、誰かと喋っている声が聞こえてくる。本と本の隙間を這うようにして聞こえる声は、オレが足を動かすたびに段々近くなってくる。何だかよく分からないけど、盛り上がっているように聞こえた。
「ところで、お兄さんって貴族?」
「え? ああ……まあね」
「へー……俺、貴族の人とはじめて喋ったかも」
……なんか、とても嫌な予感がする。そういえば、エトガー以外の誰かの声。この声を、オレは何処かで聞いたことあったような気がしてならない。足を進めていけば、自然と本棚が視界から無くなり、通路が見える。少し開けた場所にたどり着くと見えたのは、エトガーのいるテーブル。そこには、エトガー以外に見たことのある人がふたり。
ひとりはさっきのアルセーヌ。そしてもうひとりは、何処かで聞いたことのある声の主。あれは確か、あの時路地裏でアルセーヌと一緒にいた、もうひとりの貴族の人だった。
そういえば、確か前に会った時もこのふたりは一緒だった。少し考えれば分かることだったのに、完全に忘れていた。名前は……なんだっけ。
「……アルベル君、キミは一体何をしているんだい?」
「いや、何か意気投合しちゃって……あ」
アルベルと呼ばれた人と目が合う。その様子に気づいたのか、エトガーの体がこちらに向いた。
「あ、シントお兄ちゃんだ。お帰りー」
「はは……」
ひらひらと手を振るエトガーにつられ、本を持っていない手で降り返す。それとなく笑顔を貼り付けはするものの、何となくひきつってしまっているのが自分でも分かってしまった。
「さて……アルベル君。我々はそろそろ行こうじゃないか」
「え、もうですか?」
「我々がいると落ち着かないだろうからね。じゃあシント君。明日、宜しく頼むよ」
「え、ちょっと待ってくださいって……あ、じゃあねふたりとも」
ぱたばたと歩く音が段々と遠退いていく。受付にいる人と少しだけ会話を交わしているかと思うと、出入り口の扉を開け、早々に出ていってしまった。
「はー……」
何か、よく分かんないけどすごく疲れた。本当にいなくなったことを確認するかのように、どさりとエトガーの隣に座る。テーブルの上に雑に置かれた本が、何処と無くオレの心を表してようだった。
「お兄ちゃん、明日貴族の人と会うの?」
「まあ、ね……」
「何やったの?」
「……何やったんだろう」
そういえばそうだ。貴族に呼び出されるような事をオレはしたんだっけ?路地裏に入ったから?でも、そんなの言い出したらオレだけじゃないだろうし……。
ああ、もしかして魔法で作られたらしいブレスレットが関係しているのだろうか。あの二人に見られたのかどうかは知らないけど、確かにあの時、これは光を放っていた。ということは、やっぱりこのブスレットは魔法で作られたのだろうか?でも、だからって別に家にまで招待しなくても、あの場で問い詰めればよかったのに。
ふと、シャツの下から覗かせているブレスレットを見つめる。外そうとも思ったんだけど、それはちょっと悪い気がしてしまったのと、外せない理由があったから。
これに、本当に魔法という力が込められているのだろうか?例えそうだとしても、オレの答えはひとつ。
「……行きたくないなぁ」
言いながら、力なくテーブルへと身体を預けた。