Caligula

ブルーベリー・ブルー(主笙)

2018/02/28 11:07
主笙

一時の気の迷いのような恋を安易な気持ちで受け止めて、十代の貴重な一分一秒を食い潰すのが恐ろしいと笙悟は嘆いた。彼はとてもやさしい。やさしいから周りに傷つけられるし、そして時に周りを傷つける人だと俺は思った。

「お前の過ごす1秒と俺の1秒じゃ、もう重さがぜんぜん違うんだ。分かってくれ、頼むから」

俺は笙悟を1秒笑顔にするために何日費やしたっていい、だって好きなんだから。持て余した熱を伝えれば伝えるほど、笙悟が俺を見る目が何かおぞましいものを見る時のそれに変わる。彼を取り囲む気遣いと怯えでできた柵に拒まれて、それでもまだ突き進むことが出来るほど俺は子どもではないけれど、はいそうですかと諦めてUターンができるほど大人でもなくて。たとえ理想の楽園にいても、好きになった人を苦しめるだけの中途半端な生き物にしかなれないことが、ひどく悔しかった。
吉志舞高校ではなく、十数年前の彼が「本物の高校時代」を過ごしたその場所に、俺もその時いることができたなら、何かが変わったのか。誰か救えたのか。たとえμでも叶えることなんて出来ない望みをただ胸の内に掻き抱いたまま、俺は唇を強く強く噛んだ。

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