Caligula
Fake It!(主→鍵)
2018/03/28 12:07主鍵∞
「ねえ先輩、ラブソングってあるじゃないですか」
「ラブソング?」
「やっぱり、その、経験しないと書けないものですよね、恋愛……」
「そうだねえ、フィクションでも書ける人は書けるんだろうけど。でもあの曲が君の思春期の焦れったさを吐き出したものなら、ラブソングだって君の中にある感情をさらけ出すものでないと、同じように誰かの心は揺さぶれないよね」
「……ですよね…………」
情けないため息をついて、鍵介は部室の机に突っ伏してしまう。でも「だったら僕と経験してみる?」なんてやっぱり言えない僕の方が3倍、5倍、いやもっともっと情けないのかなあなんて思いながら、缶コーヒーのプルタブを開けた。お気に入りのメーカーのブラック無糖、なんだかいつもよりも苦いように感じるのは、きっと気のせいだ。