Stray Flower
主人公の名前
デフォルト名及び主人公設定主人公名→黎蓮(リィレン)
性別は男。
国籍、出身地等は初期時点では不明。
砂漠地帯の古い遺跡に一人でいた所を任務帰りのユーグとレオン神父に保護された。
DNA検査等で絶滅地帯(ダークランド)の大陸地帯にかつて住んでいた民の遺伝子を持つ事だけが唯一分かっている。
青みが強い不思議な色合いの黒髪と同じ色の瞳を持つ。
主人公の名前はワーズワース神父が命名。
年齢→推定13〜14歳。
身長156cm
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……その時に脳裏を過ぎったのは二人の神父様に拾われてから少し経った頃の事。
今のように何一つ恩を返せない自分が嫌で仕方なくて、落ち着かない気持ちと世話になってばかりいた申し訳なさから何か少しでも役に立たなければと焦った俺は、ユーグが蔵書室の本棚から取り出しかけて途中で他の職員に呼び出された為、彼が取れなかった資料を代わりに取ろうとして高い脚立に登り案の定、足を踏み外して一番上の踏台から落ちた。
……すぐ戻るから待っていろとユーグに言われていたのに。
あれ程一人で脚立に登ってはいけないと言いつけられていたのに。
馬鹿な俺の頭には役に立ちたいという浅い考えしかなく、ユーグの言う事を聞かなかったんだ……
全身に走る激痛と息ができない苦しさで視界が急激に暗くなって周りの音も遠くなっていく中、ユーグが何度も必死に俺を呼んでいるのだけが分かり、そのまま意識が途切れて次に目が覚めた時には落下事故から4日も経った後だった。
……ユーグは、4日間昏睡していて頭を強く打った為に一時危篤状態にまでなっていた俺の側にずっと付いていてくれたらしく、一睡もしていないどころか食事や水すら殆どまともに摂っていなかった。
「全く……この頑固さには恐れ入るよ。君が目を覚ますまでは絶対にここを動かない、と言ってね。僕の言う事すら頑として聞きやしなかったんだ」
すっかり呆れ返ったようなせんせいの言葉通り、俺が目を開けるなりユーグは黎蓮……と、名前を呼んでくれてそれに掠れた声で答えれば彼は良かった……と心から安堵したような表情で息を吐き、そのままベッドに突っ伏して眠ってしまったのだ。
「ユーグ……ごめんね……結局迷惑、掛けちゃった……」
病院の医師による診察の結果、俺は暫くの絶対安静を言い渡され、ユーグも一週間の休息期間を取り消化に良い食事と水分をしっかり摂るよう、医師から診断を下された。
穏やかな寝息を立てる彼へ躊躇いがちに手を伸ばし、ゆるく波打った美しい金の髪をそっと撫でる。
「……違うね。全く持って見当違いだよ黎蓮。彼は君に迷惑を掛けられたなどとは欠片も思っていない。寧ろ"逆"だよ逆」
「逆……?どういう意味、ですか?せんせい……っ!ぅ……、痛ぁ……っ……」
つい起き上がろうとしてしまい痛みに再びベッドへ沈んだ俺を、せんせいは怜悧な表情を崩さないまま手で制した。
「おっと。まだ当分動いてはいけないよ、黎蓮。医者からも絶対安静だと言われただろう。何せ肋骨を二本折っている上に頭が見事にぱっくりと割れているんだ。それなりの重傷だが意識が戻っただけでも奇跡に近い」
奇跡……。
そっか……俺、もう少しで死ぬところだったんだ……
「俺がユーグの言う事ちゃんと聞かなかったから……沢山心配かけてごめんなさい……せんせい……」
「よろしい。反省とは同じ過ちを二度と繰り返さぬようにする為のものだ。……これに懲りたらもう二度とユーグを泣かせたりしない事だね。そうじゃないと彼、いずれ心臓麻痺で死んでしまうよ」
穏やかに微笑むせんせいの言葉を聞いても、一部の意味が上手く飲み込めなくて無意識に目を瞬かせる。
「……あ、の……せんせい……反省、しなきゃならないのはよく分かりました。……だけど一つだけよく分からなくて……ユーグは泣いたりしないと思います。俺、ただの拾いモノだし。あっ、でもユーグは優しいし、責任感も強いから俺の事をすごく心配してくれたのはわかってます……!それでも、俺はユーグにとって……」
家族でも何でもないし……と言いかけた所で、せんせいがまた呆れたような深いため息を吐いた。
「……君、結構言うね……今の、ユーグが聞いたら相当……」
「もう聞いています」
珍しく困ったような顔で自分の顎を撫でるせんせいの言葉を遮り、寝ていた筈のユーグが低い声を上げる。
「あれ?ユーグ、もう起きたの?まだ寝てても大丈夫だよ?何ならそっちに空いた簡易ベッドが……」
「要らん。怪我人の隣では気も休まらないからな。俺は控室に戻る」
身を起こしたユーグの眉間には珍しく険しい皺が寄っていた。
いつも穏やかな翡翠の目も鋭く据わってるし言葉も素っ気なくて冷たい。
何だかとても機嫌が悪そうだ、と単純にそう思った。
「体調は大丈夫かね?食べられそうなら、消化に良いリゾットでも作ってもらえるよう、厨房の者に声を掛けるが」
「……いえ、師匠の御手を煩わせるには及びません。お気持ちだけ有難く頂戴致します。体調も問題ありませんので、どうかお気遣いなく。……本部への報告がありますので、私は少し御前を失礼致します師匠」
「……そうか。十分身体を休めるようにと医師からの診断もある。たまには気兼ねなくゆっくり休みたまえよ。……水分だけはしっかり取るようにな」
せんせいの言葉に、ユーグは承知致しました。お心遣い、感謝致します。と、頭を深く下げそのままこちらを一度も見ず、病室の自動スライドドアを潜って再度、退室の一礼をしそのまま出て行ってしまった。
……音もなく閉まったドアが何となく虚しくて寂しく、ユーグに置いて行かれた事でより一層無機質な冷たい空気を助長させた。
普段、滅多に怒ったりなんてしないユーグを怒らせてしまった……
ユーグは俺が起きるまでずっと自分の体調も顧みず付きっきりで側にいてくれたのに。
俺の事をすごく心配、してくれたのに……
そんなにも優しい人を怒らせ俺はきっとまた傷つけた。
だってユーグの顔は怒っているのにとても悲しそうだったんだ……
それなのに俺は何が彼を傷つけたのか、具体的にどの発言がユーグを怒らせるに至ったのか、全く分からなかった。
何がいけなかったのか、どこがだめだったのか。
いくら考えても全然検討が付かず、ともすれば全部が不正解だったのではないかとさえ思えてきて無意識に掛け布団を強く握り締めれば頭が一瞬、ズキンと痛くなって思わず小さく呻く。
「ああ、こらこら。起きたばかりで無理に頭を働かせようとするんじゃない。無茶をすれば今度こそ本当に死んでしまうよ?」
「……ユーグを怒らせたくせに何が原因なのかすら分からないんです……自分のせいなのに……俺が悪いのに……こんな……回らない頭なんか……」
ふと、包帯が巻かれた額の上に大きな手が翳される。
「……先程も言っただろう?反省とは同じ過ちを繰り返さない為にするものだと……。……今は何も考えずゆっくり休みなさい。……君にも"彼"と同じく休息が必要だ」
せんせいの指が額ではなく、目元を撫でて優しく頬を滑った。
「……っ、はい……、分かり、ました……ご心配をおかけして申し訳ありませんでした……」
「Good kid。……慌ただしい時間が続いたから疲れただろう。暫く目を閉じて眠るといい。医療スタッフには僕から声を掛けておくよ。……何かあればナースコールを鳴らしなさい」
せんせいは静かな口調でそう言ってもう一度俺の頬をさらりと撫でる。
「……ありがとうございます……せんせい……」
「……Night night, sleep tight……。ゆっくりおやすみ、黎蓮……」
シーリングライトが消され、自動的に間接照明だけが点灯して睡眠に入りやすいよう室内が仄暗くなった。
一人になった病室で目を開けてただじっと天井を見つめる。
……ユーグ、やっぱりすごく怒ってるかな……。
……きっと俺の顔なんか今は見たくもないよね……
もう会話してくれなかったらどうしよう……
いやだな……
せんせいに何も考えるなと言われたのに次から次に浮かぶのは最悪な想像ばかり……
考えるうちに段々と悲しくなって来てじわりと視界に映った天井がぼやけて滲む。
「っ……、ばか、泣くなっ……ユーグは何も悪くない……っ……全部、考えられない俺が悪いんだから……」
掛け布団を頭まで引き上げ、暗闇の中できつく目を閉じる。
……寂しい、な……
変なの……いつも一人で寝てるのに……
何だか氷の中にいるみたいに寒いや……