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武田様よりも苦手な人がいた。
目の前で傷ついたように固まる彼がそうだ。
赤い鉢巻きが似合う俺と同い年くらいの武将、真田幸村様。
真っ直ぐで、純粋で、自分の心に正直で、なによりその疑うことを知らぬような、そんな瞳が酷く、こわい。
彼等は偉い人で、俺はただの旅人。
関わることなんて無かったはずなのに、俺のポカで関わってしまった。
離れられないならと冷たく突き放してみたけど、そんな顔をされるなんて想定外だ。俺が悪者みてーじゃねーか。いや、悪者疑惑はかかってたけれど。
そもそも何でそんか悲しそうにする必要がある?
「俺を信じたところで、其方に何も利益などない。」
俺とアナタの関係なんてたかが知れているでしょう。監視する側とされる側。俺が変な動きを見せれば忍者の兄ちゃんにサクッとやられるか俺のポケモンに連れられトンズラこいて終わり。ただそれだけの関係。
「…案外結構言うんだね、アンタ。」
「ホントの事だろ。そもそも監視するならどっかに閉じこめときゃいい。荷物だって問答無用で棄てりゃいい。なのにアナタ方は、疑いつつも俺に返した。其方に損しか生まないようなことを、何故わざわざやる。」
「……っ!!そなたは、物事を全て損得で考えるか!!」
真田様が声を荒げられた。
「えぇ。」
「嘘を申されるな!!」
「嘘?アナタは俺の嘘が分かるほど俺の事を知っておいでで?」
「ならば何故、荷物を棄てられそうになった時に"両親の形見があるから"と引き止めた!!
あそこで引き止められれば、武器を隠し持っていると疑われ、其方に損しか生み出さぬであろう!!」
「それも、嘘かも知れませ」
「動揺したね?」
肩に手をおかれて振り向けば、迷彩柄が口角を上げる。
「今まで淡々と、飄々と、でもすぐに質問を返してたのに、さっきは僅かに間ができた。 それに不自然に瞬きが増えたよ。」
図星をつかれ、言葉が出なくなった。
つーか間抜けかよ俺。墓穴掘るとか…。
「お主は」
耳を通った、低く、威厳のある声。
「お主は一体、その目で何を見てきた。」
静かに周りを見据えていた目が、俺に向けられる。
「害がないと見るには暗く澱んで刺々しく、敵と見るには弱々しく儚い。
…それ故、お主の真意が分からぬのだ。そなたに敵意が無くとも、儂等はそれを受け止め切れぬ。」
あーあ、なにもかも面倒くさい。
「…そ、ですね。敵意が無いのは本当です。ですが俺としてはアナタ方とは関わりたくありません。」
あ、そうだ、
ここで罵詈雑言をぶちまけば、殺してもらえるかも。
そしたら関わらないですむし、みんなに会える。
死ななくとも、関わることはないだろう。損なんて何処にもない。
ならば、と実行しようとしたその時。
《スダチ殿は一度、仲間を守りきれなかったことがあります。》
凛とした声が、俺をヘドロの衝動から引き上げた。
《私達の世には戦がありません。しかしやはり小さな諍いは残っています。欲にまみれた人間だっています。》
《…私達の世には、我々『ポケモン』と呼ばれる存在をやたらめったらに乱獲し、売り飛ばしたり生物兵器にしたりする人間がいるのです。
…スダチ殿には当時、とても仲のよいポケモンとその群れがいました。しかし、欲にまみれた人間によってその群れが乱獲されてしまったのです。
当時のスダチ殿はとても幼く、ポケモンを連れておりませんでした。ですが自分なりに抵抗し、体を殴られたたきつけられ…守れたのは、一番仲のよかったポケモンだけ。
そのポケモンには、散々噛まれ引っかかれ、技…術のようなものを浴びせられ、二度と姿を見せてくれなかったそうです。》
「えっ、まっ、」
ルカリオが波動を使って次々俺の過去を暴露していく。
《それだけでは御座いません。スダチ殿は珍しいポケモンを引き寄せる力を持っておられるようで、その力を狙った者達にも散々騙され、ひどい扱いを受けてきました。》
「止めろルカリオ」
《勿論騙されぬよう努めてもいました。しかし大人達は、今度は彼の大切な家族やポケモンを人質に取り始めたのです。
…スダチ殿は言っておられました。自分が守りきれる量がこんなにも少ないなんて思わなかった。最初から守れないのなら》
「ルカリオッ!!!」
何故暴露した?
彼等に吐き出してなんになる。
どうせ「だから?」「甘ったれんな」「被害者面するなよ」「守れなかったお前の責任だろ」と責め立てられて終わりだ。彼らにとって俺の過去なんて、ただの話に過ぎない。
なのに。
「だからと言って、周りすべてのものを敵に回すとはどういう了見だ!!スダチ!!!」
「スダチ殿…っ」
何故この館の主は、俺をまっすぐ叱るのだろう。
何故この若き武将は、ぽろぽろと涙を流しているのだろう。
目の前で傷ついたように固まる彼がそうだ。
赤い鉢巻きが似合う俺と同い年くらいの武将、真田幸村様。
真っ直ぐで、純粋で、自分の心に正直で、なによりその疑うことを知らぬような、そんな瞳が酷く、こわい。
彼等は偉い人で、俺はただの旅人。
関わることなんて無かったはずなのに、俺のポカで関わってしまった。
離れられないならと冷たく突き放してみたけど、そんな顔をされるなんて想定外だ。俺が悪者みてーじゃねーか。いや、悪者疑惑はかかってたけれど。
そもそも何でそんか悲しそうにする必要がある?
「俺を信じたところで、其方に何も利益などない。」
俺とアナタの関係なんてたかが知れているでしょう。監視する側とされる側。俺が変な動きを見せれば忍者の兄ちゃんにサクッとやられるか俺のポケモンに連れられトンズラこいて終わり。ただそれだけの関係。
「…案外結構言うんだね、アンタ。」
「ホントの事だろ。そもそも監視するならどっかに閉じこめときゃいい。荷物だって問答無用で棄てりゃいい。なのにアナタ方は、疑いつつも俺に返した。其方に損しか生まないようなことを、何故わざわざやる。」
「……っ!!そなたは、物事を全て損得で考えるか!!」
真田様が声を荒げられた。
「えぇ。」
「嘘を申されるな!!」
「嘘?アナタは俺の嘘が分かるほど俺の事を知っておいでで?」
「ならば何故、荷物を棄てられそうになった時に"両親の形見があるから"と引き止めた!!
あそこで引き止められれば、武器を隠し持っていると疑われ、其方に損しか生み出さぬであろう!!」
「それも、嘘かも知れませ」
「動揺したね?」
肩に手をおかれて振り向けば、迷彩柄が口角を上げる。
「今まで淡々と、飄々と、でもすぐに質問を返してたのに、さっきは僅かに間ができた。 それに不自然に瞬きが増えたよ。」
図星をつかれ、言葉が出なくなった。
つーか間抜けかよ俺。墓穴掘るとか…。
「お主は」
耳を通った、低く、威厳のある声。
「お主は一体、その目で何を見てきた。」
静かに周りを見据えていた目が、俺に向けられる。
「害がないと見るには暗く澱んで刺々しく、敵と見るには弱々しく儚い。
…それ故、お主の真意が分からぬのだ。そなたに敵意が無くとも、儂等はそれを受け止め切れぬ。」
あーあ、なにもかも面倒くさい。
「…そ、ですね。敵意が無いのは本当です。ですが俺としてはアナタ方とは関わりたくありません。」
あ、そうだ、
ここで罵詈雑言をぶちまけば、殺してもらえるかも。
そしたら関わらないですむし、みんなに会える。
死ななくとも、関わることはないだろう。損なんて何処にもない。
ならば、と実行しようとしたその時。
《スダチ殿は一度、仲間を守りきれなかったことがあります。》
凛とした声が、俺をヘドロの衝動から引き上げた。
《私達の世には戦がありません。しかしやはり小さな諍いは残っています。欲にまみれた人間だっています。》
《…私達の世には、我々『ポケモン』と呼ばれる存在をやたらめったらに乱獲し、売り飛ばしたり生物兵器にしたりする人間がいるのです。
…スダチ殿には当時、とても仲のよいポケモンとその群れがいました。しかし、欲にまみれた人間によってその群れが乱獲されてしまったのです。
当時のスダチ殿はとても幼く、ポケモンを連れておりませんでした。ですが自分なりに抵抗し、体を殴られたたきつけられ…守れたのは、一番仲のよかったポケモンだけ。
そのポケモンには、散々噛まれ引っかかれ、技…術のようなものを浴びせられ、二度と姿を見せてくれなかったそうです。》
「えっ、まっ、」
ルカリオが波動を使って次々俺の過去を暴露していく。
《それだけでは御座いません。スダチ殿は珍しいポケモンを引き寄せる力を持っておられるようで、その力を狙った者達にも散々騙され、ひどい扱いを受けてきました。》
「止めろルカリオ」
《勿論騙されぬよう努めてもいました。しかし大人達は、今度は彼の大切な家族やポケモンを人質に取り始めたのです。
…スダチ殿は言っておられました。自分が守りきれる量がこんなにも少ないなんて思わなかった。最初から守れないのなら》
「ルカリオッ!!!」
何故暴露した?
彼等に吐き出してなんになる。
どうせ「だから?」「甘ったれんな」「被害者面するなよ」「守れなかったお前の責任だろ」と責め立てられて終わりだ。彼らにとって俺の過去なんて、ただの話に過ぎない。
なのに。
「だからと言って、周りすべてのものを敵に回すとはどういう了見だ!!スダチ!!!」
「スダチ殿…っ」
何故この館の主は、俺をまっすぐ叱るのだろう。
何故この若き武将は、ぽろぽろと涙を流しているのだろう。