【サゴマキ?】いずれ本になったらいいなと思うもの(仮)
「アメリカ、ですか?」
「そっ。確か一番最初の研修で言ったと思うけど……覚えてる?」
先週末の打ち上げが思い出される。先輩達が話題にしたアメリカ行きが、本当に自分だとは微塵も予想していなかった。
「……はい」
「おぉ、流石だ。確か……長くて五年、短くても二年は向こうで過ごす、それで向こうでもっとやりたいなら、更にもう数年って事なんだけどね。よく覚えてたね」
火曜日の午後、いきなり上司である五十嵐に呼ばれ会議室に通されたと思ったらこれだ。当然ながら、期待よりも疑問が多く浮かぶ。とはいえ、五十嵐の口振りからしてほぼ確定事項だと思っていいだろう。断るなら急ぐべきだが、即座に挙げられる理由がなかった。
「業務内容についても、今とそんなには変わらないかな。国内での出張で、滞在期間が長いって感じで。それから向こうでの教育係というか、日本人のスタッフもいるから言葉とかはどうにかなるんじゃないかな。そのスタッフが言うには、英語は嫌でも覚えるらしいし……僕は苦手だから多分無理だろうけど。って、それは別に後でもいいか。えーっと、あぁそうだ。赴任先での部屋なんだけど、特に希望がないなら会社で管理している家があってね。それが国内出張とは違うところかも」
「家、ですか」
部屋、とは言わなかった為、アパートやマンションではなく家なのだろう。言葉の端からも、出張とは違うのだと嫌でも感じされられる。
「うん、家。ウチって定期的な海外出張も行ってもらってるからさ、毎回向こうで部屋探すのも大変でしょ? だからもうね、家建てちゃおうってなったんだよね。あっけどこれは、有期の出張とか駐在での話ね! もしも向こうに残りたいってなった場合には、部屋や家を探してもらうようにはなるんだけど……って、色々一気に言われてもパンクしちゃうよね。後でメールで送るから、また目を通しておいてね! 決めるのはそれからでも大丈夫なんだけど、できたら今月中には教えてくれるととてもありがたいな……!」
「……今月中、ですか……分かりました」
「ごめんねぇ色々と急で。こっちも困るんだよって上にも伝えてはみるからね!」
「あぁ、いえ……」
「じゃっ、僕次会議あったの忘れてたからちょっと行ってくるね! この部屋の電気だけ消しておいてくれると、わわっ、電話きちゃった! はいもしもし今行きます!」
風のように五十嵐が退出した。嵐のように、の方が近いかもしれない。とんでもないものを置いて、だ。まさか本当に、自らに白羽の矢が立つとは。何かへの大きな貢献や、取り返しのつかない失敗も、これといって思い当たらない。かといって理由を挙げてもらったところで、それを基準として判断するかは……なんとも言えず。念の為確認した今日の日付は、世間では中旬と呼ばれる範囲だろう。月末とは聞いたが、実際の期限は二週間程しかなかった。とはいえこのまま座っていても、何も始まらない。どの角度で考えたとしても、今できる事は一度自席に戻り、届くであろうメールを待つだけとしか思えず。天井を見上げ深く呼吸をしてから会議室を後にした。
「あ、高砂さんお帰り……って、なんか元気ない? 大丈夫?」
「あぁ……大丈夫です、すみません」
「本当に? まぁ、大丈夫ならいいんだけど……なにか悩みとかあったら聞くからね? それに業務が落ち着いてるなら、半休にしてもいいし……無理しないでね」
「……ありがとうございます」
気にかけてもらえてありがたい気持ちはあれど、相談してもいいのかどうかの確認を失念していた。うっかり口外してしまい、五十嵐が大変な思いをするのは高砂も望んでいない。とりあえず仕事場にいる限りは、仕事をしなければ。離席中に置かれていた書類やメモを集め、一枚ずつ目を通す。重要度が高いものと期限が近いものとを簡単に振り分け、パソコンに向き直る。新規メールの通知で見えた件名の【さっきの概要】の文字と差出人は、今は見なかった事にした。
それから一時間程経過したが、やはり落ち着かない。メールも確認したが、概ね五十嵐から聞いた内容と同じようなものだった。新たに悩む事が増えた訳ではないのだが、それでも普段より処理速度が落ちている。何度も切り替えろと念じてはいるが、上手くいっていない。小さく溜息を零した。
「……高砂さん、本当に大丈夫?」
「大丈夫です、すみません」
「んーホントかなぁ……ロビーとかで十分くらい息抜きしてきたら? はい、これあげるよ。食べ終わったら帰っておいでよ」
「……ありがとうございます、いただきます」
小川から渡されたのは、チョコマシュマロだった。受け取るだけ受け取って仕事を続けようと思ってはいたが、席を立つまで小川はこちらから視線を外そうとしない。一つ会釈をして、ロビーに向かうしかなかった。
業務中という事もあり、誰もいないロビーは静かだった。一番手前のテーブルに座り、貰ったチョコマシュマロを口にする。最後に食べたのはいつだったか。懐かしさもあり、先程から心は幾らか落ち着いた。まだ思考は回り続けているが、いい加減戻らねばならないだろう。立ち上がりかけた時、人の気配がした。
「お、珍しい。お疲れ」
「お疲れ様です」
「……本当に珍しいな。ん? それ……小川のだろ。何かあったのか?」
気配の主は志賀崎だった。隣りに座ると同時に、高砂の手に持つチョコマシュマロの袋に気付く。抱えていた書類を机で整えたかったらしい。数枚のクリアファイルに入れながら、高砂からの答えを待っていた。
「いえ、大したことでは……」
「それ、小川のお気に入りなんだよ。だから人にあげるなんて、よっぽどの事だろうと思ったが……あぁ、もしかしてアメリカか?」
何故、と顔に出ていたのだろう。志賀崎が少し笑いながら、種明かしをした。
「俺、来月から人事部に異動になるんだわ。それで来月の人事の話も耳に入って……あぁ、まだ確定じゃねぇんだけど、声掛ける候補に高砂さんの名前があってな。……先週の打ち上げの時にはもう知ってたんだ。本人より先に知ってたとは思わなかったけどな」
五十嵐さんだしなぁまぁそうだよなぁ、と続ける志賀崎はクリアファイルを並べ替えて順番の確認をしていた。納得がいく順番を見付けたようで、揃えて立ち上がる。
「ま、考えすぎないようにな。俺らの同期なんか、英語も出来ねぇのに行くって決めてたし……理由なんてあってもなくても、行く奴は行くし行かねぇ奴は行かねぇ。そんな中で俺が言えるのはただ一つ。……五十嵐さんは多分返事の期日を早めてくるだろうな。あの人も上から色々言われて大変みてぇだしよ。焦って後悔する方を選ばないようにな。じゃな」
程々にしろよ、と言い残し立ち去る志賀崎の背を見送った。後悔の無い選択。それが出来れば苦労はしないが、それも知った上でのアドバイスだろう。改めて自分の考えを整理してみる必要がありそうだ。どちらに傾くのか、或いは敢えて傾けるのか。自分が納得する答えとは、何か。先程までより幾らか思考は纏まり、少しは穏やかになれた。続きを考えるのは退社後に。そう切り替る為に、短い深呼吸をした。
ロビーから戻ると、五十嵐からの追加メールが届いていた。思わず零した短い溜息。ふと、溜息をつくと幸せが逃げる、なんて言葉を思い出したが、今日くらいは見逃してほしかった。
帰宅後、高砂の脳内を占めるのは上司の話だった。アメリカへの駐在。希望者の中から決める年もあれば、上層部が話し合い候補者を絞る年もあると、追加で届いたメールには書かれていた。今年も希望者は数人いたらしいが、抱えている業務的に、すぐに日本を離れられなかったのだとか。それだけ評価してもらえているのは、とてもありがたい事であるのは分かっている。だが、異国の地への不安が全く無いとは言えない。それに今日の話を聞いて真っ先に浮かんだのは、仕事についてではなく、牧だ。理由は単純で、駐在中に利用する家がある住所が、牧の所属するチームの本拠地近くだったのだ。こんな事で揺らいでいる状態の自分が、本当にアメリカに行っていいのか。やはりずるずる悩んで最終的に断るよりは、早く連絡してしまうべきだろう。そう決めたと同時に、携帯が震えた。そういえばマナーモードにしたままだった。現在二十一時三〇分。こんな時間に誰なのかと数人候補に浮かべたが、差出人は予想外の人物だった。
おはよう。
この時間なら大丈夫だろうが、起こしたら悪い。
久し振りだな、元気にしてるか?
実は、今度の土曜日に、日本で試合があるんだ。
もしよかったら、見に来ないか?
選手用に知人を呼べる席があるんだが、オレの両親からは都合が合わねえって連絡があって、余っちまったんだ。
高砂の予定もあるだろうから、無理にとは言わねえが……。
都合がつくなら、教えてくれ。
じゃあ、また。 牧
おはようということは、向こうは朝なのだろうか。時差はすぐに分からなかったが、彼の事だ。不摂生な生活はしておらず、朝だからおはようと送ってきたに違いない。そして肝心な内容は、今週末の親善試合についてだ。牧のチームが日本に来る事は知っていたが、チケットの倍率は恐ろしい程に高く、平日であるにも拘らず受付開始時刻の数分後に専用サイトがサーバーダウンしてしまったと聞いた。その後復旧はしたものの、高砂が休憩中にサイトを確認した時には、既にどの席も完売となっていた。確か試合前にはアイドルによるミニライブが行われる情報もあり、サーバーダウンとなってしまった事も納得がいった。仕方ないと思って諦めていたが、まさか。手帳を開いて確認すると、指定された土曜日には何も予定が入っていなかった。バスケの試合観戦も、もう何年振りになるだろうか。更にコート上には牧もいる。断る理由は、一つもなかった。
「そっ。確か一番最初の研修で言ったと思うけど……覚えてる?」
先週末の打ち上げが思い出される。先輩達が話題にしたアメリカ行きが、本当に自分だとは微塵も予想していなかった。
「……はい」
「おぉ、流石だ。確か……長くて五年、短くても二年は向こうで過ごす、それで向こうでもっとやりたいなら、更にもう数年って事なんだけどね。よく覚えてたね」
火曜日の午後、いきなり上司である五十嵐に呼ばれ会議室に通されたと思ったらこれだ。当然ながら、期待よりも疑問が多く浮かぶ。とはいえ、五十嵐の口振りからしてほぼ確定事項だと思っていいだろう。断るなら急ぐべきだが、即座に挙げられる理由がなかった。
「業務内容についても、今とそんなには変わらないかな。国内での出張で、滞在期間が長いって感じで。それから向こうでの教育係というか、日本人のスタッフもいるから言葉とかはどうにかなるんじゃないかな。そのスタッフが言うには、英語は嫌でも覚えるらしいし……僕は苦手だから多分無理だろうけど。って、それは別に後でもいいか。えーっと、あぁそうだ。赴任先での部屋なんだけど、特に希望がないなら会社で管理している家があってね。それが国内出張とは違うところかも」
「家、ですか」
部屋、とは言わなかった為、アパートやマンションではなく家なのだろう。言葉の端からも、出張とは違うのだと嫌でも感じされられる。
「うん、家。ウチって定期的な海外出張も行ってもらってるからさ、毎回向こうで部屋探すのも大変でしょ? だからもうね、家建てちゃおうってなったんだよね。あっけどこれは、有期の出張とか駐在での話ね! もしも向こうに残りたいってなった場合には、部屋や家を探してもらうようにはなるんだけど……って、色々一気に言われてもパンクしちゃうよね。後でメールで送るから、また目を通しておいてね! 決めるのはそれからでも大丈夫なんだけど、できたら今月中には教えてくれるととてもありがたいな……!」
「……今月中、ですか……分かりました」
「ごめんねぇ色々と急で。こっちも困るんだよって上にも伝えてはみるからね!」
「あぁ、いえ……」
「じゃっ、僕次会議あったの忘れてたからちょっと行ってくるね! この部屋の電気だけ消しておいてくれると、わわっ、電話きちゃった! はいもしもし今行きます!」
風のように五十嵐が退出した。嵐のように、の方が近いかもしれない。とんでもないものを置いて、だ。まさか本当に、自らに白羽の矢が立つとは。何かへの大きな貢献や、取り返しのつかない失敗も、これといって思い当たらない。かといって理由を挙げてもらったところで、それを基準として判断するかは……なんとも言えず。念の為確認した今日の日付は、世間では中旬と呼ばれる範囲だろう。月末とは聞いたが、実際の期限は二週間程しかなかった。とはいえこのまま座っていても、何も始まらない。どの角度で考えたとしても、今できる事は一度自席に戻り、届くであろうメールを待つだけとしか思えず。天井を見上げ深く呼吸をしてから会議室を後にした。
「あ、高砂さんお帰り……って、なんか元気ない? 大丈夫?」
「あぁ……大丈夫です、すみません」
「本当に? まぁ、大丈夫ならいいんだけど……なにか悩みとかあったら聞くからね? それに業務が落ち着いてるなら、半休にしてもいいし……無理しないでね」
「……ありがとうございます」
気にかけてもらえてありがたい気持ちはあれど、相談してもいいのかどうかの確認を失念していた。うっかり口外してしまい、五十嵐が大変な思いをするのは高砂も望んでいない。とりあえず仕事場にいる限りは、仕事をしなければ。離席中に置かれていた書類やメモを集め、一枚ずつ目を通す。重要度が高いものと期限が近いものとを簡単に振り分け、パソコンに向き直る。新規メールの通知で見えた件名の【さっきの概要】の文字と差出人は、今は見なかった事にした。
それから一時間程経過したが、やはり落ち着かない。メールも確認したが、概ね五十嵐から聞いた内容と同じようなものだった。新たに悩む事が増えた訳ではないのだが、それでも普段より処理速度が落ちている。何度も切り替えろと念じてはいるが、上手くいっていない。小さく溜息を零した。
「……高砂さん、本当に大丈夫?」
「大丈夫です、すみません」
「んーホントかなぁ……ロビーとかで十分くらい息抜きしてきたら? はい、これあげるよ。食べ終わったら帰っておいでよ」
「……ありがとうございます、いただきます」
小川から渡されたのは、チョコマシュマロだった。受け取るだけ受け取って仕事を続けようと思ってはいたが、席を立つまで小川はこちらから視線を外そうとしない。一つ会釈をして、ロビーに向かうしかなかった。
業務中という事もあり、誰もいないロビーは静かだった。一番手前のテーブルに座り、貰ったチョコマシュマロを口にする。最後に食べたのはいつだったか。懐かしさもあり、先程から心は幾らか落ち着いた。まだ思考は回り続けているが、いい加減戻らねばならないだろう。立ち上がりかけた時、人の気配がした。
「お、珍しい。お疲れ」
「お疲れ様です」
「……本当に珍しいな。ん? それ……小川のだろ。何かあったのか?」
気配の主は志賀崎だった。隣りに座ると同時に、高砂の手に持つチョコマシュマロの袋に気付く。抱えていた書類を机で整えたかったらしい。数枚のクリアファイルに入れながら、高砂からの答えを待っていた。
「いえ、大したことでは……」
「それ、小川のお気に入りなんだよ。だから人にあげるなんて、よっぽどの事だろうと思ったが……あぁ、もしかしてアメリカか?」
何故、と顔に出ていたのだろう。志賀崎が少し笑いながら、種明かしをした。
「俺、来月から人事部に異動になるんだわ。それで来月の人事の話も耳に入って……あぁ、まだ確定じゃねぇんだけど、声掛ける候補に高砂さんの名前があってな。……先週の打ち上げの時にはもう知ってたんだ。本人より先に知ってたとは思わなかったけどな」
五十嵐さんだしなぁまぁそうだよなぁ、と続ける志賀崎はクリアファイルを並べ替えて順番の確認をしていた。納得がいく順番を見付けたようで、揃えて立ち上がる。
「ま、考えすぎないようにな。俺らの同期なんか、英語も出来ねぇのに行くって決めてたし……理由なんてあってもなくても、行く奴は行くし行かねぇ奴は行かねぇ。そんな中で俺が言えるのはただ一つ。……五十嵐さんは多分返事の期日を早めてくるだろうな。あの人も上から色々言われて大変みてぇだしよ。焦って後悔する方を選ばないようにな。じゃな」
程々にしろよ、と言い残し立ち去る志賀崎の背を見送った。後悔の無い選択。それが出来れば苦労はしないが、それも知った上でのアドバイスだろう。改めて自分の考えを整理してみる必要がありそうだ。どちらに傾くのか、或いは敢えて傾けるのか。自分が納得する答えとは、何か。先程までより幾らか思考は纏まり、少しは穏やかになれた。続きを考えるのは退社後に。そう切り替る為に、短い深呼吸をした。
ロビーから戻ると、五十嵐からの追加メールが届いていた。思わず零した短い溜息。ふと、溜息をつくと幸せが逃げる、なんて言葉を思い出したが、今日くらいは見逃してほしかった。
帰宅後、高砂の脳内を占めるのは上司の話だった。アメリカへの駐在。希望者の中から決める年もあれば、上層部が話し合い候補者を絞る年もあると、追加で届いたメールには書かれていた。今年も希望者は数人いたらしいが、抱えている業務的に、すぐに日本を離れられなかったのだとか。それだけ評価してもらえているのは、とてもありがたい事であるのは分かっている。だが、異国の地への不安が全く無いとは言えない。それに今日の話を聞いて真っ先に浮かんだのは、仕事についてではなく、牧だ。理由は単純で、駐在中に利用する家がある住所が、牧の所属するチームの本拠地近くだったのだ。こんな事で揺らいでいる状態の自分が、本当にアメリカに行っていいのか。やはりずるずる悩んで最終的に断るよりは、早く連絡してしまうべきだろう。そう決めたと同時に、携帯が震えた。そういえばマナーモードにしたままだった。現在二十一時三〇分。こんな時間に誰なのかと数人候補に浮かべたが、差出人は予想外の人物だった。
おはよう。
この時間なら大丈夫だろうが、起こしたら悪い。
久し振りだな、元気にしてるか?
実は、今度の土曜日に、日本で試合があるんだ。
もしよかったら、見に来ないか?
選手用に知人を呼べる席があるんだが、オレの両親からは都合が合わねえって連絡があって、余っちまったんだ。
高砂の予定もあるだろうから、無理にとは言わねえが……。
都合がつくなら、教えてくれ。
じゃあ、また。 牧
おはようということは、向こうは朝なのだろうか。時差はすぐに分からなかったが、彼の事だ。不摂生な生活はしておらず、朝だからおはようと送ってきたに違いない。そして肝心な内容は、今週末の親善試合についてだ。牧のチームが日本に来る事は知っていたが、チケットの倍率は恐ろしい程に高く、平日であるにも拘らず受付開始時刻の数分後に専用サイトがサーバーダウンしてしまったと聞いた。その後復旧はしたものの、高砂が休憩中にサイトを確認した時には、既にどの席も完売となっていた。確か試合前にはアイドルによるミニライブが行われる情報もあり、サーバーダウンとなってしまった事も納得がいった。仕方ないと思って諦めていたが、まさか。手帳を開いて確認すると、指定された土曜日には何も予定が入っていなかった。バスケの試合観戦も、もう何年振りになるだろうか。更にコート上には牧もいる。断る理由は、一つもなかった。
3/3ページ
