【サゴマキ】His back 2
次の休日には、早速二人でバーガー屋へと出掛けた。すっかり元気になった牧は、美味そうにハンバーガーを頬張っている。フライドポテトをバーベキューソースに付けて、一口。塩とソースが付いたその唇には、試合を共に見た日以降、触れる機会が無かった。それらを舐め取った舌も同様で、ここがどちらかの部屋だったら、なんて。どうにも思考が引っ張られてしまうのは、ここ最近の仕事の密度が高かったからだろう。疲労を感じる時に脳裏を過るのは、牧の唇、牧の舌、そして、見つけてしまった例のオモチャ。どのように使用しているのかは、未だ聞けてはいない。
「……ところで、そんなに食って大丈夫なのか?」
「ん? 摂取カロリーの管理の事か?」
「あぁ、夕飯はチームの食堂で食ってるんだろ? それなら普段から気を付けてるんじゃないのかと思ったんだが……」
「今日は問題無い日だ。まぁ、どんなものを食ったかは共有してるけどな」
「そうか……そうだよな、す」
「すまんって言うなよ? オレを気にしての事だってのは分かってるから、気にすんな」
「……あぁ、分かった」
「そんなに心配すんなよ、オレも子供じゃねぇんだから」
「そうだな、悪かった。ソース零してるぞ」
「………………」
テーブルに付いたソースを拭きながら指摘すると、牧は照れからか頬を少し赤くして、唇を尖らせていた。その様子が可愛らしくて、思わず笑ってしまう。復調後の牧は、これまで以上の活躍ぶりで。昨日も試合にフルで出場しており、後半にかけて動きがさらに良くなっていたと書かれたネット記事を見付け、懐かしさを感じた。
「昨日の試合見たけどよ、絶好調だったな」
「そうなんだよ! 今までより動きやすかったんだ、風邪引いたから、本調子になるまではまだかかるかと思ったが……」
「しっかり休めたからじゃないか? 風邪引く前は何か思い詰めてたろ」
「あー……実は、な。ちょっと練習で行き詰まっててな……その頃帰りが遅かった時あったろ? 別に珍しい事じゃねぇんだが、流石に連日はなぁ」
「大変だったんだな」
「ん。大変ではあるが、オレが好きで始めた事だし、周りの奴等ともやっていかないといけねぇし……やりがいはあるな。ま、体調崩してたら元も子もねぇけどな」
苦笑しながら、牧はナゲットを口へと放った。それから思い出したように口を開く。
「そうだ、次こそはオレが払うからな」
「……急にどうした」
「まずはこの間、風邪引いた時の買い物とか頼んだだろ? それから、その前の高砂スペシャル代がまだ……」
「どっちもいらねぇんだが……風邪の方は元気な姿が見れたからそれでいい。あとは自炊のついでで……あぁ、その時に次の昼代をってなったんだったな……その事か? よく覚えてたな……」
「結局あれから出掛けれてなかっただろ? 次の昼が今日になるが、会計済んじまったし」
「……あぁ、なら次回は頼む」
「おう!」
牧に奢らせるのは気が進まなかったが、頑固な一面が直っていないのならばこちらが折れた方が早い。あまりにいい笑顔をこちらに向けるものだから、つい可愛いと零してしまった。
「……おい、可愛くはねぇだろ」
「いや、可愛いな」
「だから!」
「普段の牧は格好良いぞ? その分、オレの前ではリラックスしてくれてるんだろ。そこが可愛いって言ってんだ」
「……普段が格好良いなら、喜んでいいのか……?」
困惑している牧も可愛らしく、気付かれないように喉の奥で笑う。できるだけ平静を装ってはいるが、ちょうど昨夜にも例の夢を見てしまったせいか、牧の唇、隙間から見える白い歯、瞬きの度に伏せられる瞼、目尻の黒子、ポテトを摘む指先、その指先を舐め取る赤い舌、何もかもに反応してしまいそうでよくない。かといって急に席を立ちトイレに向かうのも怪しすぎるし、今すぐ解散するのも不自然だ。さて、どうしたものか。
「……高砂? 大丈夫か?」
「ん? 何がだ?」
「何がって……なんか、ぼーっとしてたように見えたから、何かあったかと思ったが……」
「そうか? いつもと変わらねぇと思うが……」
「……本当か?」
「本当だ。……眉間の皺が凄いぞ?」
「…………」
勿論嘘である。だが、正直に話せる理由でもなく、誤魔化す以外の方法がなかった。牧からは追加で問われる事はなく、どうにかやり過ごす事ができたと思う。店を出てからは共にアパートへ向かい、今日は夕方から牧のチームのリモートでのミーティングがあり、終了時刻が読めない為に、扉の前で解散となった。時間までどちらかの部屋で過ごすのはどうだと提案しかけたが、どちらの部屋であっても無理に手を出してしまいそうで良くない。欲求はあれどまだ話し合いもできていない今は、完全な悪手となってしまう。焦って嫌な思いをさせる事は、高砂も望んでいなかった。
その日の夜、メッセージが届くとも知らずに。
『話がある。今週末、練習後にそっちの部屋に行ってもいいか?』
「……ところで、そんなに食って大丈夫なのか?」
「ん? 摂取カロリーの管理の事か?」
「あぁ、夕飯はチームの食堂で食ってるんだろ? それなら普段から気を付けてるんじゃないのかと思ったんだが……」
「今日は問題無い日だ。まぁ、どんなものを食ったかは共有してるけどな」
「そうか……そうだよな、す」
「すまんって言うなよ? オレを気にしての事だってのは分かってるから、気にすんな」
「……あぁ、分かった」
「そんなに心配すんなよ、オレも子供じゃねぇんだから」
「そうだな、悪かった。ソース零してるぞ」
「………………」
テーブルに付いたソースを拭きながら指摘すると、牧は照れからか頬を少し赤くして、唇を尖らせていた。その様子が可愛らしくて、思わず笑ってしまう。復調後の牧は、これまで以上の活躍ぶりで。昨日も試合にフルで出場しており、後半にかけて動きがさらに良くなっていたと書かれたネット記事を見付け、懐かしさを感じた。
「昨日の試合見たけどよ、絶好調だったな」
「そうなんだよ! 今までより動きやすかったんだ、風邪引いたから、本調子になるまではまだかかるかと思ったが……」
「しっかり休めたからじゃないか? 風邪引く前は何か思い詰めてたろ」
「あー……実は、な。ちょっと練習で行き詰まっててな……その頃帰りが遅かった時あったろ? 別に珍しい事じゃねぇんだが、流石に連日はなぁ」
「大変だったんだな」
「ん。大変ではあるが、オレが好きで始めた事だし、周りの奴等ともやっていかないといけねぇし……やりがいはあるな。ま、体調崩してたら元も子もねぇけどな」
苦笑しながら、牧はナゲットを口へと放った。それから思い出したように口を開く。
「そうだ、次こそはオレが払うからな」
「……急にどうした」
「まずはこの間、風邪引いた時の買い物とか頼んだだろ? それから、その前の高砂スペシャル代がまだ……」
「どっちもいらねぇんだが……風邪の方は元気な姿が見れたからそれでいい。あとは自炊のついでで……あぁ、その時に次の昼代をってなったんだったな……その事か? よく覚えてたな……」
「結局あれから出掛けれてなかっただろ? 次の昼が今日になるが、会計済んじまったし」
「……あぁ、なら次回は頼む」
「おう!」
牧に奢らせるのは気が進まなかったが、頑固な一面が直っていないのならばこちらが折れた方が早い。あまりにいい笑顔をこちらに向けるものだから、つい可愛いと零してしまった。
「……おい、可愛くはねぇだろ」
「いや、可愛いな」
「だから!」
「普段の牧は格好良いぞ? その分、オレの前ではリラックスしてくれてるんだろ。そこが可愛いって言ってんだ」
「……普段が格好良いなら、喜んでいいのか……?」
困惑している牧も可愛らしく、気付かれないように喉の奥で笑う。できるだけ平静を装ってはいるが、ちょうど昨夜にも例の夢を見てしまったせいか、牧の唇、隙間から見える白い歯、瞬きの度に伏せられる瞼、目尻の黒子、ポテトを摘む指先、その指先を舐め取る赤い舌、何もかもに反応してしまいそうでよくない。かといって急に席を立ちトイレに向かうのも怪しすぎるし、今すぐ解散するのも不自然だ。さて、どうしたものか。
「……高砂? 大丈夫か?」
「ん? 何がだ?」
「何がって……なんか、ぼーっとしてたように見えたから、何かあったかと思ったが……」
「そうか? いつもと変わらねぇと思うが……」
「……本当か?」
「本当だ。……眉間の皺が凄いぞ?」
「…………」
勿論嘘である。だが、正直に話せる理由でもなく、誤魔化す以外の方法がなかった。牧からは追加で問われる事はなく、どうにかやり過ごす事ができたと思う。店を出てからは共にアパートへ向かい、今日は夕方から牧のチームのリモートでのミーティングがあり、終了時刻が読めない為に、扉の前で解散となった。時間までどちらかの部屋で過ごすのはどうだと提案しかけたが、どちらの部屋であっても無理に手を出してしまいそうで良くない。欲求はあれどまだ話し合いもできていない今は、完全な悪手となってしまう。焦って嫌な思いをさせる事は、高砂も望んでいなかった。
その日の夜、メッセージが届くとも知らずに。
『話がある。今週末、練習後にそっちの部屋に行ってもいいか?』
