デジモンアドベンチャー 光子郎 ヒカリ
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子ども達はホエーモンの背に乗って風を感じていた。
「助かったよ、ホエーモン」
「本当、一時はもうダメかと思いましたよ」
「皆さん無事でなによりです」
「ホエーモンのおかげだよ!」
「なあ、ホエーモン、どうしたらオレ達はダークマスターズ達を倒せるんだ」
「奴等がデジモンワールドを、こんな風にしちゃったのは何故なの?」
「私には詳しくは分かりません、突然世界が歪み始めたと思ったら、今の様な状態になってしまったのです。そして、メタルシードラモンがこの海を支配している」
その時、太一が拳を作り、その手をホエーモンの背につけた。
「くそ、メタルシードラモンめ」
太一の近くへ行くヒカリ。
「お兄ちゃん……元気だして」
「ああ、そうだな……よし、元気出すか!」
「その通りです元気を出しましょう、安全な場所があるか分かりませんが、せめてメタルシードラモンの手の届かぬ場所を探しましょう」
暫くすると、三日月型の島に辿り着いた子ども達は、食料を調達する事にした。
空には時々、トビウオが飛んでいた、そこにテイルモンが飛び掛ると、目の前のお皿に綺麗に切られた魚が並ぶ。
子ども達はそれを見て、思わず拍手した。
次はパルモンが前に出て、海に向かって長く伸ばした蔓で、大きな魚を捕まえた。
だがその魚の重さでパルモンは目を廻した。
その時、太一がアグモンを呼ぶが、アグモンは1人で大きい魚を丸呑みにしている所だった。
「が、頑張れよ」
太一は引きながらそう言った。
その時、丈の持っていた釣竿が引いた。
その反動で丈が、海に落ちる。
「皆! 大変だよー!」
ゴマモンの声に子ども達は立ち上がった。
「敵がやって来るんだ!」
「何ー!?」
「辺りには何も見えないけど……」
「魚達が後方200の距離でメタルシードラモンの手下を見つけたそうです」
その言葉に子ども達は顔を見合わせた。
「どうしよう……」
「ここはすぐ見つけられるでしょう、みなさん、私の中へ、潜行して振り切ります」
子ども達はホエーモンの言葉に頷いた。
ホエーモンの中に入ったら、光子郎がホエーモンの身体にケーブルを繋ぎ、パソコンを弄っていた。
「光子郎、お前は何をしているんだ?」
「ええ、ちょっと……」
「勿体つけずに教えろよ!」
「まあ、見ててください……よし、繋がった」
その言葉に子ども達はパソコンの画面を見た。
そこには海の中の景色が映っていた。
「光子郎はん、これなんでっか?」
「ホエーモンの視覚情報をこのパソコンに経由させたんですよ」
「経由?」
「何それ?」
「つまりですね、この画面は今ホエーモンが見ている画像その物なんです」
「やっぱり光子郎さんは凄い!」
「いや、そんな……」
流紀の言葉に照れる光子郎。
「へえ、やるじゃないか」
「すごーい! 潜水艦みたい!」
ミミはパルモンの手を取ってクルクルと回り始めた。
すると雷也とヒカリが耳を塞いだ。
「ヒカリ、雷也、大丈夫か?」
「大丈夫、ちょっと耳が……」
「僕も、耳が……」
「「「ミミ?」」」
雷也とヒカリの言葉に、皆がミミを見た。
「そう言えば、私も耳キーン」
その時、ホエーモンの声が聞こえてきた。
「ははは、すみません。少し急いで潜り過ぎた様です、今、気圧を調整しますので」
少ししたら耳がキーンっとしなくなった子ども達。
「あ、治った!」
「潜った事で気圧が変化してたんですね」
「ありがとう、ホエーモン」
するとピヨモンが何かに気付く。
「何の音?」
低いモーター音の様なのが近づいてくる。
「みなさん、静かに」
子ども達は息を殺し、モーター音が去るのを待った。
「通り過ぎたみたいだね」
「まだ安心は出来ません、暫くは静かにしていましょう」
だがその時、大きな声が聞こえた。
「居ました! ホエーモンです!」
「しまった、見つかった!」
「来ます!」
「ハンギョモンの攻撃です、みなさん、気をつけて下さい」
ホエーモンはスピードを出して、その場から逃げ出した。
「タケル、どうしよう……」
「このままじゃやられちゃうよ」
「悔しいが、ホエーモンの中に居る限り……」
「オレ達何も出来ないのかよ!」
太一は悔しそうに手に拳をぶつける。
「後方より、さらにスクリュー音が3つ!」
「なんですって!?」
「敵の増援です」
ホエーモンの言葉に子ども達は、驚きの声をあげる。
「このままだとあきまへんで」
「ホエーモン、浮上してくれ! そうすれば、まだ戦いようがあるはずだ」
「頼む」
「私に考えがあります。上手くいけば、敵を撒ける筈です」
「ホエーモンの考えって何?」
「上手くいけばって?」
「上手くいかなかったらどうするつもりよ!」
ハンギョモンの攻撃をかわし、泳ぎ続けるホエーモン。
それでも子ども達を追ってくるハンギョモン。
「もうだめだー!」
「いやー!」
ハンギョモンの銛がホエーモンの背中に突き刺さった。
だがホエーモンは、それに構わず海の底へと泳ぎ続けた。
その時、ホエーモンに銛を突き刺したハンギョモンのボンベが潰れ、急に浮上していった。
「水圧です! これがホエーモンの作戦だったんですね」
「ホエーモンは、元々深海のデジモンだから、水圧なんてヘッチャラなんだ!」
「やったぜ、ホエーモン!」
ホエーモンの作戦に喜ぶ子ども達。
スクリュー音は遠くへ行ったみたい。
「何とかなったな」
「こんな裏技があったとは」
「……お兄ちゃん、これからどうするの?」
「何時までも深海に居るわけにはいかないし」
「そうだヒカリさん、ちょっといいですか?」
光子郎が立ち上がって、ヒカリに何かを耳打ちする。
そして頷くヒカリ。
ヒカリが立ち上がり、私達から少し離れてお辞儀をする。
「では……」
「お願いします」
ヒカリがホイッスルを口に咥え、それを思いっきり吹く。
「上手くいきました。ヒカリさん、ご苦労様です。音の反射を利用してこの先に横穴を見つけました! ここから逃げられるかもしれません」
「はい、私も感じました。どうやら地上近くへその穴は通じている様です」
どんどん進んで行くと、途中からキラキラと光る無数の粒が浮かんでいた。
流紀とヒカリ、ミミ、空は、パソコンの画面をウットリしながら見ていた。
その先に見えてきたのは横穴だった。
「私達助かったのね!」
子ども達が喜んでいるのもつかの間、大きな衝撃がホエーモンを襲い、身体の中に居る子ども達にまで響いた。
「またかよ!」
「振り切ったのではないのか?」
「みなさん、気をつけてください! メタルシードラモンです!」
ホエーモンのその言葉に、子ども達は驚きの声をあげる。
暫くしてホエーモンは海上に上がった。
子ども達はホエーモンの背の上へと移動した。
「まぶしーい!」
「空気が新鮮だわ」
「太陽の光りがこんなに気持ちのいいものだったなんて」
「んー!」
流紀は身体を伸ばした。
子ども達は思わず、今の状況を忘れ笑っていた。
「何がそんなに可笑しいのだ?」
すると突然海上に、メタルシードラモンが現れた。
「メタルシードラモン」
「どうして?」
「ここまでだな、選ばれし子ども達ー!」
「みなさん、しっかり捕まっていてください」
ホエーモンがそう言ってグルグル回ると、辺りに大きな渦が出来てハンギョモン達を流していった。
時間を稼いでいる間に、子ども達はどうするか話合う。
「アグモンが引き付けてる間に、俺達は岸へ渡り、体勢を整えよう」
「わたった」
「それじゃあ、僕とゴマモンが援護するよ」
「たのむ」
アグモンが進化しウォーグレイモンになって、メタルシードラモンへと向かって行った。
流紀と雷也はヌイモンが進化した、フェアリーモンに抱き上げられ岸へと飛ぶ。
「ホエーモン、ありがとう! 後は任せろ!」
「しかし……」
「その巨体じゃ狙い撃ちになる。早く逃げるんだ!」
「さ、早く」
「分かりました」
そう言って、ホエーモンは海の中へと潜って行った。
ハンギョモンの攻撃をイッカクモンが反撃する、そしてズドモンへと進化した。
それを見たメタルシードラモンはズドモンへ向かって攻撃を放つ。
その時ウォーグレイモンが攻撃しようとするも、メタルシードラモンの口の中へと入ってしまった。
その時ホエーモンがメタルシードラモンに向かって体当たりをしたウォーグレイモンは口から脱出した。
しかし、メタルシードラモンはホエーモンの頭を打ち抜いた。
「「ホエーモン!」」
それを見たウォーグレイモンは、メタルシードラモンの身体を貫き、半分海へ沈んだ。
その後、子ども達はホエーモンの近くへいった。
「選ばれし子ども達よ、この世界を頼みましたよ」
「「「ホエーモン!」」」
ホエーモンは小さな粒になり空へと消えた。
メタルシードラモンも小さな粒になり空へと消えた。
「空へと流れてく」
「あの方向は?」
「スパイラルマウンテンの頂上でっせ」
その時、地面が揺れた。
「地震?」
「いや違う、この揺れの原因はあれだ!」
太一が指差した方を子ども達が見ると、スパイラルマウンテンの海の部分が消えていくのが見えた。
子ども達はそれを見ているしかなかった。