その年の夏は地球全体がおかしかった。

　東南アジアでは全く雨が降らず水田が枯れ、中東では大雨による洪水が発生、アメリカでは記録的な冷夏となっていた。

　サマーキャンプにいた9人は何も知らずにいた。

　それが誰も知らない世界での冒険の始まりになる事を……。





　8月1日。

　子ども会のサマーキャンプがある日。

　9人はそれぞれ思い思いの事をしていた。

　だが、そんな中季節外れの吹雪が襲った。

　6年生の城戸丈、5年生の八神太一、武之内空、石田ヤマト、4年生の泉光子郎、太刀川ミミ、3年生の黒岩ナツキ、2年生の黒岩ユキナ、高石タケルが避難したのはキャンプ地から少し離れた祠の中で吹雪が止むのを待っていた。

　この9人が集まったのは偶然か、はたまた必然か……。





　「やっとやんだみたいだな」

　暫くして、太一が扉を開くと、そこは一面の銀世界だった。

　「うわー、雪だ！　すごーい！　ユキナちゃんも行こ！」

　「うん、お姉ちゃん行っていい？」

　「おい、タケル気をつけろ」

　「いいけど気をつけてね。で、光子郎さんどう？」

　ナツキはユキナにそう声をかけると、隣に居る光子郎に声をかける。

　「いえ、駄目ですね。吹雪がやんだら電波届くと思ったのにな……」

　「おい、ナツキ、光子郎もこいよ！」

　「太一さんに呼ばれたし、行こっか光子郎さん」

　「はい」

　ナツキと光子郎が皆の所に行くと空にはオーロラが輝いていた。

　「うわー、きれーい、ロマンチック」

　「あれって……」

　ユキナは空を見上げて言った。

　「オーロラよ」

　ユキナにあれはオーロラだと空が告げる。

　「そんな変ですよ、日本でオーロラなんて」

　「そうなんだよね」

　「これも最近のニュースの怪奇現象の1つかもね」

　各々オーロラを見ていたら空に不思議な事が起こった。

　「おい、あれ！」

　その空から光りが9個、子ども達の方に飛んできた。

　「「「うわっ！/きゃあっ！」」」

　子ども達は身体を屈めてやり過ごす。

　「皆！　怪我はない？」

　「なんとかなー」

　「吃驚したー」

　その飛んできた物は何かの機械だった。

　「い、隕石？」

　「お姉ちゃん、これなに？」

　「さあ？……あ、光子郎さんなら分かる？」

　「え、そうですねー、……ポケベルでも……携帯でもないし……」

　その機械みたいな物は浮かんで子ども達の手の中に収まった。

　その時、突然どこからともなく津波が来て子ども達を飲み込んだ。





　「ナツキー！　ナツキー！」

　「んー？」

　ナツキは誰かに呼ばれて少し重い瞼を開けた。

　すると目の前にはチョコレート色で小さい角が3つ頭にある小さい……。

　「あ、起きた！」

　ぬいぐるみだと思っていたが動いて喋ってるのをみて、ぬいぐるみじゃないと判断したナツキ。

　「誰なの」

　「あたしはチョコモン」

　名前を聞いたナツキは起き上がった。

　「私はナツキよろしくね？　それよりここはどこ？」

　「ここはファイル島だよ」

　「ファイル島？」

　ナツキは聞いた事ない島の名前に首を傾げる。

　「ねえ、私の他に誰か見なかった？」

　「見たよ！　あっちの方！」

　チョコモンが小さい耳で人が居るであろう方を示した。

　「行ってみる」

　「あたしも一緒に行く！」

　「ありがとう！」

　ナツキはそう言いながらチョコモンを抱きしめた。





　「あ、光子郎さん、空さん、太一さん！」

　「あ、ナツキさん！　無事だったんですね？　あ、ナツキさんも？」

　「私もって？」

　「ほら、あれよ」

　空が地面を指差す、そこにはピンク色の3匹の生き物がいた。

　その時少し遠くから声が聞こえた。

　「こっちだよー！　タケルー！」

　「ユキナも早くおいでよー！」

　その声の方を4人が向くと。

　「トコモーン」

　「グミモーン」

　とタケルとユキナそれから後ろにはヤマトが居た。

　「ユキナ！　よかった……」

　「ヤマト！　お前達も」

　「太一、皆居たのか……」

　「お姉ちゃん！」

　ユキナはナツキを見つけて駆け寄った。

　「おお、お前の持ってるそれ……」

　「え？ああ……こいつは……」

　「僕、ツノモンです！」

　ヤマトが抱えているツノモンという生き物は、頬を赤らめて恥ずかしそうに自己紹介をした。

　するとまた「うわー！」っと言う声と共に丈がこちらへ走って来た。

　「皆ー！　助けてくれー！　変なヤツに追われて……」

　「変なヤツじゃないよ！　プカモンだよ」

　そう言いながらデジモン達は1箇所に集まり。

　「「「僕達！　デジタルモンスター‼︎」」」

　声を合わせてそう言うが子ども達は首を傾げる。

　「ボク、コロモン！」

　ピンク色で丸い身体の少し長い耳がある子。

　「ツノモン……です」

　頭にツノが生えている丸い身体のオレンジ色の子。

　「ピョコモンだよ！」

　植物みたいなピンク色の子。

　「ワテ、モチモンでんがな」

　楕円形の手があるピンク色の子。

　「プカモンだよ！　クワッ！」

　小さいイルカみたいなグレー色の子。

　「ぼく、トコモン！」

　四足歩行のピンク色の子。

　「あたしは、チョコモン」

　「ぼく、グミモン！　チョコモンとは双子なんだ！」

　チョコモンによく似た子が緑色で角は1つの子。

　デジモン達はそれぞれ自己紹介をした。

　そして子ども達もそれにのった。

　「おれは八神太一、御台場小学校の5年生だ。おんなじ5年生の空」

　「武之内空よ、よろしくね」

　「やっぱりおんなじ5年生のヤマト」

　「石田ヤマトだ」

　太一は5年生を言い終わる。

　「そっちは丈」

　「城戸丈、6年だ」

　「4年の光子郎」

　「泉光子郎です」

　6年と4年を言い終わる。

　「3年のナツキと妹のユキナ」

　「黒岩ナツキよろしくね」

　「黒岩ユキナ、2年生だよ」

　「えーっと、それから……」

　「タケル！　高石タケル！　ユキナちゃんと同じ小学2年生だよ！」

　一通りの自己紹介が終わる。

　「これで全員だっけ？」

　「待って、確かもう1人」

　空がそう言うと光子郎がこう言った。

　「ミミさんが、太刀川ミミさんが居ません」

　「きゃー！」

　その時遠くから悲鳴が聞こえた。

　子ども達は一斉に声が聞こえた方に向かったらミミが居た。

　その後ろから……。

　「クワガーモンだ！」

　大きなクワガタみたいなのが現れた。

　一度過ぎ去ったが。

　「また、来るぞ」

　「さ、立って」

　空はミミに立つ様いい、子ども達は逃げた。

　暫く走っているとヤマトが伏せる様に言い子ども達は伏せた。

　その上をクワガーモンが飛んでいく。





　「くそー！　あんなやつに、やられてたまるか！」

　「太一無理よ！」

　「そうだ、俺達にはなんの武器もないんだぞ」

　「ここは逃げるしか……」

　「太一さん、逃げる方がいいよ！」

　「くっ……」

　そしてまた子ども達は走りだした。

　だがすぐに行き止まりになった。

　下には川が流れている。

　「こっちはダメだ！　別の道を探すんだ……」

　「べ、別の道って……」

　だがすぐにクワガーモンが追いついてきた。

　クワガーモンの攻撃を避ける為、子ども達はその場に伏せた。

　コロモンが急に飛び出して口から泡みたいなのを出したが、クワガーモンには効かなかった。

　コロモンはクワガーモンにぶつかってしまった。

　「うわー！」

　「コロモン！」

　クワガーモンは子ども達の居る所に来た時にデジモン達が立ち向かった。

　クワガーモンは森の中に突っ込んでいった。

　子ども達はその隙に自分達を守ってくれた彼らの元へ駆け寄り抱き上げる。

　「チョコモン……」

　「グミモン！」

　その時またクワガーモンの声が聞こえた。

　子ども達は崖の先の方に避難した。

　「あいつ、まだ生きてやがった、くそ……このままじゃ……」

　「行かないと！」

　コロモンを始めとしたデジモン達までクワガーモンに立ち向かおうとしていた。

　「チョコモン行っちゃ駄目！」

　「グミモン駄目よ！」

　子ども達の努力もむなしくデジモン達は、子ども達の腕の中から抜け出した。

　「チョコモン！」

　「グミモン！」

　その時、空から光りがデジモン達に降り注いだ。

　「コロモン進化アグモン！」

　「ピョコモン進化ピヨモン！」

　「モチモン進化テントモン！」

　「ツノモン進化ガブモン！」

　「トコモン進化パタモン！」

　「プカモン進化ゴマモン！」

　「タネモン進化パルモン！」

　「チョコモン進化ロップモン！」

　「グミモン進化テリアモン！」

　光りがやむと、デジモン達の姿が変わっていた。

　そして進化したデジモン達は力を合わせクワガーモンを倒した。

　「ナツキ！」

　「ユキナー！」

　デジモン達はそれぞれの子ども達の元へ向かった。

　「あたし凄い⁉︎」

　「うん！　ありがとう！」

　「ぼく、強かったでしょー？」

　「うん、強かった！」

　子ども達は笑いあった。

　だが、またクワガーモンが現れた。

　クワガーモンは子ども達の居る崖の所にハサミを突き刺した。

　そして子ども達達は崖の下へと落ちていく。

　そう、それが9人の子ども達のとても長くて、とても短い夏休みの始まりだった。