デジモンアドベンチャー タケル
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「バカな、紋章もなしに進化出来るとは!」
「選ばれし子ども達を甘く見てもらっちゃ困るな!」
「そう言う事、よし! 行くぞ、皆!」
「「「おー!」」」
太一さんの言葉に私も答え、拳を突き上げる。
私はアスタモンの背中に乗り、アポカリモンの所へと向かっていく。
私達はもう不安な気持ちなどはなかった。
皆と一緒だからきっと大丈夫、そう私は思った。
「死ねえー!」
アポカリモンから爪の様な物が、私達に襲い掛かる。
「ハンマースパーク!」
ズドモンが一つ壊す。
「触手は僕達に任せてくれ!」
「私も手伝う! リリモン!」
「ええ!」
リリモンはミミさんを投げる。
そして攻撃し終わってから、ミミさんをキャッチした。
「この隙に、皆は本体を!」
「分かった!」
その時、アポカリモンの触手が、丈さんとミミさんの背後から襲う。
「丈先輩、ミミちゃん、危ない!」
「ヘブンズゲート!」
「ホーリーアロー!」
ホーリーエンジェモンとエンジェウーモンによって、丈さん達を襲った触手は壊れた。
「僕とヒカリちゃんが2人を守るから!」
「他の触手をお願いします!」
「ありがとう!」
「助かるよ」
丈さん達がヒカリちゃん達に向かってお礼を言った。
「よし、ヤマト! 俺達も行くぜ!」
「おう!」
「突撃だ!」
アポカリモンに真っ直ぐ進んでいく、ウォーグレイモンとメタルガルルモンの左右をガルダモンとアトラーガブテリモンが守り、アスタモンで後ろを守る。
「あたしと光子郎くんとキオナちゃんで、太一とヤマトをアシストするわ!」
『私も2人を守るから!』
「太一さん達は攻撃する事に神経を集中してください!」
「わかった!」
「おのれ!」
アポカリモンが無数の攻撃を、私達へと向け放つ。
「ヘルファイア!」
「シャドーウィング!」
アポカリモンの攻撃を、アスタモンとガルダモンで防ぐ。
「うぐ……ムゲンキャノン!」
「今度はわての番や!ボーンバスター!」
またアポカリモンの攻撃を防ぐ。
「トドメだ!」
「くらえ!」
「コキュートスブレス!」
「ガイアフォース!」
ウォーグレイモンとメタルガルルモンの攻撃が、身体の部分に当たるとその部分が消滅した。
「やったぞ!」
「触手も全部片付けた!」
「どうだ、観念しろ!」
「ふふ、それで勝ったつもりか」
アポカリモンの五角形の集合体の部分が、何故か紫色に光りだす。
「強がっても無駄だ!」
そこから黒い煙がフワフワと出てきた。
「そうかな? 我々は滅びる。しかし、唯では滅びんぞ。貴様らも、この世界も巻き添えにしてくれる!」
「何!?」
「見るがいい、究極の必殺技! グランディスビックバン!」
アポカリモンは真っ白な光りを放って自爆した。
「自爆しやがった」
「僕達、これで終わりか?」
「そんなの嫌!」
『そんなわけない!』
「終わりじゃない」
「終わりなもんですか!」
「終わらせない!」
「終わってたまるか!」
「絶対に!」
「だって」
「私達には…」
「「「明日があるから!」」」
私達の気持ちは一つだった。
私のデジヴァイスから光りが溢れ出て、その光は一本の直線になり、皆の光りと繋がった。
その光りは箱の様な物になり、自爆したアポカリモンを閉じ込めると、闇の奥へと消え去った。
私達はそれを、ポカンと見ていた。
「今の……」
「何だ?」
「爆発は、どうなったの?」
「封じ込めたのでしょう、デジヴァイスの力が働いて……」
と言う事は……!
「じゃあ、俺達勝ったのか!?」
「その様だな」
「て事は世界の滅亡も……?」
「食い止めたって事よね」
「うん」
『やったね!』
私達は笑顔になった。
その時、遠くから私達を呼ぶ声が聞こえてきた。
それはオーガモンの声だった。
「全く、てぇしたもんだぜ、おめえら!」
「あら、そう?」
オーガモンの後ろにはアンドロモンとエレキモンが居た。
「本当ニアリガトウ」
「いやあ、お礼なんかいいですよ」
恥ずかしそうに頭を掻く光子郎さんに、私達は笑い合った。
そこに、メカノリモンに乗ったゲンナイさんと、ケンタルモンとベアモンがやってきた。
「お主達の世界も救われた様じゃな」
「「「はい!」」」
「ねえ、デジモンワールドはどうなるの?」
「足元をよく目を凝らして見てごらん」
「凄いよ!」
ケンタルモンとベアモンに言われた通りに、私達は自分の足元を見つめる。
すると、足元に見たことのある光景が。
「島?」
「ファイル島だ!」
「古代遺跡の予言はこんな言葉で締め括られている。"最初に生き返ったのは島だった。そして島が、新しい空と海と陸を作った"と」
つまり?
「それって、どう言う意味なの?」
「つまり、デジモンワールドは新たなる天地創造を迎えたと言う事さ」
「あ、あれは、何が起きてるんだ?」
太一さんの見ている方に私も顔を向ける。
「この世界と共に、デジモン達も復活しているのかもしれん」
「「「本当!?」」」
「行こう、皆!」
「「「うん!」」」
私達はファイル島に下りて行った。
私達が降りたのは、はじまりの町だった。
「町が元に戻ってらあ」
空からはデジタマが降り注いでいた。
「わあ、デジタマがいっぱーい!」
『わー!』
私とタケルくんとパタモン、インプモン達とで、デジタマがある所まで走って行った。
その後をエレキモンが着いて行く。
「『なでなで、なでなで』」
「何してるの、皆?」
ヒカリちゃんが私達のしている事に問いかける。
「デジタマを孵してるの」
「これ、全部孵すの?」
「そ、このデジタマから沢山のデジモンが生まれる、デジモンワールドの未来は此処から始まるんだ!」
「ヒカリちゃんも一緒にやろう?」
『そうそう、やろう!』
ヒカリちゃんも一緒にデジタマを撫でた。
その時光子郎さんが来た。
「タケルくん、キオナさん、ヒカリさん、写真を撮るらしいですよ! 行きましょう!」
『写真!?』
「いいね、それ!」
「『うん!』」
私達は皆の元へ向かった。
「キオナちゃんはボクの隣だよ!」
「いいえ! キオナちゃんは私の隣よ!」
「「キオナはどっちの隣がいいの⁉︎」」
『えっとー……私が真ん中になって2人が両側に来たらいいんじゃないかな?』
「「キオナちゃんがそう言うなら……」」
最終的にヒカリちゃん、私、タケルくんの順に並んだ。
「さ、いいぜ!」
「ハイ、チーズ!」
「あ……」
「どうしたの?」
ヒカリちゃんの持ってたデジタマが小さく揺れ、デジタマが孵ったのだった。
「生まれたんだ」
「可愛い!」
ヒカリちゃんはデジモンの赤ちゃんをほっぺでスリスリした。
「さてと……」
オーガモンがマントを着て、頭には笠を被っていた。
「何なのその格好……」
「もうここには用はない、旅に出るのさ」
「どうしてなの? 一緒に居ましょうよ!」
「やなこった! 誇り高きウイルス種の俺様が、テメーらワクチンやデータと一緒にいられっか! じゃあ! あばよ!」
そう言うと、オーガモンは森の中へと姿を消した。
「行っちゃった……」
「全く、素直じゃないんだから」
「ウイルス種の奴らって、どうも苦手ですわ」
「なんだって?」
インプモンがテントモンを睨む。
「そう言うでない、何時ぞやアグモンがスカルグレイモンに暗黒進化した時、”間違った進化”と言った事があったが、ありゃお主達の目的から外れるという意味で”間違った”と言っただけで、進化そのものに正しいも誤りもないのじゃ」
「ふーん、じゃあ、次に進化する時はウイルス種になろうかなあ」
「「それだけはやめてよー」」
アグモンの言葉にデジモン達が反対する。
私達はそれを聞いて、笑い合っていた。
次に私達が向かったのは、ガブモンが最初にガルルモンになったあの湖だ。
「懐かしいよねえ、……ここであたし達、この世界に来て最初の夜を過ごしたのよね」
「そうです、ガブモンがガルルモンに進化して、シードラモンと戦ったんでした」
「ま? 色々あったけど、最後はめでたしめでたしでよかったよね? 僕らも胸を張って元の世界へ帰れる! 僕達帰ったら英雄かな? 取材とかいっぱい来たりして……」
笑顔で話す丈さんとは対照的に、私達の気持ちは沈んでいく。
前はあんなに帰りたいって思っていたのに、今は帰りたいなんてこれっぽっちもなくなっていた。
「ねえ、皆はどう思う?」
「丈……」
「あ、いけない、まずい事言ったみたい。いやあ、帰ってもまた戻ってくれば……」
「丈……」
丈さんの言葉にまた私達は沈んでいく。
「いや、戻ってもダメなんだ。この世界と僕達の世界は時間の進み方が違うから、生きて会えるとは限らないんだ……ごめん」
「なあ!」
「なに?」
「夏休みはまだ、大分残ってるよな? 俺さ、夏休みが終わるまでこっちの世界に残ろうかと思うんだ!」
ヤマトさんの言葉に、私達は下を向いていた顔をあげた。
「ああ、それはいい考えかも!」
「お兄ちゃんが残るなら、僕も残る!」
「私も、お兄ちゃんいいでしょ?」
「ああ」
『ヒカリちゃん達が残るなら私も残る!』
皆も残ると言った。
「そうですね、こっちの世界の1日が僕達の1分と考えて……4週間だから……」
「暗算なら僕に任せてくれ! えっと……40321……ざっと110年だ!」
丈さんが計算をしてくれた。
「そんなに?」
「いいぞ、新しい冒険だ!」
「よし、出かけようぜ! 冒険の旅に!」
「「「賛成!」」」
太一さんの言葉に、私達は立ち上がった。
その時、アグモンが何かに気付く。
「あれ?」
「日食ですね……」
「子ども達よ、話しておかねばならん事がある」
ゲンナイさんが来てそう言った。
「話って、いい話? 悪い話?」
「おそらく、悪い話じゃ」
私はその言葉に不安を抱いた。
「ただの日食じゃないんですか?」
「あの影になっている部分、あれが君達の世界に繋がるゲートなんだ。日食は後2時間で終わる」
2時間……。
「なに、次にゲートが開くのを待つだけさ」
「そうよ、夏休みは後110年もあるんだもん」
「実はアポカリモンの出現でデジモンワールドとお主達のいた世界との時間の流れが同じになったのじゃ」
「なんだって!?」
「それでも残ると言ったら!?」
珍しくヤマトさんが食い下がる。
「この世界がお主達のデータを異物として消去するかもしれん」
「じゃあ……」
「残念じゃが……」
私達はその言葉に太陽を見た。
私達はそれぞれデジモン達と話したいと別々に別れた。
私とインプモンは、湖の近くの森の中にいた。
『インプモン、今までありがとう、ティ・ヴォリオ・ベーネ! (大好き!)』
「オレもティ・ヴォリオ・ベーネ!」
私達は抱き合った。
『インプモンにプレゼントがあるのよ!』
「プレゼント? なんだ?」
『それはねー、私とインプモンの似顔絵! 後お兄ちゃんとベアモンのも! 後皆の分も! これはゲンナイさん家に飾ってもらえばいいわ!』
私がリュックから紙を10枚だした。
「ありがとな! 大事にするぜ!」
私達は笑顔になった。
『また必ず、会おうね!』
「おう!」
私達はまた抱きしめあった。
私達は笑顔だった、だってまた会えるって信じているから!
「別れの挨拶は済んだかな? こっちの準備は終わったぞ。さ、この電車に乗ってお主らの世界に帰るといい」
「それが……」
空さんの隣でミミさんが泣いている。
「もうちょっと時間がほしいの、もうちょっとでいいから」
「そりゃあ、無理じゃよ。ゲートは待ってくれんじゃろ」
「でも……」
「どうしたんじゃ?」
「パルモンが居なくなっちゃった……」
「パルモンのバカバカバカー!」
ギリギリまで待ったけど、パルモンは戻って来なかった。
太陽の影はもう直ぐ消え様としていた。
「時間じゃ、電車に乗りなさい」
「ああ……」
私達は路面電車に乗り込んだ。
路面電車の窓を上げ、私達はデジモン達を見た。
「じゃあ、皆、元気でな」
「太一達も」
テイルモンがヒカリちゃんの笛を吹いたのを合図に、路面電車が動きフワリと浮かんだ。
「「「さようならー」」」
『グラッツエー!』
段々とデジモン達が小さくなっていく、その時私達が見たのは…。
「ミミちゃん!」
「うん!」
ミミさんも窓の外を見る。
「ミミ! ミミー!」
「パルモン!」
「ミミ、ごめんなさーい!」
「いいの、いいのパルモン! さよなら、本当にありがとう」
パルモンが転んだその瞬間、風が舞いミミさんのテンガロンハットが空へと飛んで行った。
パルモンは直ぐに立ち上がり、私達を追いかける。
その後ろから他のデジモン達も走って追いかける。
私達9人の夏休みの冒険は終わった。
でもゲートは閉じたままというわけではない、なぜなら選ばれし子ども達の冒険がこれが最初でもなければ終わりでもないから。
デジモンワールドへのゲートはきっとまた開かれる、デジモン達の事を忘れていなければ。
それを望んだ時、心の中に……いや、ひょっとすると……。