私達は太陽が照りつける砂漠を歩いていた。

　私達は照りつける暑さに、体力をジワジワとなくしていく。

　「キオナ水まだあるか？」

　『インプモンごめん、さっき飲んだので終わりみたい』

　「なん、だと……」

　インプモンは目に見えて落ち込んだ。

　「あたしが巨大なトゲモンになって皆に日陰作ってあげたい」

　「パルモン！　あれ！」

　ミミさんが指を差した方を見ると、少し遠くにパルモンが言った様な巨大なサボテンが立っていた。

　『大きいサボテン……』

　私はポアポアした頭でそう言った。

　「巨大なサボテン！」

　「よーし皆、あの巨大なサボテンの日陰に入るんだ！」

　私達は巨大なサボテンに向かい走っていった。

　だが、近くに行くと日陰はなかった、その時その巨大なサボテンは、目の前でユラユラと揺れ消えてしまった。

　「し……蜃気楼だった……」

　『蜃気楼？』

　「幻という意味です」

　『なるほど……』

　「納得してる場合じゃねぇよキオナ」

　私はインプモンに呆れられた。

　そして私達は蜃気楼だった事に、その場に座り込んでしまった。

　その時、私達を呼ぶ声が聞こえ、私達は周りを見渡した。

　すると、ファイル島で見た立体映像機が目の前に現れ、ゲンナイさんの姿が映った。

　「あたし、紋章なんて欲しくない！」

　「落ち着け、選ばれし子ども達。望むと望まなざるとに関わらず、いずれ紋章はお前達の物となる、タグと紋章はお互い惹かれ合う性質を持っておるのじゃ」

　私達はそれを聞いて落胆の声をあげた。

　「アグモンがコロモンに退化した訳を話そう。たとえタグと紋章を手に入れても正しい育て方をしないと……」

　「正しい育て方？」

　「そう、正しい育て方をしないと正しい進化はしない」

　「正しい育て方ってなんだよ？」

　「選ばれし子ども達よ、正しい育て方を考えるのじゃ、それが……」

　突然目の前の映像が乱れ始めたと思ったら、ゲンナイさんは言葉途中で消えてしまった。

　「正しい育て方……」

　「それって、バアルモンが言ってた事じゃありませんか？　パートナーの気持ちのあり方がどう、とか……」

　ゲンナイさんと光子郎さんの言葉にデジモン達はパートナーを見た。

　私はインプモンを見ると平然としていた。

　不思議に思った私は声をかける事にした。

　『インプモンは、不安じゃないの……？』

　「あ？　なんでだ？」

　『だって……、私が正しい育て方しないと……インプモンが……』

　「キオナなら大丈夫だって」

　インプモンはそう言って微笑んだ。

　その時、汽笛の音がした。

　「軍艦だ！」

　「いいえ、豪華客船よ！」

　「え！　どうして砂漠の中に豪華客船が！」

　「あれも蜃気楼？」

　「蜃気楼、じゃ、ない！」

　私達は急いで豪華客船の脇に移動して難を逃れた。

　豪華客船はなぜか止まり、そこから姿を現したのはヌメモンだった。

　「ヌメモン！　船で休ませてくれないか？」

　だがヌメモンは太一さんの言葉に余り乗り気ではなかった。

　「ヌメモンの事ならあたしに任せて！　ヌメモーンあたし達、疲れてるのこの豪華船で少し休ませてー、お、ね、が、い、んふっ」

　ヌメモンはミミさんの魅力に落ち、目をハートにしながら階段を降ろしてくれた。

　私達は豪華客船の中に入って行った。

　中に入ると内装も豪華だった。

　「きゃはっ、一流のホテルみたーい、うふっ」

　中には色々な設備があった。

　私はまず水筒に水をいっぱい入れ、空さん達が待つ部屋へと向かった。

　『インプモンはここで待っててね』

　「キオナなるべく早くな」

　インプモンを脱衣所の前で待たせ私は、空さんとミミさんが居るお風呂場に入った。

　私達が、お風呂を堪能している時、インプモンが脱衣所から声をかけてきた。

　「皆、大変だ！　オレ達を捕まえようとしている奴が居るらしい、ヌメモンから聞いたんだ早くここから出よう！」

　「大変！　ミミちゃん、キオナちゃん、このタオルを巻いて窓から逃げるわよ！」

　「『分かった！』」

　『インプモンも来て！』

　私は空さん達がタオルを巻いたのを見て、インプモンを呼び中に入れ、窓から逃げた。

　私達は濡れたまま廊下を走る。

　だが突然目の前に大きな鳥の見た目のデジモンが現れた。私達は2mほど離れた所で立ち止まった。

　「コカトリモン！」

　「エテモンの仲間？」

　「そうみたい」

　その時コカトリモンは両手を広げ高笑いをした。

　その手には紋章がぶら下がっていた。

　「太一さんと丈先輩の紋章！」

　「選ばれし子ども達5人はつかみゃーて、日干しにしたがや！　暫くしたら選ばれし子ども達の干物が出来るがや」

　『そんな酷い……』

　私達は顔を俯かせた。

　「デジモン達は？」

　「わしの力で石にしたがや、美味しいキムチの漬物石くらいには使えるがや」

　「なんて事を……」

　「お前達も同じ運命だ、コカーッカッカッカッ」

　「許さない」

　ピヨモンはそう言った後、技を仕掛けそれに続いて、他のデジモンも技をだした。

　だが全て塞がれてしまった。

　その時コカトリモンから攻撃が来て私達は逃げ出した。

　私達は必死に走り、船の甲板まで逃げた。

　だがこれ以上は逃げられない。

　「追い詰めたがや！」

　「ピヨモン進化よ！」

　ピヨモンはバードラモンに進化した。

　「と、飛んだぎゃー！」

　バードラモンの攻撃をジャンプで躱すコカトリモン。

　「コカトリモンてば飛べないみたい」

　『インプモン！』

　「任せろ！」

　「パルモンチャンスよ！」

　「うん！」

　インプモン達も進化し攻撃する。

　トゲモンとバアルモンの攻撃のおかげで、コカトリモンを倒す事が出来た。

　「「『やったー』」」

　私達は微笑みながら顔を見合わせた。





　「ヌメモン達が、慌てて逃げていくぞ！」

　「この船は危険ですね」

　「あたし達も早く脱出しましょう！」

　「そうだな」

　私達はまた広い砂漠の中を歩いていた。

　その時、後ろから汽笛の音がした。

　その音に私達は振り向くと、さっきまで乗っていた豪華客船が走って来ていた。

　私達はそれから逃げる為必死に走った。

　「コカトリモンが蘇ったのか？」

　「そんな馬鹿な！」

　その時私達の前に巨大なサボテンが見えた。

　「巨大サボテン？」

　「また蜃気楼？」

　「いや、影がある！」

　私達はサボテンの裏にまわった。

　豪華客船は巨大サボテンに当たり弾かれて、空へと飛んで爆発した。

　「蜃気楼じゃなかった」

　「わあ、本物の巨大サボテンだ」

　私達が巨大サボテンを見上げると、その天辺から花が咲き、そこの中から石版が出て来てミミさんのタグの中に入った。

　「これがゲンナイさんの言ってた、タグと紋章が惹かれ合うって事なのね」

　「欲しくなかったのに、あたしパルモンを正しく育てられるかしら」