デジモンアドベンチャー タケル
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そこはどこか分からない、光の差さない真っ暗な場所。
そこには一体のデジモンが倒れていた。
赤い手袋をして、水色のスカーフをした、小さなデジモンの身体は傷だらけだった。
「フン……愚かな。貴様の様な小物に何が出来る」
そんな空間に響く冷たい声。
「るっ、せぇ……っ」
「貴様と奴等では存在の価値が違う。奴らだけは特別。選ばれし者。貴様は必要とされぬ異端の存在」
「……」
「だが、私の元に居れば貴様の力を活かす事が出来る。貴様とて力は欲しかろう?」
そう言って彼の元へ飛んでいく黒い影。
それから逃れようとしても、傷ついた身体は言う事をきかなかった。
「う、ぁぁぁあああああ‼︎」
「精々働け……我が道具として」
私達は今、寒い森の中を歩いていた。
「寒いよぉ」
「しおれそー」
「約2匹やけに元気だよな」
「まぁ、でも寒いのも悪かないよな」
えー、私は嫌だー。
「そんな……勘弁してください」
「だって、雪が降ったら雪合戦できるぜ」
「「「雪合戦!」」」
雪合戦より雪ダルマ作りたいなー。
「何?その雪合戦って」
「なんやそれ? 食べもんかいな」
「違いますよ、雪合戦と言うのは、雪玉をぶつけ合う遊びの一種ですよ」
「なんや……」
テントモンはお腹が空いてるのかな?
「久しぶりに勝負出来るな」
「負けないぜ」
私達は思い思いに雪が降ったらどうするか言い合った。
その後少ししたら、雪が一面積もっていた。
「ほら見ろ、僕の心配した通りだ」
「これからどうするの?」
「とりあえず先へ進む、ここでボケっとしててもしょうがないだろ」
私はその後走り出し雪を触りだした。
『雪だー! 雪ダルマつーくろっと!』
「温泉だぁ!」
私が雪ダルマを作ろうとした時、丈さんが温泉と言った。
「「「温泉!」」」
私達は一目さに湯気が出ている所に向かった。
「って……これ沸騰してるぜ」
「これに浸かるんかいな?」
「まさか……」
「のん気な事言ってる場合か? 食料はどうするんだよ! ここには食料なんて……」
確かに見当たらない……。
「あるよ……」
「何言ってんだよ、こんなゴツゴツした、岩だらけの所に……」
「ほらぁ」
タケルくんの指差す方に目を向けると、冷蔵庫があった。
「何でこんな所に冷蔵庫が?」
冷蔵庫の中には卵が大量に入っていた。
「今日の夕食はこれで決まりだな!」
「ちょ……ちょっと待てよ、食べられるかどうか分からないじゃないか」
『クンクン、変な匂いはしないから安全、かも?』
「大丈夫だよ、毒見だったら俺がやるからさ」
「何言ってんだよぉ、食べられるにしても、人の物を勝手に食べるなんて、泥棒と変わりないじゃないか」
でも、私達お腹空いてるし……。
「仕方ないだろ腹減ってるんだから」
「事情を話せば分かってくれるわよ」
「なにしろ非常事態ですからね」
「夕食はこれで決まりや!」
私達は手分けして夕食の準備を始めた。
『空さんこんな感じ?』
「うんうん、うまいじゃないキオナちゃん」
『えへへ』
大きくて平らな岩を鉄板代わりにして、私と空さんは目玉焼きを焼いていく。
ピヨモンは火に風を送っている。
暫く作っていると準備が出来た。
「「「いっただきまーす」」」
私達は大きくて平らな岩をテーブルにしてご飯を食べ始めた。
「うん、うまい! こんなまともな飯って久しぶりだよ」
「これで白いご飯でもあれば、言うことなしだな」
「ホカホカご飯に、ゆで卵」
白いご飯かー、それより私はパンがいいなー!
「うん、いいわね」
「なんだ丈、食べないのか?」
「うちに帰れば、こんな苦労しなくていいんだなぁと思ってさ」
私達は丈さんの言葉に俯いた。
そんな時、空さんの声が聞こえた。
「ねえ皆、目玉焼きには何かけて食べる?」
「目玉焼きには塩、胡椒って決まってるじゃないかぁ」
「俺、醤油」
あ、私も!
『私も醤油』
「マヨネーズ」
「あたしはソース」
「僕はポン酢を少々」
光子郎さんの言葉に私達は苦笑いした。
「ええー皆変よぉ! やっぱり目玉焼きって言えばお砂糖よね! 私その上に納豆乗っけたのも大好き」
「それ変過ぎだよぉ……」
「えー、皆は目玉焼きにそんな変なものかけるのか? ショックだ日本文化の崩壊だぁ!」
「何訳の分からない事言ってんだよ」
「そこまで悩むか? 普通、まっ納豆は悩むかもしれないけどな」
丈さんったらもー。
「だって目玉焼きには、塩、胡椒だもの。ソースでもマヨネーズでもなく、塩と胡椒!」
「やれやれ、丈は融通がきかないなぁ」
「なんだとぉ!」
「だってそうだろ? どうでもいい事で悩むし」
「僕のどこが融通がきかないんだよ!」
それから丈さんとゴマモンの言い争いが始まった。
「お……おい、丈落ち着けよ!」
「うるさい! 僕は落ち着いてるよ何時だってね!」
「今日はどうかしてるぞ、疲れてるんじゃ……」
「疲れてなんかないよ! どうかしてるのは、皆の方だ!」
丈さんはそれから私達の側から離れていった。
「何度も同じこと言わせるなよな!」
「ダメだ、危険すぎる!」
「考えてたってしょうがないだろ!」
今度は太一さんとヤマトさんが口論し始めた。
「俺は”少しは考えろ”って言ってんだよ」
「じゃあ、何か?俺は何も……」
「おいどうしたんだよ、何もめてんだ?あの2人」
その時、丈さんが帰ってきた。
「ムゲンマウンテンに、行くか行かないかでもめてるんです」
「ムゲン……マウンテン?」
「あの大きな山の事や」
「太一は”あそこに行けば全体が見渡せる”って」
丈さんはそのムゲンマウンテンを見上げた。
「確かにあのくらい高い山なら、全体を見渡せる」
「でも、ヤマトは”危険だから”って、反対してるのよ」
「あの山には凶暴なデジモンが沢山いるのよ」
「ふうん、なるほど、それは危険だ」
丈さん達が話をしている間も、まだ太一さん達は口論していた。
「なんだよ、そんな逃げ腰じゃ埒が明かないだろ!」
「お前の無鉄砲に付き合って、皆を危険に晒すつもりかよ!」
「なんだと!」
「待ってくれよ、2人とも、まずは落ち着いて話合おう、喧嘩しないでさ」
そこで丈さんが2人の口論に割って入った。
だがそれも意味を成さず、丈さんまで口論し始めた。
「ストップ! 3人ともいい加減にしてよ!」
空さんが止めてくれたおかげで口論は止まった。
「今日のところはもう遅いし」
「そうそう寝る時間だよ」
「続きはまた明日にしようよ」
「他の皆も心配そうだし、ねっ、ほら行きましょう」
空さんは太一さんとヤマトさんを連れて行った。
その後を私達は着いて行って洞窟の中で眠った。
翌朝私達を起こしたのは空さんの大きな声だった。
「大変! 皆起きて!」
『どうしたの、空さん……』
「丈先輩が居ないの! きっとムゲンマウンテンに向かったのよ!」
「なんだって!」
「俺と空が先に行くから、ヤマト達は後から来てくれ」
「分かった!」
ピヨモンがバードラモンに進化し太一さん達はムゲンマウンテンに飛んで行った。
「僕達も急ぎましょう」
『うん! タケルくん行こう!』
「うん!」
私達もムゲンマウンテンへと急いだ。