未来編
名前登録
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ソラの妊娠が分かってからのヤマト家は凄かった。
2階にあった寝室は、「ソラが階段を踏み外したら大変だ!」
と急遽1階に移動され・・・
キッチンで、頭上に収納された調理器具を台に乗って取ろうと手を伸ばせば
「落ちたら大変じゃないか!」と注意され・・・
歩いて行ける距離の買い物も「人にぶつかったり、躓いたりしたら大変だ」
とわざわざ車を出してくれたり・・・
「キラってば、毎日やってた当たり前な事もやらせてくれないの!!」
”バンッ”とテーブルを強く叩きつける勢いで、
そう強く主張するのは現在妊娠5ヶ月のソラだった。
少しずつポッコリと出はじめたお腹に構う事なく今、
ここで妊婦になってからの不満をぶちまけているのだ。
「まぁまぁ落ち着いて下さいな、お腹の子がビックリしてしまいますわ。ね」
「・・・うん、ごめん」
「だいぶお腹も出てきましたし、今まで当たり前にしてきた事も、今は大変なのではありませんか?」
「そうだけど・・・でも、、、」
「それに、実際、キラの助けが必要なのでしょう?」
「・・・・・・うん。」
確かにラクスの言う通り、今まで当たり前にやってきた事が、
お腹が大きくなるにつれて身体に負担がかかり
困難になってきている。
そしてこれもラクスの言うとおり、
単なる自己嫌悪と八つ当たりだ。
「ソラは、キラに心配されるのは、お嫌ですか?」
「ううん、私の事、ちゃんと考えてくれてるんだな~って、寧ろ嬉しいよ?」
つわりが酷くてキッチンに立てない時も、
キラは仕事帰りで疲れてるはずなのに、そんな素振りは見せずに
当たり前のように、絶対にソラの体調を優先してくれるし、
それに腰痛でツライ時も嫌な顔ひとつせずに、
心配そうな顔で、優しく腰をさすってくれる。
そんな素敵な人、嫌だなんていったらバチがあたっちゃう。
そう言うとラクスはソラに優しく微笑みかけた。
「以前、キラに相談された事がありますの」
「相談・・・?」
ソラの問いにラクスは「はい」と笑顔で返し
言葉を続けた。
「ソラが元気な赤ちゃんを産める為に
自分はソラに何をしてあげられる?と」
『不安定な時期に感じるストレスは母子共に悪影響で、
下手をすれば流産。最悪の場合は両方失う事もある』
ソラの担当医から聞かされた言葉。
それがキラの頭からずっと離れずにいた言葉。
押し寄せる不安や恐怖に
キラはソラと仲の良いラクスに相談していたのだ。
ラクスの言葉を聞いたソラは、少し前のキラを思い出した。
つわりや貧血があるごとに過剰に反応するキラ・・・
本当に心配してくれて、大丈夫だって言っても
最終的にはベッドに連れて行かれる事もしばしば・・・
「ソラがお腹の子を護るように、キラもソラとお腹の子、お二人を護る為に必死なのですわ」
「必死になりすぎて、キラが倒れないか心配だけどね;」
ソラは苦笑しながらも、キラを思い出し、どこか温かいものを感じた。
陽が西へ傾いた頃、
仕事を終えたキラが迎えに来てくれるらしく
歩きたいって言ったら歩いて迎えに来てくれた。
急いで来てくれたのか、スーツ姿で、
そんな姿に思わずソラは、にへらと笑って
夕焼けを背に二人は仲良く手を繋いでゆっくり歩いた・・・
「ねぇ、キラ」
「ん、何?」
「元気な子、頑張って産むから、護ってね」
それを聞いたキラは夕日に負けないくらい、
顔を真っ赤に染めながら口元を押さえてた。
「ソラ」
「ん?」
「頼りない僕を選んでくれて、ありがとう」
(05.12.09)