未来編
名前登録
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はぁー・・・また…」
ソラは数枚の写真を手に
玄関先で大きな溜息をついた
【さよなら三角 またきて四角】
最近不定期で郵便物に紛れている
差出人不明の封筒。
その中に入っているのは、決まって数枚の写真。
被写体は自分の夫、キラのもの。
何の目的で撮影されたものか、
それは恐らく夫婦の関係を破綻させたいと考える者であろう。
写っている写真は決して愉快なものではない。
毎回女性と親密になっているような構図の写真。
「はぁ・・・また、」
ちゃんと考えれば分かる写真だ。
ただ、
タチの悪い嫌がらせは日に日にエスカレートしていく。
はじめは誰が見ても分かるだろう
バランスを崩した所をキラが支えているであろう写真。
そこから始まり
近距離で笑いあう写真
手を握っている写真
見つめ合っている写真
親密そうに寄り添っている写真
そして今回は
女性の頬に手を添えてキスをしている写真…
実際には女性の頬に手を添えながら屈んでいるキラの姿。
恐らくは何らかの理由で顔を覗いているだけであろうが、
いつもみたいに笑って見過ごせない…
(―――疑っちゃ駄目・・・キラは絶対に、裏切らない・・・)
心では分かっている。
ハルが居て、お腹にももう一人居る。
つい先日判明して、二人で喜んだ。
心配性で毎日絶対に通信も欠かさない。
いつも変わらず妻を優先して愛してくれる夫。
それが全てだと…
しかし、現在妊娠中にて自分の感情が上手くコントロールできず、
日に日にエスカレートしていく写真を前に
次はどんな写真が送られてくるのか分からない不安。
キス以上のものが送られてきたらどうしようという恐怖。
ソラは本当にキラを信じていいのか、その判断もできなくなってきていた。
「信じて…いいんだよね…?キラ・・・」
きゅうっと痛む、まだ膨らみもないその下腹に手を添えて
ソラは眉間に皺をよせ、必死に涙を堪えた
その時、
「!?」
ピー…ピー…と機械音がキラからの通信を知らせる。
早く出なければ異常に気付かれてしまう。
素早く鏡の前で笑顔をつくったソラは
キラの待つ通信機まで急いだ。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「ううん。気にしなくて・・・」
最後まで言い切る事なくキラの言葉は止まった。
ソラの表情を見て感じる。
いつもと違う違和感。
張り付いたような笑顔。
「ソラ・・・大丈夫?」
「うん?大丈夫、だよ」
その違和感は確信に変わった。
(なんで、顔が強張ってる?…どうして?)
「ねぇ、ほんとに?顔色も悪いし、
なんか、すっごい…無理してない・・・?!」
「っ?!」
――キラに見抜かれた。
どうにかして切り抜けなくちゃ駄目なのに…
どう返したらいいのか分からない
どんな顔をすればいいのか分からない
何で、こんな事になってるの?
「!!ソラっ・・・?!」
突如画面の向こうでキラが
ガタリと大きな音を立てて立ち上がった。
それもそのはず。
ポタリと自分の手に落ちた水・・・
「あれ、私…おかしいな、あははっ」
自分が泣いている事に気がついた。
一生懸命拭いても拭いても止まらない…
(あぁ、、、もう、駄目だ。感情がぐちゃぐちゃで…)
「――ごめん」
画面の向こうで戸惑ってるキラをそのままに
ソラは一方的に通信を切った。
顔を見たら安心できると思ったのに
昔の自分の傷が、汚い感情があふれ出す。
そのままソラは立てずに床に崩れ落ちた。
「も、やだっ・・・・」
しっかりしなければと思えば思うほど、
拭いても拭いてもぽろぽろと溢れ落ちる涙。
と、その時
外からキキーーーーっとエンジン音が聞こえ
バンっ!!!!と勢いよく扉が開いたかと思えば
「ソラッ!!!!!」
白服のまま汗だくのキラが
床に座り込むソラの姿を見つけると
勢いよく抱きしめた。
「キ、ラ・・・」
最初こそ戸惑いはしたものの、
目の前で自分を抱きしめる夫。
ずっと会いたかった夫
ずっと抱きしめてほしかったキラの背中にぎゅっと手を伸ばした。
安心する・・・
不安が溶かされていく・・・
暫く無言のまま抱きしめ合った。
___________
「キラ…ごめんね、迷惑かけて…」
少し落ち着いた様子のソラがキラの胸に顔を埋めたまま呟く。
「ううん。実はついさっきプラントに戻ってきてたんだ。
だから、真っ先にソラに会えて嬉しいよ」
自分の胸に顔を埋めるソラに子供をあやすように背中をポンポンと叩く
「最初はね、ただの嫌がらせって笑って過ごせたんだ…」
「・・・嫌がらせ・・・?」
「うん。ポストにね写真が入ってて…」
そう言いながらポケットから取り出された数枚の写真。
「な、んだよ・・これ、」
「段々とエスカレートしていくの、」
最後に、本日届いた写真を渡される
「ちゃんと分かってるはずなのに、訳分かんなくなっちゃって…
でも、もうこれ以上はっ…無理っ…!」
再び自分の胸の中で泣きだしたソラをぎゅっと抱きしめ、
キラは怒りでくしゃっと写真を握り潰した。
「不安にさせてごめんね…
でも僕は絶対に君を裏切らないから、それだけは信じて欲しい。
君を裏切るくらいなら、死んだ方がマシだ」
「――っうん」
キラはそのままソラのつむじ、こめかみ、両頬、と順にキスを落とす
「ソラ、顔上げて?」
「ん・・・」
最後に両頬に手を添えて、
啄ばむように口付けた。
ようやく不安や恐怖が溶け切った…
そう安心して力を抜いたソラだったが・・・
突如感じる腹部の違和感
「っ、キラ・・・!ごめっ」
「え、ちょっ!!」
「お腹いたいっ・・・」
「ソラ!!!!」
突然眉間に皺をよせ、力なく倒れ込んできたソラは、
そのまま意識を手放した。
_______________
「あ、目が覚めた?おはよう」
「キ、ラ・・・?」
目が覚めると白い天井
薬品のニオイ
管に繋がれた自分の腕
自分の手を握りしめる暖かな…
「!!?」
完全に意識の覚醒したソラは
直近の記憶が”鈍い腹痛”であった事を思い出し、飛び起きようとした
が・・・
「ストップ!!大丈夫だから!大丈夫だから、ね。
ちゃんと此処にいるから、安心して?
ハルもシンが幼稚園まで迎えに行って、そのまま預かってくれてる」
キラに肩を押さえられ、そのままゆっくり寝かされる。
もう片方の掌は、しっかり自分の腹部を撫でてくれる…
すると
「あら、目が覚めましたのね」
懐かしい、大好きな声が聞こえてきた。
久しぶりに見たピンク色のお姫様、
綺麗な花を花瓶に生け、傍へと置いてくれた。
「医師の方が、切迫流産と貧血で【絶対安静】と言っておられましたわ」
悲しそうにソラの手を握り
「キラをなかなか帰せず、結果、このような事態になってしまい申し訳ありません…」
まるで自分事のように心を痛めてくれるラクス
「謝らないでラクス、ちゃんと、分かってるから」
「ソラ…ありがとうございます」
「ところでさ、話ぶった切って悪いんだけど」
「?」
「この子が無事に生まれるまで、オーブに戻ろっか」
「ええ??」
実はずっと考えていたのだと伝えるキラ。
プラントはオーブと違い知り合いが少ない。
キラ以外のシンやルナやメイリン
イザークやディアッカは皆そろって軍人だ。
全員が宇宙にいればもちろん、
今回のように何かあった時に駆け付けられない。
本当は傍に居て欲しいが、命には代えられない
「それに僕、暫く前線から外してもらったから♪」
そこは圧倒的お姫様の権力によるものだが。
オーブにはかつてのAAの仲間たち
キラがあの手この手で振り回しているアスランとカガリ
そして自分を本当の娘として接してくれるカリダ
皆がいるオーブ
「だから、あっちの家に暫く戻ろう」
ソラは笑顔で首を縦に振った。
(だから、まずは移動できるくらい元気になってね)
(キラが居てくれたら、大丈夫)
(18.06.20)
_______________________
(ラクス、写真の件なんだけど)
(ご安心くださいませキラ、社会的抹殺を約束いたしますわ)
30/30ページ