未来編
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5月18日
キラの誕生日でもあり
二人の結婚記念日でもある日。
普段なかなか帰る事のないキラも、その日だけは何が何でも帰ってくる。
おそらく前者が理由ならば、今頃、遠く離れた宇宙に居るであろうキラが、
今、家族の待つ家に居るのは、間違いなく後者が理由だから。
それくらい二人にとって、大切な日なのだ。
それなのに
なのに…
(私…最低だっ)
隣で無防備にすやすやと眠るキラを起こさないよう、
彼の隣で上半身だけ起こしている状態のソラは、
起きてひたすら自分を責めていた…。
なんとなく、なんとなく。
確信は無かったが、前日から熱っぽさがあったような…。
曖昧な感じで気にせずに、久しぶりに帰宅したキラとの
二人の時間を優先した結果がコレ。
熱っぽさと身体の倦怠感。
喉の痛みがないのがせめてもの救いという感じだが、
間違いなくそれは風邪の症状。
「何でこんな日に…うぅ…」
とにかく日が悪いのだ。
これが平日ならば、ハルと二人でゆっくり過ごすか、
余裕があれば病院にも行ったりできる。
だけど今日は結婚記念日であり、キラの誕生日でもあり、
ハルの希望で家族3人で動物園行くという日でもあるのだ。
「んー…ソラ…?」
「!?」
頭の中で後悔が渦巻いていると、
隣で目を覚ましたキラがソラを視界に捕らえ、
やはりというか、さすがというか、
ソラのいつもと違う様子に気付き、不思議そうな顔をする。
というよりも、キラからしてみれば、起きてすぐに
今にも泣きそうなソラの姿を見て心配しない方がおかしい。
「…大丈夫?」
上半身を起こし、自分の膝に腕を乗せ、
そこに顔を埋めているソラに、
キラはそっと手を伸ばし彼女の髪を撫でる。
こう、何というか、よく病気になると、人肌恋しくなるとか、
そんな気持ちが今ならばよく分かる。と、ソラは思う。
キラにそっと髪を撫でられているだけで、抱きしめたくなるのだ。
今まで頭の中でグルグル渦巻いていたものも、どうでも良くなる。
そうさせる彼は、本当に不思議な存在だ。
素直にキラのその腕に甘えてみよう。
そう思い、そのまま横になっているキラの腕に頭を乗せた。
それに、ふと気付いたのはキラ。
自分の肩口に頭を乗せているソラの体温がじわりと伝わってくるのだが…
「あれ…もしかして、ソラ、熱ある?」
その彼女の体温が少し熱い気がしないでもない・・・。
「んー…と、、、」
ソラは返答に迷う。
誤魔化し通すか、素直に白状するか。
返答次第でキラの過保護が降臨するからだ。
「ちょっとだけ、熱っぽいくらいだから、大丈夫。うん。」
わずかの時間でソラの選んだのは後者だった。
「ホントに?しんどくない?今日は休む?」
「大丈夫。ホントちょっと熱っぽいだけだから」
そして予想通りのキラの心配振りに、
ソラは不謹慎にも微笑ましく思う。
「でも…」
「それにね、ハル、今日の事ずっと楽しみにしてたから…」
「ハルが…そっか、、」
そして、キラもキラで、いくら大切な日だからといって、
無理をするのは良くない。そう思っていたものの、
普段、遊んであげられず、寂しい思いばかりさせてしまっている
ハルの名前を出されてしまうと、何も言えなくなる。
「あ、でも、ちゃんと病院連れて行くからねっ!」
急にがばりと起き上がったと思えば、
ソラに念を押す一言。
思わずソラも笑いが零れる。
「ふふっ、はいはい。」
やはりソラ中心なのは変わらずだ。
___________
「おとーさんおとーさん!僕も!あれっ!」
「ん?どれ?」
「あれあれ!あそこの!」
動物園の動物たちに大興奮のハル。
人ごみに迷子にならないように、
父の手をぎゅっと握りながらあちらこちらにフラフラと。
そんなハルが何かを見て、
何処かを指差し、何かを要求している。
キラはそのハルの指さす方向を目で追うと、
視線の先に見つけたのは一組の親子。
父親の肩に跨り、楽しそうにはしゃぐ子供の姿。
(もしかして、肩車?)
昔、自分もその姿に憧れ、そして好きだった肩車。
それを思い出すと、今のハルの気持ちがよく分かる。
「ハル、おいでっ」
キラはハルのひょい身体を持ち上げると、そのまま自分の肩の上に。
それに興奮したハルは満面の笑みを母に向けるのだ。
「おかーさんより僕、大きいよ!」
「ふふっ、いいなぁー。お母さんも乗せて?」
「えへへ~、ダメだよー。ここ僕の場所なの」
キラに跨り、両足をぷらぷらと嬉しそうに揺らし、
他の動物に目をキラキラと興味津津なハルに、
キラもソラも嬉しくなる。
「来てよかったね、キラ!」
「うん。」
普段からよく遊びに来て、ハルの相手をしてくれるシンも、
よくハルに肩車をしているのを見かけるが、
やはり父親にしてもらうのとは違うのか、表情がまるで違う。
(キラ、こんな誇らしげなハルの表情、見れないなんて残念だなぁ)
いつも「父親らしい事なんて何も」とか
「父親と思われていないかもしれない」なんて気にしていたキラ。
だけど、ハルはキラを必要としていて、そして、
たった一人のかけがえのない父親なのだ。
それを初めて実感したキラにとって、
ただの肩ぐるまでも、他とは意味が違うのだ。
「もうキラってば、こんな所で泣いちゃだめだからね!」
「あはは、頑張るよ。」
思わず泣きそうになるのを頑張って堪えるキラ。
それを見て、ソラも泣きそうになったのは、秘密の話。
「おとーさん!次らいよん行くのー!」
「んー?あぁ、ライオンね。」
______________
「ハル、爆睡してるね」
「うん。いっぱいはしゃいだからね。お父さん」
帰りの車で、後部座席で疲れて眠るハルの姿をバックミラー越しに、
キラは今日一日の事を思い出し、それだけで胸がいっぱいになる。
「何かさ、初めて父親って事、実感できたかも」
「それはキラの思い込みだってば。」
「んー。そうだったら、いいな」
「あ、信じてないでしょー!ホントなのに」
「えっ?!いや、そういう訳じゃ…」
少しムスっとするソラに慌てるキラ。
そんな中、ソラは運転しているキラに一つの疑問が。。。
「ところでさ、キラ」
「ん、なに?」
運転するキラの横顔をチラリ。
「どこか寄り道?」
行きのルートと全く違う道に車を走らせるキラ。
ちょうど信号が赤になり、ブレーキをかけたキラはソラにニッコリ。
「うん。まさか忘れてないよねソラさん?」
「へ?何か約束し、た…?」
「ちゃんと病院連れて行くからね!」
「あー…なんか、あれ、病院行くとかってやつ?」
「正解♪」
何となく、そんな約束をしたような。。。
そんな記憶の片隅にあるものを試しに言ってみれば、
嬉しそうに答えるキラ。
「もう大丈夫なのにぃ~…キラってば、過保護すぎ!」
「はいはい、着きました。」
昔から変わらないキラの過保護っぷりにはソラもお手上げ状態。
結局このままソラは、キラの言うままに
病院へと連れて行かれたのであった。
(ご懐妊されてますね!)
(え、今、なんて?)
(ご、かいにん…?)
(はい。奥様、妊娠されてますよ)
((ええぇぇぇえ?!))
(09.05.18)