未来編
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いつもよりも特別な今日。
キラにとって特別な日で、
私にとっても特別な日。
5月18日
キラの誕生日
そして
私達の結婚記念日
凄く凄く大切な日。
_____________
「え、新婚旅行?」
朝、キラの突然の発言に
ソラのフォークに突き刺さったウインナーは、ポロリと皿へと転がった。
「うん、一泊だけしかできないし、今更だけど、二人でゆっくり」
キラはそれを気にする事なく、皿に落ちたウインナーを自分のフォークに突き刺して、
それをソラの口まで運んだ。
ソラは、目の前に差し出されたウインナーを三分の一程かじると、
キラは自分のフォークに刺さった残りのウインナーを、そのまま自分の口へと放り込んだ。
「でも、ハルは…?」
やはり我が子第一のソラが気にするのはハルの事。それは重々予測していたが、
"今はハルが居るから…"
そうやって断ろうとしていた自分と重なって、キラはやはり考える事は同じなんだ、と、
当たり前な事だけど、何処か嬉しさを感じた。
「実はこの間、仕事でオーブに行く事があってさ、帰りに母さん達の所へ寄ったんだ」
「へぇ~。皆、元気にしてた?」
「うん。相変わらず子供達なんて、ずっとソラとハルに会いたいって駄々こねられて大変だったんだ」
「ふふっ…そうなんだ。」
そうやって懐かしむ顔をしてオーブの話をするキラは、
現在はザフトの指揮官クラスに所属する正規の軍人だ。
ずっと張り詰めた空気の中で、オーブに行った事は、少なからずキラにとって、
つかの間の休息になったのかな…と、ソラはキラの話を聞きながら顔を綻ばせた。
「その時に母さんがさ、結婚記念日に二人で旅行でもどうかって。…で、そのかわりハルを一日オーブで面倒みさせて欲しいんだって。」
「ハルを?迷惑にならないかな…」
「うん。僕も最初そう言ったんだけど、子供達も会いたがってるし、母さんもハルに自分の顔、忘れられたくないってさ。」
逆に孫の顔も見せない親不孝者に育てた覚えはないわ、って説教されたくらいだよ…と
思い出して苦笑しているキラに、ソラも何だか申し訳も立たなくなってきた。
「素直に甘えちゃっても、いいのかなぁ…」
サクっとサラダにフォークを突き刺しながら、ソラは先に朝食を済ませ、
スケッチブックに何だかよく分からない絵を描いて遊んでいるハルの姿を遠目に見た…
「後で母さんに連絡入れないと」
キラはスープカップに口付けながら小さく呟いた…。
「ずっとハルと一緒に居たからなのかな…」
「ん?」
ハルを孤児院に預けた後、
キラが予約しておいたホテルへと車を走らせる中、
隣でポツリと呟いたのはソラの方だった。
「何かね、キラと二人きりになるのが久しぶりすぎてね、緊張してるかも」
運転中のキラの横顔をチラリと覗けば、その表情は
くすりと微笑んでいるのが分かった。
「それってさ、『ドキドキ』って?」
「ふふっ、…そうそう、キラに恋しちゃってるのかな」
チラリと助手席に目を向ければ、
そこには少しだけ頬を染めて恥ずかしがるソラの姿。
(あー…何か僕の中の悪戯心が…)
だけどそれはソラが悪いんだ。と、そう思い込んでおこう。
そう決心したキラは思い立ったら即行動。
「……僕達ってホント、気が合うね。」
「ちょ、っん……//」
赤信号で車が停止したのをいい事に、キラはくっと身を乗り出すと、
助手席に座るソラの唇にちゅっと自分の唇を重ねた。
「気だけじゃなくて、身体の相性もいいみたいだけどね♪」
「――――っ/////」
耳元で甘い声で囁かれ、
真っ赤に顔を染めるソラなどお構いなし。
にこっと助手席に座るソラに微笑むと、
キラはアクセルを踏んで再び車を走らせる…。
「そういえばソラ、昨夜はよく眠れた?」
運転中のキラに迂闊に手は出せないソラ。
それに気付きながらソラをからかい始めるキラ。
ほとんどキラの言い逃げ状態だ…。
「ぜ~んぜん!眠れなかったからホテルに着いたら爆睡してやるんだから!」
悔し紛れのソラの言葉なんて何のその。
「残念。今夜は寝かせないから、覚悟しておいてね」
相変わらず口喧嘩ではキラに勝てないソラなのだった…。
_________
2時間近く車を走らせて到着したのは、見上げる程に高く、
一般庶民には無縁の、カガリのような有名人が利用するような超が付くほどの高級ホテル。
しかも宛がわれた部屋は高級感溢れる最上級の部屋。
「私、とんでもない人と結婚したのかな…」
確かに2度の戦争を経験して、キラは常に出世の道ばかり。
少し前まではオーブで准将の地位にいただけに収入も桁違い。
孤児院の身の回りを援助しても全く動じず…
現在もザフトに入隊したかと思えばいきなり白服の指揮官クラス。
素直に驚きを隠せないソラに気付いたキラは、クスリと苦笑しながら口を開いた。
「前に言ったでしょ?仕事でオーブに来る事があったって」
「あ…うん」
「その時に用意されたのがさ、ここのホテルだったんだ」
「さすがラクス…」
それをすんなり言うキラもキラだが、
そのホテルを選んだラクスもラクスだ…
ザフトの資金を一体何処へ流しているんだと疑いたくもなってしまう…
「その時に夜景が綺麗でさ、いつかソラと来たいなって思ってたんだけど」
ハルも居るし無理かなって思ってたけど、すんなり来れてよかったよ。
なんていつもの表情で言うキラに、離れいても、いつも自分達の事を考えてくれているんだと
ソラは嬉しさを感じずにはいられなかった。
「ありがとう、キラ」
少しハニカミながらキラに感謝を伝えるソラの姿に
キラは車の中でソラが言っていた『ドキドキ』を思い出した。
(ソラがあんな事言うから…//)
特に気にする素振りを見せずにただ微笑みだけを返したキラだったが、
実は内心はAAに居た時のような胸の高鳴りを必死に隠していたのだった。
少し赤く染まった頬は、真っ赤な夕日が隠してくれていると信じながら…。
「ねえキラ、願い事とかって…ある?」
夕食を済ませて部屋でゆっくり寛いで居ると
何を思ったのか、願い事の話を持ってきたソラ。
「え?あぁー…まぁ、あるにはあるけど…?」
はっきり言って話の流れが全く読めない…
そんな表情をしたキラに気付きながらもお構いなし。
「じゃあ、腕出して♪」
「腕?…こう?」
ソラはここ数年でかなり大人っぽくなった。
正確には【母親の表情】になっただけなのだが、
ハルが居ない今、ソラの表情はどこか昔に戻ったようで…
(なんか、可愛いんだけど…)
今、自分の腕を掴みながら嬉しそうにしているソラを見て
キラはソラに気付かれないように理性とたたかっていたのだった。。。
「じゃぁ、目を瞑って、今から心の中で願い事、言って…」
「…願い事?何でもいいの?」
「うーん…あんまり自信はないんだけどね…;」
曖昧なソラの返答にキラは小首を傾げる。
「…今ソラを抱きたいとか?」
「別にいいけど私、冗談は嫌いよ?(にっこり)」
・・・・・・・・。
「・・・ごめんなさい。」
笑っていながらも全くと言っていいほどに笑顔を感じられない、
むしろ殺気を感じるソラの笑顔にキラはカクンをうな垂れるように頭を下げた。
「あぁーもぉー!!いきなりそんな事言われても急には無理だって!」
「キラってばそんなムキになんないでよー…」
「ソラが変な事言うからっ……え?」
突然手を握られたかと思えばそこには
ソラの手とは別の何か他の感触…
「これ…ミサンガ?」
掌にミサンガを乗せると不思議そうな顔をするキラ。
ソラはそんなキラに「やっぱりか、」と内心ため息をついた…
そしてキラに背を向けて小さく深呼吸して口を開いた。
「もー!こう言ったら分かってくれる?」
「え?」
「1回しか言わないからね!!」
「え、えぇ?!」
「Happy Birthday、キラ…」
「・・・・・っぁ、//」
キラに背中を向けたままソラは続けて言う。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
多分それは照れ隠し。
きっと顔だけじゃなくて耳まで赤く染まっていると思うから。
…だけどそんな事はキラにとっては知った事ではない。
「……っ!」
キラは目の前で背中を向けているソラを背後から抱きしめた。
首元と腰に回した腕は、隙間ないくらいにきゅっと離さない…
驚いて目を見開いているソラなどお構いなしだ。
「どうしよう…僕、凄く嬉しい…」
抱きしめられたまま、肩口に顔を埋められて出されたキラの言葉に
ソラの身体はズクリと反応してしまう…
(キラの声…ホント、駄目…///)
「お、大げさだよ…ミサンガくらいでっ…//」
今にも抜けそうになる全身の力を必死に堪えながら
ソラはきゅっとキラの腕を掴んだ。
「『くらい』じゃないでしょ?ソラの手作りじゃないの?」
「…そうだけど、」
「繋いでくれる?」
「…え、でも願い事…」
「決まったから。」
そう言って「はい」とソラにミサンガと腕を差し出すと、
ソラは、「さっきは決まらないとか言ったくせに…」と
小言を言いながらもキラに渡したミサンガを受け取った。
「目、瞑って?心の中で願い事、言ってね」
「うん。分かった。」
すっと目を閉じたキラを確認すると、
ソラはキラの腕にそのミサンガを結びつけた…。
『 』
その願いが叶う事を信じて…
「はい、できたよ」
その言葉に静かに目を開けたキラは、腕を眺めたその視線を
すっとソラの方に向けた後、嬉しそうに言った。
「願い事、叶うかな…」
「キラの想いが強ければ、ね」
そんなキラの嬉しそうな顔を見て、
ソラも嬉しそうな顔でそう言った。
「じゃぁ、叶うよ。絶対に…」
ソラのその瞳を逸らさずにじっと見詰め、
キラはそのままソラの唇に自分のそれをそっと重ねた。
本当に触れるだけの優しい口付け、それが離れると
キラはそっとソラの頬に手を添えてもう一度口付けた。
それに応えるようにソラも同じようにキラの頬に手を添えた。
「ん…んぅー・・・」
カーテンから朝の光が零れて部屋を薄暗く照らす…
いつもと違う感覚に、先に目を覚ましたのはソラ。
ぼんやりと思い瞼を持ち上げると目の前にはスースーと規則正しく寝息を立てるキラ。
その腕は当たり前のようにソラを捕らえていて…
(…動くに、動けない…)
どの道起きてすぐに立ち上がる事も困難なのは十分理解しているソラなだけに
目の前で規則正しい寝息を立てている、自分が動けなくなった犯人を見て
ソラは諦めてキラの腕の中で大人しくする事を選んだ。
上半身裸のキラの首には、AAに居た時に自分が首から下げていた指輪が下げられている。
残念なのは、キラの指輪が無くなってしまった事。
(まぁ、あれはホント、仕方が無かったんだけどね…)
まだオーブに住んでいて、ハルがまだ1歳に満たない頃、
家族で孤児院に遊びに来たときの事だった。
ハルがとにかく泣き止まずに、キラがそれを一生懸命抱いてあやしている時、
ハルが引きちぎって投げて、それが落ちた場所がまた悪く……
シャラン、と綺麗な音を奏でた後、それはポチャン、と沈んだのだ。
何処知れぬ海の中へ…
その後、皆で必死に探したものの結局見つからずに…
ずーんと落ち込んだキラを見て、ソラは自分の指輪をキラに差し出したのだ。
自分にはこれとは別に、キラに貰ったエンゲージリングがあるから、と。
(何か、懐かしいな…)
そう思い出しながら自分の首に下げられた指輪に触れて、
ソラはいつもと違う違和感を覚えた。
「・・・え、?」
ソラが触れたその先には、
キラから貰ったエンゲージリングとはまた別の指輪…
…だけどそれは何処か見覚えがあって・・・
「ぁ、…!これ、あの時の…」
「正解。」
ソラの声で目覚めてしまったのか、
キラはソラの独り言に答えながら、その手に自分の手を重ねた。
「まぁ、ホンモノじゃないんだけどね…」
あの時ハルが海に投げてしまった指輪と同じもの。
実は店の人に無理を言って作ってもらった特注ものだったり…
「これ…キラのサイズ、だよね?」
そう。二人が触れるソレはソラのものより一回り大きなサイズ。
「うん。ソラのは僕が持ってるから、僕のはソラが持ってて?」
もう無くさないように…、とソラの手ごと指輪を包み込むキラの手が優しくて…
自然とソラの瞳からは涙が零れた
「一体、私にいくつ…指輪を贈る気?」
私の指は10本しか無いんだから、なんて泣きながら言うソラに、
キラはごめん、と微笑んでその涙を指で掬った。
「キラのバカ…大好きよ。」
「キラ、来週ももちろん休み、とってあるんでしょうね?」
オーブの孤児院に帰って早々、母親から言われたその一言。
その日、5月26日はハルの誕生日という事でもちろんきっちり休みをシンから奪い取ったのだが…
「か、母さん?;」
笑顔の中にもどこか痛く刺々しいなにかを感じられずにはいられない何か…
それがチクチクピシピシとキラに無言の攻撃を仕掛ける。
「もちろん、こっちに連れて来てくれるわよね♪」
「え?あぁ・・・あはは…」
とりあえず引きつった笑みを母親に向け、
その母親の向こうのソラに助けを求めようとすれば…
(あ、ちょ、!!逸らした?今、目、逸らした?!)
しまった!というような表情を向けられ、
仕舞いにはその視線は明後日の方向に向けられたのだった…
(覚えてろよ~…)
「キラ!またそうやって誤魔化して!母さん、貴方をそんな子に育てた覚えはないわ!」
「うっ…;」
そうしてこの後こってりお説教をくらったキラなのだった…
(ゴメン、キラ…こればっかりは…ねぇ;)
「キラ!聞いてるの?!」
(07.05.18)
Happy Birthday KIRA!!