未来編
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ピリリリリ・・・・ピリリリリ
調度仕事が一区切りついて、
昼休憩でも…という時間。
「?」
キラの携帯の着信音が鳴り出した・・・。
「誰だろう…、え、ソラ?」
ポケットから携帯を探り出し、
ディスプレイを覗けばそこにはソラの名前。
「もしもし?ソラ、どうかした?」
「・・・・・・・・」
いつも何か用件のある時はモニターの通信機を使うソラなだけに、
キラは何かあったのだろうか?という嫌な予感を振り解いて
電話に出てみたのだが・・・・・
(・・・無言電話?)
「もしもし?ソラー??」
「・・・・・・・・」
キラが何度返答を待つも、一向に無言のソラ。
やはり何かあったんじゃないか、と次第にキラの顔も険しくなる…
「もし、も・・・・・―――…?」
もう一度問いかけても返事がなければ家まで行こうと
そう思って口を開いたキラだったが、
(何か、聞こえる・・・?)
よくよく電話に耳を澄ませてみれば微かに聞こえる声…
『・・・リィ…トリィ』
(え、トリィ?…微かにハロの声も…?)
キラは普段自分が家に居ない間の様子など分かるはずもなく
暫く電話越しの家に耳を傾けていればトリィもハロもいつも通り。
(あ、・・・もしかして・・・)
そのいつも通りのトリィとハロの様子に、
キラが予想できる事が1つだけあったのだ・・・。
トリィとハロがいつも一緒に居る場所。
「――――ハル」
トリィとハロがいつも一緒に居るのはハルの傍。
それはハルが【ハイハイ】ができるようになった時あたりに
危ない所へ行っていけないとハルの傍から離れないように
アスランにつけてもらった機能だ。
(まさかこんな所で役に立つとは・・・)
「ハル」
もう一度名前を呼べば
キラの呼びかけに反応した電話の相手。
『はぁい』
それは間違いなくハルの声で、
最近覚えた、返事をする事。
きっと電話の向こうでは返事と共に片手を上に上げているだろう…
キラはそれを想うと自然と笑みがこぼれた。
『もうハル~、こんな所にいたの~?!って、ハル何やってんの?!』
「?!」
電話の向こうから聞こえたソラの声、
キラはそれがどこか新鮮な気分でいっぱいだった。
「あぁー、携帯で遊んじゃだめー。ほら、よだれでベタベタじゃない」
「やぁ~、ぷぅ!」
「怒ってもダーメ。携帯は玩具じゃないの」
目を離すとすぐこれだ、とソラはハルの前でしゃがみ込み
携帯をハルの手から取り上げて、よだれで濡れた携帯を見た・・・
「え、えぇ、通話中?!うそ!誰にかけたの?!」
その時見えた画面に表示されたのは通話中の文字…
ソラは慌てて電話を耳にあてた。
「もしもし?…えと、ごめんなさい!あの・・・」
もちろん相手は誰なのか知らないソラは
恐る恐れる声を発すると・・・
『大丈夫大丈夫、ソラ、僕だから』
電話越しに聞こえてきたのは見ず知らずの声ではなく、
むしろ聞きなれた声・・・
「え、キラ?」
『うん。何かあったのかと思ったけど、何もなくて良かったよ』
「ごめんね!仕事中だった?!」
『ううん、調度休憩入ったばっかりだったし構わないよ』
ソラの慌てっぷりは電話越しのキラにも伝わり
またいつもと違う新鮮な気持ちになる・・・。
『ねぇソラ、ハルにかわって?』
「あ、うん。ちょっと待ってね」
ソラは近くできょとんとソラの持つ携帯を
不思議そうに見ているハルを手招きで呼び、
ハルの前にスっと携帯を差し出した。
「お父さんがね、ハルとお話したいんだって」
「う?」
ハルは差し出された電話を受け取ると、
先程と同じように不思議そうに見つめた後、
再び口に入れようとしたのを間一髪でソラに止められ、
そのまま耳元へと宛がわれたのであった。
「もしもし~?って、」
「もぉ~しぃ??」
ハルは分からずに、
ただ母親であるソラの口真似をしてみると
『もしもし、ハル?』
耳元から聞こえてきたのは先程と同じ、
大好きな父親の声だった。
声だけ聞こえてくるが不思議なのか、
ハルはその大きな瞳をぱちくりさせながら
ソラに無言で問いかける。
するとソラはそんなハルを見て
「はい」って返事するんだよ、と教えてあげると
『もしもし、ハル~?』
そう、キラが再びハルを呼んだ時、
ハルは先程と同じく「はぁい」と
片手を上げて返事をしたのだった。
我が子の成長は本当に嬉しく、微笑ましく思う。
もっと色々話したい事はあるのだけれど
今は所詮休憩時間という短い休みでしかないのだ…
「いい子だね、ハル。帰ったら遊ぼうね」
そう言って、電話越しのソラを呼んだ。
『ごめんね、キラの休憩削っちゃって;』
「ううん、普段の休憩よりも数倍休まったよ」
きっとソラはこれからはハルの
手の届かない場所に携帯を置いてしまうだろう…
そう思うと少し寂しい気分になってしまう。
「ねぇソラ、」
「ん?」
「次にハルと電話越しに話す時は、
もう少し話せるようになってるかな」
多分、そんな僕の気持ちも分かってしまうのかな、
「次は”お父さん”って呼んでもらえるといいね」
ソラは嬉しそうにそう言っていた。
「そうだね”お母さん”」
それは、きっとそう遠くない未来。
(06.07.29)