未来編
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朝、カーテンから零れる光と
自分の腹部で何やら感じる重みに目が覚めて、
そっと瞳を開ければ
同じアメジストの瞳とぶつかって、
それに気付いた相手は喜んで手を上げた。
「ハル・・・」
その上げた後に振り下ろす手には
ピンク色の丸い球体・・・
「!?」
更に頭も醒めてきた頃に気が付いた。
・・・・時には既に遅し。
ガンッ!
という衝撃と共に
キラ・ヤマトは完全に覚醒した。
________________
「・・・いッ!」
「ほらキラ、じっとして」
先程の衝撃から数分後、
キラはソラの手によって額を冷やされていた。
「派手にやられちゃったねー」
「・・・ビックリしたよ。」
ソファに腰掛けながら、ソラは今、
冷やしているキラの額を見ながら苦笑した。
その反応につられるかのようにキラも思わず苦笑。
そう、キラの額を痛々しい姿にしたのはハルなのだ。
ソラが朝食の用意でハルから目を離している隙に
寝室までやってきたのだろう・・・。
そこで見つけたキラを見てベッドへよじ登り
キラの上に辿り着いた時、ちょうどキラが目を覚ましハルを見つけた。
それに気付いたハルはハルで遊んでもらえると勘違いし、
持っていたハロごとキラの額目掛けてガツンといったのだ・・・。
ちょうど一区切りついてハルが居ない事に気付いたソラが
キラの居る寝室へ辿り着いた時には既に遅かったのだ。
ソラが見た光景は、必死で額を押さえながらも、
自分の上にいるハルを落とさないように
必死で痛みを堪えているキラの姿だった・・・。
「見てて凄く痛々しいわ・・・。」
「そう?でも僕ちょっと嬉しいんだけどね」
「・・・え、殴られるのが?;」
「…ちょっとソラ、勝手に解釈して引かないでくれない?
僕は決してMとかじゃないからね。」
何なら今からベッドで確かめても構わないけど?
なんて言うキラの冗談に、ソラは顔を引き攣らせながら
大きく首を横に振った。
「いつかね、自分の子供に起こされるのが夢だったんだ。」
「あぁ、何かよく見る幸せな家族の風景?」
「そうそう、武器持ってたのは予想外だったけど(笑)」
キラは先程の事を思い出すと
リビングでお気に入りの玩具で遊んでいるソラを
愛しそうに見詰めて微笑んだ。
そんなキラを見て、
ソラも自然と笑みがこぼれる。
(あぁ、本当にどうしようもないくらい・・・)
「キラのね、そういう父親の顔、私すごく大好きよ」
「…またそうやって人の弱いところを//」
「だって、ハルの事、愛してくれてるんだなぁーって。
嬉しくて、本当に凄く幸せなのよ。」
優しく微笑みながらキラの額を撫でるソラの温かさに
キラは顔が熱くなるのが分かった。
(そういうの、本当にズルイよっ///)
いつもは恥かしがってなかなか言ってくれない言葉を
今この場でさらっと言ってのけてしまうのだから。
「そういう事、ベッドの上で言ってくれたらいいのに…」
それなら僕も、もうちょっと頑張れるよ?
なんて照れ隠しの為に冗談めいて言ってみれば
「ちょーしに乗るなっ!」
「ったー!!」
ぺしっ!っと腫れは引いたが少し赤みの残る額を軽くはらい、
氷をキラし押し付けて、ソラは顔を赤く染めながら立ち上がった。
「もう、キラってばそういう事ばっかり!//」
「仕方ないよ、ソラが僕をそういう気持ちにさせるんだから」
「な!そんなのさせてなっ・・・?!」
させてない・・・と続くはずのソラの言葉は
意外にもハルの行動によって塞がれた。
「・・・・え、ハル?」
ソファの上で胡坐をかいて、自らの額を冷やすキラの足元までやって来たハル。
そのパッチリと大きなアメジストの瞳がとらえるものは間違いなくキラで、
まだ身長の足りないハルは一人ではソファに上る事はできない為に
キラの足元で両手を広げて、そこに行きたい事を要求すれば
キラは両脇を抱えて自分の膝の上にハルを座らせるわけで・・・
「え、ちょっと、ハル?」
それでも満足ではないのだろうハルは、
キラの服を掴みながら、更に立ち上がる。
そしてキラとハルのアメジストの瞳が重なる位置になったその時、
ハルは再び頭上に手を上げたのだ。
「あー・・・ひょっとして、これはもしや」
「二発目の前触れ・・・とか?」
キラとソラはお互いに顔を引き攣らせた。
が、二人の予想とは違い・・・
「え、ハル?」
ハルの手はそのままキラの額へと
ゆっくりと、そぉっと、下りていったのだ。
「・・・・ぁ~ぃ?」
「・・・え?」
今、確かに何か言ったがよく聞き取れなかったキラ。
だけど次に聞いた言葉はキラとソラにもしっかりと伝わり、
そして何ともいえないくらい嬉しいものとなった。
「ぃたぃたぁ~い?」
「「?!」」
キラの額を、この小さな手で優しく撫でながら
キラの顔を覗き込むハル。
いつもハルが笑うだけで幸せいっぱいなキラが
こんなハルを見て平気なわけもなく・・・
「ハル~!!!」
我慢できなかったキラは、
ガバッ!とハルのその小さな体を抱きしめた。
「???」
一方、突然抱きしめられたハルはというと、
頭にはてなマークを乗せて、キラの頭をよしよしと撫でながら
背後に立つソラの顔を窺った。
そんなハルを見たソラは嬉しそうに口を開いた。
「ハルはキラに似て、とっても優しいね!」
そしてハルの頭を優しく撫でた。
「・・・ソラに似てると僕は思うけどね」
「え、違うよ、絶対にキラだよー」
キラは嬉しそうにハルの胸に頭を預けながら言った。
「ハルさ、凄く温かくて落ち着くんだ」
「え?」
「何かソラと同じ温かさで・・・」
凄く落ち着くんだ、というキラに
ソラは困ったように、
だけど優しく微笑んだ。
「キラはさー、自分の優しさに気付いてないんだよ、きっと。」
「・・・何それ」
「ハルは間違いなくキラに似てるよ。」
「どうして?」
「覚えてるんだよ。ハルはちゃんと、キラの優しさを」
「?」
「お腹に居た時、ずっと腰さすってくれてた優しさ、ちゃんと伝わってたんだよ。」
そう、ハルがまだお腹に居る時に、
キラはいつもソラの体調を気遣っていて
辛そうなソラを見れば嫌な顔一つせずに
夜な夜な腰をさすっていた日もあったのだ。
「そうだったら・・・いいな」
そんな日をどこか懐かしむように思い出したキラは
ふと顔を上げて、目の前のハルを愛しそうに見詰めた。
そしてコツン、とハルの額に自分の額を重ねて
「そうだったら、いいね」
そう呟いた。
(06.06.24)
君が笑ってくれればいい