原作編
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あれ…懐かしい匂いがする…
何の匂いだっけ…?
「 ぃ…、ぁ…」
(喉がカラカラで声がでない…)
ふと目を開けると真っ白に光るライト
少し視線を泳がせれば見慣れた部屋
少し前までは毎日のように包まれていた匂い
ここまで情報が入ればソラには十分だ。
(キラの・・・部屋だ。)
そして右手に感じるじんわりとした温もり
それは紛れもないキラのもの。
(寝てる・・・)
自分の傍らで、そっと目を閉じるキラ。
もっと傍でその顔を確認したい、と身体を起こそうとするが…
「―――っ!!」
(うぅ・・・痛い、し、動けない・・・)
突然体中に激痛が走り思わず顔を歪め、
キラに握られた手にも力が籠る・・・。
「ん、ソラ・・・?」
「!!」
ソラから握り返される力に、キラは目を覚ます。
そして、アメジストの瞳がこちらに向けられ、視線がかち合う・・・。
「ソラ!!」
「…ぃ、ぁ」
「あ、ちょっと待って、水、飲めそう?」
キラの名前を呼ぼうとするも声にならず…
それに気付いたキラは、サイドに置いていたボトルのストローをソラに向けてやる。
ソラはストローに口付け、コクリ、コクリと喉を潤した。
「ん、はぁ…」
「もう大丈夫?」
「ん、ありがと。喉カラカラだったの」
「それよりソラ、頭打ったんだ!僕が分かる?具合は?気持ち悪くない?!」
目覚めて直ぐのキラからの質問攻めに、
ソラはキラらしいと思いながらも1つ1つ質問に答える
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「ソラ、これ・・・・」
ようやくキラの質問攻めから解放されたかと思えば、
今度はキラに差し出された見覚えのある手帳
「―――こ、れ・・・どこに・・・?」
ソラはキラから手帳を受け取ると、
そっと表紙を手のひらで撫でた。
「ソラのポケットに入ってた」
「え‥? 私…入れて、ない…知らない、だって・・・」
あの時、手帳の中を確認してすぐに、背後から襲われたのだ。
(ポケットに入れる暇なんてなかったのに…!!)
「そっか・・・」
驚きに動揺を隠せないソラに反してキラは冷静だ。
ダコスタがメンデルから持ち帰ったノートに記されていた議長の名前。
恐らくキラとソラの実験にも携わっていたのであろう…。
あの時、オーブで襲われたラクスとソラ。
先日、コペルニクスでもラクスは命を狙われ、命を落としたミーア。
そして…出生の秘密を知らされたうえ、襲われたソラ。
「多分、てか、これも全てデュランダル議長の思惑だと思う」
キラの言葉に、ソラは手元の手帳に自然を落とした。
「キラ・・・手帳の中身、見た?」
「・・・うん、見た」
「知ってたの?・・・2年前から、私の出生の事」
「・・・うん、知ってた」
じんわりと視界が歪んでいくのが分かった。
声も震えてしまう…。
「なん、で…教えてくれなかったの・・・」
「・・・・ごめん」
「お願いっ、本当の事…言って!」
「・・・・ソラと、離れたくなかった、から・・・」
無重力の空間にソラの涙が粒となって彷徨う
「それでも私は・・・あの時、知りたかったっ!」
「それでも僕はっ、ソラを離したくなかった!」
ソラの声にキラの大きな声が被さった。
そして、それと同時に、キラに手を引き起こされ、
そのまま力いっぱいに抱きしめられた。
(キラ、震えてる・・・)
「お願い。恨んでもいいから・・・嫌いにならないで・・・
恨んでもいいから・・・離れていかないで・・・」
部屋に彷徨うソラの涙に
新たな涙の粒がぶつかり、混ざり合う―――。
「ずっと隠してて、言えなくて、言い出せなくて、ごめんっ・・・でも・・・・
でもソラがいないと・・・僕は、生きられないっ・・・」
正直、負傷したこの身体でキラに力強く抱きしめられるのは激痛だ。
それなのに、その痛みよりも、この愛おしさが勝ってしまうのだ。
それと同時にキラへの不信感がスーっと溶かされていくのが分かった。
むしろ以前に増して彼への愛しさが大きくなった。
(言えなかった事に、2年間も苦しんでたなんて…)
ソラは震えるキラの背中に、そっと腕を回した―――。
「ねえキラ、覚えてる・・・?
私たち、2年前のあの時も、この場所で、同じ内容で、一緒に泣いてたよね・・・」
きゅっと瞳を閉じると、ソラの涙が2人の間を彷徨った。
「私も、キラがいないと…生きていけない」
無重力のお蔭で少し腕に力を入れると離れるキラの身体、
アメジストの瞳と視線を合わせると
「キラが好き」
目の前の愛しい人に、そのまま口付けた・・・。
過ちも後悔も もう怖くはない
(18.07.12)
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近道は何処へ行くにもない 今は理解る