原作編
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遠くから波の音が微かに聞こえる静かな夜更け、
ソラは一人、ハウメアの護り神の前に佇んでいた…
『この戦いが終わったらさ、ソラの薬指に指輪を嵌めたいんだ』
『・・・・え、?』
『今度はマリッジリングを』
『エンゲージリング…じゃなくて?』
『うん。エンゲージリングは、今嵌めるから』
月に手を翳せば左手の薬指には、あの日の指輪がキラリと輝く。
『えと、僕と結婚して下さい』
『キ、ラ・・・』
『変わらない自信があるんだ。』
『・・・?』
『明日も明後日も、これからもずっと、ソラだけを愛せる自信』
その時のキラの真っ直ぐな瞳が今も目の奥に焼き付いて離れない…。
いつも優しいその表情が、とても真剣だったから・・・。
それだけ真剣に愛してくれてるんだって思うと、凄く嬉しかった。
今の今まで私もキラとの結婚を夢のように思ってた。
だけど・・・
式の前夜にこうして迷う自分は何なのだろう・・・?
ただボーっと月を眺めてみていたのは
キラと出会った時からの思い出の数々。
「・・・ここにいたんだ」
「っ?!」
突然聞こえてきたキラの声にソラは驚きに肩を揺らした。
ソラに近づき、近くの階段にそっと腰を下ろしたキラに
ソラも続くように、キラの横に腰を下ろした。
「眠れないの?」
「う、ん・・・」
「そっか、」
特に会話を続ける事もなく、
ただ二人、肩を並べて月を眺める・・・
その沈黙を破ったのはソラの方。
「キラは・・・、」
「ん?」
「キラは、本当に私と結婚して…後悔しない?」
ソラの口から出されて言葉に
少し驚きはしたものの、
決めた自分の心に変わりはない。
「うん、しないよ。」
それが真実。
「私、普通のコーディネイターじゃないよ?」
「うん、僕も一緒だから」
「両親だって居ないよ?」
「僕に必要なのは、ソラだから」
「素直じゃないしっ…」
「だけど人一倍頑張り屋さんなんだよね、ソラって」
今にも泣き出しそうなソラに、
キラの中で、ぐっとソラへの愛しさがこみ上げてくる…
「それに、優しすぎて、すぐに自分を傷つけちゃうしね」
「そんな事…ないよ、私なんて…」
本当は凄く醜い…
「だけどそんなソラも、僕は大好きだけどね」
ソラの頬に流れた涙を
そっと指で掬えば、また零れ落ちるソラの涙。
「キ、ラぁ…っ!」
ソラの本音は簡単には聞くことが出来ない。
まずは上に圧し掛かる不安を取り除くことから…
それが完了する頃に見えてくるのはソラの涙。
キラは、ソラを優しく抱きしめると
ぽつりぽつりと呟くソラの心のうちに耳を傾けた・・・
「私、怖いの…キラと結婚するのが…」
「どうして?」
「・・・キラを、幸せにできる自信がない…、なのに、」
「うん?」
「なのに、キラと離れたくないのっ・・・」
そんなソラの言葉に、
キラは初めてソラの本音を聞いた日の事を思い出した。
『もう、キラと二度と離れたくないの、ずっと傍に居て欲しいのっ』
『うん』
『抱きしめて、離さないでいて欲しいの・・・』
「ソラ、覚えてる?」
「?」
「僕、もう二度とソラの事、離さないって言った事」
「・・・っ!」
『もう、二度と離さない・・・』
忘れるはずがない・・・
初めて自分の全てを受け入れてくれたキラの言葉。
初めて自分を抱きしめてくれたキラの腕。
「あの時から、僕の想いは変わってないから」
キラの瞳は揺るがない、
ただ真っ直ぐにソラを見詰める…
「僕の幸せはずっと、ずっとソラと一緒に居られる事なんだ。」
「キラ・・・」
「だから、だから・・・」
「・・・キラ?」
突然途切れたキラの言葉に不思議に思えば
キラは瞳を泳がせ口ごもる、
・・・と思えば、突然「はぁー」っと息を吐き出し深呼吸。
こういったキラの素の部分を見れる人もそう多くはない…
ソラはそんなキラの行動に、どこか安心する自分に気付いた。
「僕、頼りないし、かっこ悪い所ばっかりだけど…」
「そんな事ないよ、」
「だけど僕は明日、ソラのその、左手の薬指に愛を誓うよ。」
「・・・・っ!」
「誓うから…ここで、ソラを永遠に愛する事」
今すぐにでも返事がしたいのに・・・
「・・・キラぁぁっ、」
ただ名前を呼ぶ事しかできない・・・
キラへの愛が満ち溢れるばかりで
ただキラにしがみ付いて泣く事しかできない…
「あぁ、もう、泣かないで…」
困ったように、だけどいつもの優しい声で
そっと抱きしめて頭を撫でてくれるキラ。
「泣き止まないと、キスするよ?」
あまりに涙を零し続けるソラに、
さすがに泣き止ませようといつもの悪戯めいた表情を見せるキラだけど、
その一つ一つのキラの仕草がソラの涙を誘ってしまう…
それにはさすがのキラも苦笑せずにはいられない・・・
「沈黙は、肯定ととるからね?」
キラはソラの頬に手を添えると
そのまま泣き声をあげ続けるソラの口を塞いだ…
「ん、はぁっ…ぁ・・んん・・・」
次第に深く激しくなる二人のキス、
頬にあったキラの手は、いつの間にかソラの後頭部へ
もう片方の手はしっかりとソラの指に絡みついて離れない・・・
「っはぁ・・・・、」
ツっと銀糸を引いて名残惜しそうに離れた唇…
「ソラ、そろそろ帰ろっか」
「・・・え、?」
「このまま居ると、ソラを抱きたくて我慢できなくなるから…//」
もしもそれを実行してしまえば
おそらく明日は結婚式どころではないだろう…
「・・・ばか。//」
そんな二人を見護るのは
二人を静かに照し続ける月と、
二人を祝うハウメアの護り神・・・・・。
翌日、綺麗なウェディングドレスに身を包んだソラは
キラと永遠の愛を誓った。
それを祝福するのはかつての戦友達。
「ソラ!キラ!こっち向いて!!」
ソラとキラの晴れ姿にカメラを構えるミリアリア。
「ソラさ~ん、ブーケは私の方に投げて下さいよぉ~!」
「お姉ちゃん、ズルイ~!!」
「あー!もー!ルナもメイリンもはしゃぎすぎ!」
「シン、お前も落ち着け・・・」
ソラとキラに憧れるルナマリアとメイリン、
そして停戦後、ようやくキラと和解できたシン、
そんな彼らの母親役のようなキラの親友のアスラン。
「キラー!お前、ソラの事、泣かすなよっ!」
「もし泣かせたら、ソラはわたくしがいただきますわよ~」
いつだって一生懸命な国を、人々を愛するキラの姉、
そしてソラの親友のカガリ、
いつも優しい歌声と強い意志をもつ親友のラクス。
2年前から今もAAを支えてきてくれたキラとソラの
姉のようなマリューと、同じく兄のようなムウ。
そしていつも話相手になってくれた他のAAメンバー。
停戦後ずっと一緒に暮らしてきた孤児院の子供たち、
見守っていてくれたマルキオ導師。
そして・・・
「キラ、ソラちゃん、おめでとう」
「母さん、ありがとう」
「ありがとうございます、カリダさん」
寄り添う二人の元へやってきたのは
キラの母親であるカリダだった・・・。
「違うわソラちゃん」
「・・・え?」
「・・・母さん?」
二人の元へやってきたカリダは
突然何かを指摘しだした事に二人は頭に「?」を浮かべる。
「"お母さん"って呼んでちょうだい」
「!!」
そのカリダの一言に、ソラはキラの手を強く握った。
そんなソラの反応に、
キラは優しい眼差しでソラに微笑んだ。
「お母…さん・・・」
「そうよ、ソラちゃん」
そう柔らかく微笑むカリダの表情をソラは知っている…
時折見せてくれる、キラの柔らかく微笑むソレと同じ表情なのだ。
例え本当の両親ではなくても、間違いなくキラはカリダの愛で育てられた、
そう感じずにはいられなかった…。
「良かったね、ソラ」
そう言ってくれるキラに、
それに優しく微笑んでくれるカリダに、
ソラは堪えきれずに涙を流した・・・。
(もう、母さん、ソラを泣かせないでよ!)
(あら、今のはキラが悪いんだから)
(06.11.04)
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