短編
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季節は冬
孤児院から少し離れた海とは反対方向の、教会近くの星がよく見える場所で二人。
「もう、終わりに…しよう?」
気持ちが離れたワケじゃない…
だけど、
私は、キラに別れを告げた。
キラは優しいから、そうしなきゃ自分の進みたい道を選ばないから…
「だから、私の事は…忘れ、て…ザフトに…行って?今まで嘘吐かせて、ごめんね…?」
そう言った時のキラの瞳は、大きく揺らいでた。
だけど、やっぱりキラは優しくて、
私の必死の強がりにも、気付かないフリをして、ただ黙って頷いてくれた…。
「ソラ…、ありが、とう…」
それで二人の『恋人』だった時間は終わったはずだったのに
「ありがとう。大好き。愛してる」
続けて、そう言いながら、泣きそうな声で私を強く抱きしめるなんて、反則だ…。
「何で…そういう事、言うのよぉ…っ」
折角、堪えてた涙だって、気持ちだって、
キラが好きとか言うから、愛してるとか言うから、
「ふ…っく、うぅ…」
キラと離れたくない。
キラにずっと抱きしめていてほしい。
キラとずっと一緒に居たい。
キラを他の誰にも渡したくない。
「キラの事…忘れられないじゃないっ…」
キラの服をキュっと握って、キラの胸に顔を埋めて、小さく呟いた本音…。
3年以上もずっと、隣で肩を寄せ合って、支え合って生きてきた二人の想いは本物だからこそ、
別れがツライ。
このままキラとサヨナラなんて嫌だよ…
「忘れないでよ…ってか、このまま、僕はソラに、『サヨナラ』なんて言うつもりなんてないんだから…」
・・・・・え?
「だ、ダメだよ!…キラはザフトに…」
「行くよ?行く。それは今、僕が進まなきゃいけない道だから…」
――――『フリーダムの代償』
それが今のキラの、進まなければいけない道…。
「…っ、」
キラの口から、その言葉を聞く度に涙が溢れてくる…
“何で、キラは悪くないのに!!”
初めてそう言った時のあの、キラの悲しそうな表情が忘れられない。
それ以来、キラは自分の気持ちに嘘を吐くようになった。
そして、キラに嘘を吐かせていたのは、自分だった。
だからもう、それも今日で全部、終わりにするはずだったのに…
「だけど僕さ、もう自分の気持ちに嘘吐くのは、やめるよ。」
「…キ、ラ?」
「だからソラもプラントへ、連れて行くから」
スっと人差し指で瞳に溜まった涙を掬うと
そのまま顔を近付けて、そっと唇を重ね合わせるキラ。
瞳を閉じ損ねたソラの目の前には長い睫毛を伏せたキラの閉じられた瞳…
(やっぱりキラと…一緒にいたい・・・)
せっかくソラの涙を掬ったキラの行為も虚しく、
ソラの瞳からは、重力に従って、涙が次々と零れ落ちる
その一滴が、キラの頬をツッっと伝う・・・
「あー、泣かせちゃった…」
「っ…キ、ラぁ…!!」
キラはそんなソラを、どこか愛しそうに見詰め、
微笑みながら再び顔を寄せ合い、
二人の距離がゼロになった時、
水面が氷に変わった・・・
時が止まるほど、美しい星空を…
(06.11.22)