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氷龍の巣

俺は光を見て、笑った。それは俺の最後の光だった。

レオニード・セシル。俺はその名を誇りに思っていた。セシルを名乗れることが素晴らしい名誉だと教えられたからだ。セシル家は有名な軍人の一家で、何人もの優秀な軍人を輩出している。俺は幼いころから「氷の獅子」と呼ばれ、幼年学校でも成績優秀だったことを覚えている。誰もが俺を賞賛し、俺は何もかも恵まれたこの環境を恐ろしく気に入っていた。そんなある日俺は課題のために山に入った。薬草を調べるという課題があり、薬草を調べるなら現地で見ようと思ったからだ。山は初めてで見るもの全てが新鮮だった。夢中で奥まで行った俺は、小さな祠を見つけた。古びた祠は結界の跡があって、すごい発見ではないかと思った。興味本位で奥まで行ったのだが途中で入口あたりに人がいることに気がついた。何を思ったのか俺は岩の隙間に隠れて彼らを見ていた。

「いいですか?貴方は神の力を授かったのです。決して庶民のように暮らせないのです」

「わかっています。母上。私は庶民を平和に導く神です」

その会話に、俺は入ったことに後悔した。もしかしてここは神の祭壇で、今いる人はその子孫なのではないかと思った。それは間違いではないようで、俺は息を止めた。見つかれば殺されるかもしれない。息を潜め出ていくのを待っていた俺が次に見た光景が俺の人生を変えた。
そこに立つ少年は自分と瓜二つだったのだ。クローンのようにそっくりで俺は動揺した。彼の服に書かれていた家紋はあの伝説のヴォルロウ家のもの。俺は隙を見てそこから飛び出した。怖かった。とても怖かった。なぜこんなに似ているのか、息絶えた種であるヴォルロウ家がなぜ今儀式をしているのか。
俺はその日宿題を初めて放棄し、歴史書や禁書を漁った。そして見つけた不自然な戸籍。現在のヴォルロウ家では双子の弟が当主のようだ。だがその文献は破棄されており、一人息子として戸籍が残っていた。双子の兄は生後すぐに死んだことになっていたがその戸籍番号は間違いなく俺のものなのだ。まさか、俺が・・・消されている?

この俺は・・・レオニードではないと・・・?

セシル家には養子で・・・?

名誉は・・・・・?

俺は・・・?

誰・・?

子供だった俺の思考回路は一瞬で壊れた。確かに変だと思っていた両親はどちらも青髪なのに俺は真っ赤。瞳の色も赤ではなく緑だった。どう考えたっておかしい。両親の特徴など一切なかった。あったのは魔力だけ。もし俺が破門させられ養子に入れられたのならうまく説明がついてしまう。

まさか・・・・・・。

認めたくないことが多すぎてそのまま家には帰らなかった。遠い場所まで走って逃げた。祠を覗き、禁書を漁っただけでも帰ればどうなるかわからない。どうなってもいい。今は逃げようと。

逃げた先で待っていたのは孤独だけだった。食い物もない、ベッドも、シャワーも・・・。恵まれた生活で慣れ親しんだものはすべて、消えた。周りに咲いている草木は何でも食った。死んでもいい。逃げたいんだ。

数週間後俺は視界に違和感を覚えた。晴れているのに妙に暗い。雲も無いはずなのに。木々の下にいるわけでもなく、草原を歩いているのに。
その時既に俺は毒草を食っていたのだ。その後10日も経たない間に完全に視界は閉ざされた。


救いの手はあった。見知らぬ少女が助けてくれたのだ。彼女の名前は「エリ」────
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