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氷龍の巣

グレンは以降も隙あらば俺に声をかけてきたあいつとの交流を遮断したくてもあいつは臨時班長を任されており連絡連絡せざるを得ない。体調はあまり良くない日が続き俺の評価は下がり始めていた。
(なんだっていうんだ………!ちくしょう!俺が体が弱いことがバレちまう……!)
俺は元々物凄く体が弱かった。だからこそ神獣に選ばれなかった訳だし、こんな体でなければ若い頃にアランを殺せていただろう。健全な神龍なら治癒力に優れ毒すらも解毒することが出来る。それも出来ず、毒で失明した。それどころか暗殺を試みた際にはアランの短剣で負傷し、寝込む羽目になった。体の再生能力で言えば人間以下かもしれない。傷ついた甲殻はそのままの形で残るし羽も角も元の姿にはきっと戻らない。そんな体を支えているのは俺の莫大な魔力だ。魔力でこの体を支えている。だから魔力が抜けてしまえば貧弱な体しか残らない。こんな体であるとバレてしまってはいけない。俺をしたってくれる数少ない部下がきっと失望するだろう。このことを知っているのはごく一部だからだ。盲目でも強くて頼れる班長だと皆信じているのだから。

「班長、おはようございます!」

「ああ、おはよう。アポロ。元気そうだな」

班室に入ってきたのはアポロ。昔からの部下で、親衛隊と呼ばれる集団のまとめ役でもある。

「班長は顔色悪いですね、大丈夫ですか?」

「ああ、まあ。今のところは」

部下では唯一俺の体のことを知っているのがアポロである。

「無理はしないでくださいね?最近そういうこと多いですけど」

「悪いな、心配かけて」

今日は大半の騎士団員が休みだから班室に来るのもこいつだけ。今日は無理せず休みながらやるか。

「いえ、仕方が無い事でしょうしいいんですよ。でも最近増えているので医療班で精密検査してもらった方がいいんじゃないですか?」

「あーお前もそう思うか?奇遇だな」

「そう思うなら休んでくださいよ本当に………」

「俺が休んだら親衛隊の奴らが俺の部屋に押しかけるだろうが」

「え、あ、すみません。彼ら本当に班長好きですから。俺もですが」

こんなに気軽に人と話すのはいつぶりだろうか。いつも堅苦しい会議に新人研修やらで敬語になりきらないなにかを一生懸命言ってるから、何ヶ月かぶりだな。

「お前ら上司に恋してないでさっさと少子化どうにかしろよ」

「はえ!?ち、違います!恋じゃ無いですから!本当に班長はかっこいいですけど………」

「ふっ、どうだかな………。俺は今フリーだが実力ねえやつとはゴメンだな……。それに…………っ。っ……!?」

「班長!?」

突然の鋭い痛みが胸に走る。胸を強く押さえるが痛みは全身に回るようで、力がまともに入らない。俺は椅子から滑り落ち頭と肩を強打した。

「がはっ……………!」

「すぐに医療班を呼んできますから!少しだけ待っててください……!」

勢い良くドアが開けられ荒い足音が遠のいていく。今、気を失えるならきっともう少し楽になれるはずだ。なのに、痛みで呼吸すらできないというのに、意識は何故か鮮明で俺はもがくことしかできなかった。
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