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氷龍の巣

最近ストーカーに会っている。俺の契約者であり嫁の敵、魔王のグレンだ。セクハラはされるし胸糞悪い。嫌いでたまらない。何なんだあいつは・・・・・。


(この話は二章中盤以降のストーリーです。ネタバレが含まれますのでご注意ください)



俺には昔一度だけ恋人が居た。とてもいいやつだった。得意な魔法は対象物と自分の居場所を入れ替える置換魔法。言葉は拙く、読み書きは苦手だったが話を親身になって聞いてくれる可愛い奴だった。そんなあいつと俺はある事件によって引き裂かれた。身に覚えない事件の犯人として呼び出させた俺は一ヶ月牢獄に閉じ込められた挙句死刑に掛けられることになった。何を言っても聞き入れられることは無くその日は来た。俺は諦め、死ぬ前に嫁に会いたいといった。案外すっと聞き入れられたので安心して、しばらく他愛の無い会話をした。そして処刑台に立った。覚悟を決め目を閉じた。痛みに耐えるために歯を食いしばった。死刑決行の鐘がなる。ぐっと体に力を込めたが一向に痛みは来なかった。それどころか髪を靡かせる風が吹いた。鳥の声がする。その時脳内に響いた

『しんじゃ、ダメ・・・・』

離れたところから生々しい切断音が聞こえる。そう、あいつが場所を入れ替えたのだ。


「エリ!!!!」

叫んだ声はどこにも届かなかった。



魔族と契約したのが間違いだった。信用さえしなければ、こんなことにはならなかっただろう。あの魔王が・・・・・。絶対に許さない。

あの頃から滅多なことでないと他人を信用しなくなった。だと言うのに一番信頼できないグレンが、最近付きまとっている。最近は体調が優れないし・・・・・。

「レオ!ディナーでも行かんか!」

「るせぇ!失せろ!」

いつも軽く流し無視しているのだが今日は体調が悪く、苦しく、逃げ出せない。

「体調でも悪いのか?」

「てめぇには関係ねえだろ・・・!」

振り絞るように言うとグレンは俺を引き寄せて


「!?」

「楽にしてやろう」

俺の唇にグレンの唇を重ねられた。俗に言うキス。理解した瞬間に腰の短剣を抜き、切りつけようとした、が刃は虚しく風を切った。

「ほれ、楽になったろ?」

「は・・・・?」

さっきまで動けないほど苦しかったのに今はこんなに動ける・・・・。

「てめぇ!俺に何した!」

「さぁ?なんじゃろうな」





恋とはおろかだと思い知らされたのはこれからすぐのことだった
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