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ビリグラ

僕は微睡みながら薄らと目を開く。もう彼は寝ている。残念だがこちらを向いてはいない。少しの不安に駆られて彼を抱き寄せる。間違いなく生きている。触れあった肌から伝わる鼓動は間違いなく彼のものなのだ。この体温も鼓動も寝息も僕を癒していく。グラハム、生きていてくれてありがとう。君が帰ってこない間どんな気持ちで居たか分かるかい?きっと分かっていないんだね。いや、君なりに分かっているのだろうか。僕は戦場で君を見た訳では無いが報告を見る度血の気が引く気がした。生還するのは当たり前かのように話していた君の帰還報告はどこにもない。この数日間生きた心地がしなかった。君を信じてはいたが僕だって人間だから、とても不安だった。もう君が帰ってこなかったら。何度そう思っただろう。でも今は確かに触れられる。不安も恐怖も溶かしていくグラハムの体温が横にある。
「愛しているよ、グラハム」
消えかかった声で眠るグラハムに囁く。聞いていなくて良かった。僕が確かめたい。こうやって抱きしめているのがグラハムであるということ、愛している恋人だと言うことを。お互い軍属なのだから何度も命の危険を感じたことはある。ガンダムの襲撃で僕が大怪我を負った時も、彼が大怪我を負った時も。だからこそ確かめずには居られない。これ以上仲間を失いたくは無いし、ましてや恋人を失うなんて悲しすぎる。
でもグラハム?泣かずに待っていた僕を褒めて欲しい。僕もELSが目の前まで迫って覚悟を決めたくらいだったから君は相当危険な目にあったのだろうし。録画データに映る君の機体はELSに飲まれかけていたから皆戻らないだろうと言っていたんだ。でもね、僕は君なら帰ってくる気がしたんだ。いつだって不可能を超えて帰ってくる君だから。僕の勘はよく当たるだろう?確証なんて無いのに帰ってくる君が本当に眩しく見える。
ELSと同化して銀に光る髪を撫でた。やはり感触が異なる。不思議なことに顔の火傷跡は綺麗に消えて代わりにELSの銀色が顔を覆っている。見慣れないその光景に少し寂しさを覚えながら、頬にキスをする。君がいてくれたらそれだけでいい。どんなに変わり果てても僕はきっと君が好きだよ。
「………ふっ…………かたぎり…………」
グラハム寝言を言う。僕の名前だ。夢でも僕達は一緒にいるのだろうか。そうだとしたら幸せだ。今日はもう眠いし、眠ろう。君の隣で。
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