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過去作まとめ

仕事が恋人か。私は拗ねるようにカタギリを見た。そのありきたりな台詞に彼は笑顔を濁し、複雑な表情で私を見た後、そっと髪を撫でて早めに帰ってくるといつもの決まり文句を言って、出て行った。私の心を完全に奪っておきながら彼はほとんど接点を持とうとしない。忙しくても少しくらい求めてみればいいと、拗ねてしまうのは君のせいだ。この歳になって子供の様に拗ねるのはどうかと思うが、恋なんてものは今の今までしたことがなかったと思う。彼がいなければ今の私はいないだろう。そうでなければこんなに複雑な心境になることもなかったと思う。全ての運命を彼に握られている感じが否めないが、惚れてしまえば私の負けなのだろうな。どんなことをされても好きだから、で許してしまう辺りが特に。

「体を壊すなよ」

誰もいない空間にその言葉を投げかけた。聞いていてもいなくてもこの気持ちを抱いていることは彼だって理解しているはずだ。信頼というものが愛に変わっただけだというなら今も昔も変わらない。互いに背中を預けられる存在だということは。

そんなことを考えていたら朝、目覚めたときに落とされた口付けを思い出し、体温が加熱していく。そっとキスされたその首筋を撫でてみて今私が寂しいのだと気付いた。この体温をどうしてくれる。今日こそ逃がさないと心に誓い、私はカタギリの後を追いかけた。
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