1章

「兄さん起きて!大変だよ!」
シャークの叫ぶ声が聞こえた。

「…ん?なんだ…?」
ラスレンは半分寝呆けたまま布団から起き上がる。

外はまだ暗い。
しかし、いつもの夜とは違うことに気付いた。
外が騒がしく何か異変を感じる。

「今、町の人が来て魔物達が襲ってきたって!」
「なんだって!?」
シャークの言葉でラスレンは完全に目が覚めた。

ラスレンは剣を取り素早く支度を始めた。


外へ出ると、魔物から逃げ惑う人々の悲鳴や叫び声が聞こえ、町中が混乱状態に陥っていた。

「いいかシャーク。お前は町の人々と安全な場所まで逃げるんだ」

「兄さん…」
戦う兄の姿を知っているシャーク。

「心配ない、俺は大丈夫さ!」
ラスレンは力強い笑顔を見せた。

「気を付けてね兄さん」
ラスレンの言葉を信じ、シャークは町の人々と一緒に駆け出した。

ーー


駆け付けた兵士達が、町人を誘導したり、魔物と戦ったり、連絡を取り合ったりと、緊急事態の対応をして行動していた。

「ラスレンだ!」
町の男がラスレンに気付くと同時に声をあげる。

「ラスレンだって!?」
「あの英雄の子孫か!」
「助けに来てくれたのね!」
騒めきが起こり人々はラスレンに注目した。
期待の眼差しがラスレンに注がれる。

英雄の血を引く者に――

ラスレンは襲って来る狼の魔物の群れの前に立ちはだかった。
「複数の場合は魔強化だな」
ラスレンは呟いた。

魔強化――
魔力の宿る物に自分の魔力を注ぎ込み特殊能力を使う力。

ラスレンが剣を構えると、その剣が光った。
光るのは魔強化が成功したという証だった。

「風よ!」
ラスレンが剣を大きく振ると同時に複数の風の刄が狼の魔物達に向かって放たれる。
魔物達は次々に斬られ、倒れていった。

「どうして町に魔物が侵入してるんだ?一体何が…?」
ラスレンが疑問に思っていると。

「ラスレン!ここにいたのか!」
こちらへ走って来る数人の兵士達のうちの一人が声をかけた。

「ルディク!」
ラスレンの友人だった。

「大変だぜ!城に侵入して荒らし廻っている奴らがいるって聞いたんだ!」
ルディクは焦った様子で話しだす。

「なんだって!?もしかして魔物を呼び寄せたのもそいつらか!?」
ラスレンは声を荒らげる。

城の厳重な警備を突破するなんてただ者ではないと思った。

「とにかく城へ行こうぜ!何かわかるかもしれねーだろ」
ルディクは走りだし、ラスレンも続いて走った。

その間、魔物を見つけては二人で倒しながら先へと進んで行った。

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