1章

ある日――

ラスレンとソルゴは、買い物をするため街を歩いていた。

ラスレンにとってソルゴは隊長でもあり養父でもあった。

「父さん。何を買っていったらいいかな?」
ラスレンは、プライベートではソルゴ隊長とは呼ばず敬語も使わなかった。

「そうだな。甘いものが食べたいから果物でも買うか」
仕事中は厳しいソルゴだが、家庭では優しい父親の面を見せていた。

そのころ――

「いたぞ。あの金髪の子供が英雄の子孫だ」
「えっ!?あいつが!?どこをどう見ても、そこら辺にいるただのガキじゃねぇか」
建物の陰からこっそりとラスレンを見ている怪しい二人組の男がいた。

「とにかく、あのガキを捕まえてくれば金がもらえるんだよな。…しかし、隣にいるおっさんが邪魔だな」
「あの英雄の子孫のガキが一人になればなぁ」
二人は英雄の子孫であるラスレンを捕まえようとしていた。


「…!」
ソルゴは嫌な気配を感じ、足を止める。

「父さん。どうしたの?」
ラスレンが不思議そうに聞く。

「少し買う物があってな。すぐ戻るからここで待っていてくれ」
ソルゴは早歩きで行ってしまった。


「おっ!おっさんがいなくなった今がチャンスだ!さっさと捕まえようぜ」
先ほどの怪しい二人組がニヤリとした。

「待て、相手は子供だ。善人を装って近づこう」
「だな。あのガキ見るからに単純そうだし、簡単に騙せそうだよな~」
怪しい二人組が動きだそうとする。

「私の息子に何か用かな?」
ソルゴが二人組の後ろから声をかけてきた。

「わあっ!?」
男二人は驚いて振り返る。

「お、お前は!?英雄の子孫と一緒に…。…!この男、どこかで見た覚えが…」
二人組の一人がソルゴを見てハッとした。

「このおっさんがか?そういえば鍛えているような体格をして…」
もう一人はソルゴを探るように見ている。

「思い出した…!王国一の剣士…ソルゴ隊長だ!」
ソルゴに気付いた男は目を見開いた。

「た、たたた隊長ー!?オレたちヤベェんじゃねーか!?」
もう一人の男は慌てている。

「さて、お前たちは何をしているのかな?」
ソルゴは鋭く二人を見ていた。

「ご、ごめんなさ~い!」
二人は一目散に逃げ出した。

「あんな奴らがいるとはな…」
ソルゴは気を付けなければならないと思った。

ソルゴは戻ろうとした途中、店の売場に置いてある物に目が入った。

そして――

「父さん。何を買ってきたんだ?」
ラスレンはソルゴの右手にある袋に気付いた。

「煎じて飲めば体に良い効果が得られる栄養価の高い薬草だ」
「そうか、シャークに買ってきてくれたんだ。ありがとう父さん」
ラスレンは喜んでソルゴに礼を言った。

シャークはラスレンの2つ年下の実の弟で、体が弱かった。

「さあラスレン。母さんたちが待っているぞ」
「そうだね。行こうか」
ラスレンは養父ソルゴと歩きだした。

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