1章

「おい。聞いたか?ラスレンがゴーケンさんからお説教を受けたってさ」
「あいつが英雄の子孫だなんて信じられねぇよ」
「副隊長のシディエスさんの方がよっぽど英雄の子孫に相応しいのにな」
「ああ。ラスレンは、バカっぽいガキだしな。まあ、弟のシャークの方はしっかりとしたヤツらしいけどな」
見習い兵士たちがラスレンの噂をしていた。


夜、ラスレンが一人で歩いていると。

「おや~?今何時だと思ってるのかな?お子様は眠る時間じゃないのかな~?」
十代半ばくらいの見習い兵士の1人がラスレンを馬鹿にしてきた。

「なんだと!誰がお子様だ!」
黙ってられずラスレンは言い返す。

「ホントにうるせえガキだな。バカは黙ってろよ」
もう一人の十代半ばくらいの見習い兵士もからかう。

「バカとはなんだ!先に声かけたのはそっちだろ!」
二人の態度にイライラしてくるラスレン。

「お前本当に英雄の子孫か~?プッ…なんだか笑えてきたな」
「本当はシディエスさんが英雄の子孫で、お前は違うんじゃないのか~?アッハッハッハ」
見習い兵士二人は嘲笑した。

「何~っ!お前らいい加減にしろよ!さっきから言いたい放題言いやがって!」
ラスレンが怒りをぶつける。

「お前、英雄の子孫だからって調子に乗りすぎじゃねぇの」
「聖剣も持てないくせにさぁ~」
見習い兵士たちはラスレンを見下していた。

「だから何だっていうんだ?」
別の場所から声が聞こえた。

「ルディク」
ラスレンが声のした方を見るとルディクがやってきた。

「ラスレンが英雄の子孫だとかオレには関係ねぇ!今度そんなことを口にしたら許さねーからな!」
ルディクが見習い兵士に向かってきっばりと言い切った。

そして――

「さっきはありがとうルディク。助かったよ」
「バーカ。勘違いすんなよ。オレはただあいつらがムカついたから言っただけだからな」
お礼を言うラスレンに、ルディクは素直じゃない言葉で返すが表情は笑顔だった。

「さっきヴィリーに会ってさ。お前のこと何度も聞いてきたんだ」
ルディクが話しだす。

ヴィリーは、兵隊長ソルゴの実の娘であり、ラスレンの義理の妹。

「そうか。心配性だなあいつは」
ラスレンとヴィリーは幼いころから一緒に育った義理の兄妹だった。

「そーいやヴィリーって、大きくなったらお前のお嫁さんになりたいって言ってただろ」
ルディクはニヤッとした。

「からかうなよ~ヴィリーはまだ子供じゃないか」
ラスレンにとってヴィリーは家族であり妹である存在だった。


――――

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