第4章

カシル達は、敵兵達からうまく逃れることができ、ラスレン隊長の部隊と合流するため、砦の外側にある通路を走っていた。

走っている途中で、急にカシルが足を止めた。

「どうしたのだカシル?」
一緒にいたエリレオが振り返る。

「なんだか、靴擦れしてしまったみたいなんだ」
カシルは左足を手で触った。

「大丈夫か?」
エリレオがカシルの足に目をやる。

「ごめん。エリレオは先へ行っててくれないか。ちょっと足を見てみるだけだから」
カシルはエリレオに頼んだ。

「しかし…お前を一人にしては…」
エリレオは迷っている。

「心配しないで。僕もすぐに追いかけるよ」
カシルは穏やかに微笑んで見せた。

エリレオは敵の気配がないかどうか辺りを見回す。
誰もいないことを確認し、
「わかった。早く来るのだぞ」
エリレオは走りだした。


エリレオの姿が見えなくなるとカシルは壁に寄り掛かって一息ついた。

魔法を使いすぎたカシルは、気付かれないように平気を装っていた。

本当は靴擦れではない。
多量に魔法力を消耗していたので、少し休みたいためだ。

竜との戦いで、連続で休む間もなく魔法を使い続けた。

それに加え、傷を治した回復魔法や敵の目を眩ませた魔法など。

もう、カシルの魔法力はあまり残っていなかった。


一方その頃ーー


ラスレンの弟のシャークは、ヴィシャス城の南側の裏道の先にある高原で、仕事仲間の海兵団と共に戦っていた。

「やはり俺たちが待機していて正解だったなシャーク」
一息ついたところで、海兵のうちの一人が言いだす。

「ああ。どうせこんなことだろうと思ったぜ。きっと、あいつらは南の裏道から通って警備が手薄になった所を襲うつもりだったんだろうけどな」
シャークは軽い口調で返す。

「俺は普通に正面から来ることしか考えてませんでしたよ」
海兵の中には新米の海兵もいた。


「おい!また敵が来たぞ!」
海兵の視線の先には、数多くの敵兵達が向かってくるのが見える。

「まあしかし。多人数なお出ましじゃねーか」
シャークは武器のナイフを手にした。

「これじゃキリがありませんよ」
新米海兵が疲れたように言う。

「なあに。オレたちゃ海でいくつもの苦境を乗り越えてきたんだぜ。このくらいでくたばってたまるかよ」
シャークが励ますように新米海兵の背中を叩く。

「そうだ!俺たちはヴィシャス国の海兵団だ!どんなことがあろうと乗り越えるさ!」
海兵も元気に答える。

「おう!みんな負けるなよ!」
シャークは気合いを入れた。

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