第4章

誰だ…?

俺を呼ぶのは誰だ?

アシェドは目を開いた。

ここはベッドの上。

辺りは暗い。
まだ夜中だろう。

誰かが自分を呼んでいるような気がして目が覚めてしまった。

「…そんなはず、ないか…」
アシェドは自嘲した。


本当の家族は不明…

育ての父がいるが、仲は悪くほとんど口を聞いていないし、あまり会うこともなかった。


アシェドは首に掛けてある水色の宝石のペンダントに触れてみる。

物心ついた時から肌身放さず持っていた。

強い魔力がかけられているようで、外すことができない。

だが、外そうとしたことはない。
これだけは外したくなかった。

外してしまったら、自分の中の何かが失われ、心が乱れてしまうのではないかと思った。

なぜ、こんな気持ちになるのかアシェド自身にはわからなかった。

ーーーー

朝ーー

リューエル家の屋敷ーー

ユーリスは、広い部屋の中央に立っていた。

ユーリスの前にある台座には、手の平に収まるくらいの透き通った宝玉が置かれていた。

家宝のリヒトストーン。
強大な光の力を秘めている特殊な魔石である。

台座には特殊な魔力がかけられており、その魔法を解かない限りリヒトストーンを持ち出すことはできない。

「おれはリヒトストーンの力を引き出せるようになってきた。あともう少しで闇の力に対抗できる大きな力が得られるぞ」
ユーリスは目の前にある魔石を見つめていた。

「それができれば闇の奴らを一掃できるんだ」
ユーリスは笑みを浮かべる。

「闇の奴らがいる限り世界は脅威にさらされている。だから、闇の力は徹底的に排除しなければならない」
ユーリスの表情は憎しみに変わり、拳を握りしめた。

「この石の力で、闇の奴らが抵抗できないくらいに、光の力の強さで圧倒させてやるんだ」
ユーリスはリヒトストーンに手を伸ばす。

「今に見てろよ闇の奴らめ!おれが闇の全てを消し去ってやる!」
ユーリスはリヒトストーンを握りしめ、憎悪をたぎらせていた。

ーーーー

ヴィシャス城ーー

城内の廊下にエリレオとカシルがいる。

「エリレオ。昨日、お兄さんに会いに行って帰ってきてから変じゃないか?」
カシルは、エリレオの様子がどこかおかしかったので気になっていた。

「そ、そうか?」
ぎこちなく答えるエリレオ。

「…何かあったんだろう?話したくないなら無理に話さなくてもいいよ」
カシルは優しい口調で聞いた。

「…場所を変えてもいいか?」
エリレオは、静かに重い口を開く。

しばらくは黙っていようと思ったが、なぜか早めに言わなければならないような気持ちになった。

人に聞かれない場所を選び、エリレオはカシルに屋敷であったことを話した。


そして夜ーー

城の外はすっかり暗くなっており、夜勤の兵士たちが仕事をしている時間帯になっていた。

今日の仕事を終えたラスレンが歩いていた。

その途中で兵士長のソルゴに会い挨拶を交わした。

「珍しく早く仕事が終わってな。今日はシャークも来ているんだろう。どうだ?これから3人で飲みに行かないか?」
ソルゴは穏やかな表情で言い出した。

「ソルゴ兵士長と飲みに行くのは久しぶりですね」
仕事の口調で答えるラスレンは、内心喜んでいた。

ソルゴはラスレンにとって上司だが、物心がつく前から育ててくれた養父でもあった。

ソルゴは、本当の息子のように育ててきた二人と飲みに行けることに嬉しさを隠せずにいた。

ラスレンとシャークとソルゴの3人は、酒場で一緒に酒を酌み交わしながら、家族の思い出などを語り合った。


…しかし、この穏やかで平和な時は長く続かなかったーー


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