第3章

「ああそうそう。あの闇の奴なら今日収容所へ送ったぞ」
ユーリスは、まるで他人事のように言い出す。

「まさか…!?先程外で見た赤い髪の人のことでありますか?」
エリレオは嫌な予感がした。

「ああそいつさ。収容所に入ったら二度と出られないだろうな」
自分には全然関係ないという態度のユーリス。

(セディルだったのか…!?)
エリレオは衝撃を受けた。

あの時は、連れて行かれていたのがセディルだと認識していなかった。
セディルの姿が以前とは変わり果ててしまっていたからだ。

(なんということだ…)
エリレオの顔が青ざめていく。

「どうしたんだエリレオ?顔色が悪いぞ?」
「ぼ、僕は大丈夫でありますよ」
ユーリスに言われドキリとするエリレオ。

「もしかして、エリレオも闇の力の呪いをかけられたんじゃないのか?あの闇の奴といることがあったからな」
ユーリスの言葉を聞いて背筋に冷たいものが走った。

「え…?い、いいえ。あ、兄上のことが気になったのであります」
エリレオは話を誤魔化す。

「ルインのことか。後遺症も残らないと医者が言ってたから必ず元気になるさ」
ユーリスはいつもの調子で答えた。

「そうでありますよね。それでは僕は失礼いたします」
エリレオは内心ハラハラしながら話を終わらせた。

ーー

エリレオは、屋敷の玄関へと歩きながら考え込んでいる。

(ユーリス様…あのような人だったのか?)
エリレオはユーリスから何か怖いものを感じていた。

(それにしても、セディルが闇の力を持つ者だったとは…)
今度はセディルのことが気になるエリレオ。

闇の力は邪悪な者が生まれつき持っている。
闇の力に取りつかれて力を持ってしまう者もいる。
闇の魔力が強いほど危険で注意が必要。
この世界ではそう伝えられていた。

だが、セディルからはそんな恐ろしさは微塵も感じられなかった。

セディルは自分たちと何も変わらない普通の人だった。

それに、ラスレン隊長が言っていた。
闇の力を持つ者全てが敵ではない。
悪意はなくても闇の力を持つ者はいる。

セディルがそうなのではないか。

エリレオは、収容所に連れて行かれたセディルが気になった。

しかし、今は戦いになるかもしれない状況であり、兵士としての仕事を優先させなければならなかった。

もし助けに行こうとしても、自分一人だけでどうにかできるような事ではない。

それに、闇の者に手を貸せば裏切り行為となり、仕事を解雇されこの国から追放されてしまうだろう。

エリレオは重い足取りでリューエル家の屋敷を後にした。

ーー

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