第3章

リューエル家の屋敷ーー

エリレオは、案内されたルインの部屋の前に立っていた。

「この部屋に兄上が…」
エリレオは張り詰めた心で、ゆっくりと扉に手を掛ける。

「失礼するであります」
エリレオは緊張しながらルインの部屋に入っていった。

包帯だらけのルインは、ベッドで体を起こして座っていた。

「…!ま、まさか…。お前はエリレオか…」
ルインはエリレオに気がついて目を見開く。

「は、はい兄上。エリレオであります。あ、会うのは10年ぶりでありますか」
エリレオはぎこちなく喋る。

「…」
ルインは無言だった。

10年間顔を合わせていなかったため、何を話せばいいのかわからない。

「僕は、兄上と話がしたかったのであります。戦いが始まってしまう前に会おうと思ってここに来ました」
エリレオは理由を話した。

「…話すことはない」
ルインは落ち着いた口調で顔を背けた。

「…わかりました。では兄上にこれを…。これは兄上の好きなお菓子でありましたね」
エリレオは小さな箱を取り出した。

「それを置いて今すぐ出ていってくれ」
ルインのその言葉とは裏腹に、あまり冷たさを感じなかった。

「それでは、ここに置いてもいいでありますか?」
エリレオは、手前側にある机まで歩いた。

「ああ」
ルインはエリレオとは顔を合わせず複雑な表情をしている。

エリレオは、綺麗に整理されている机の上にお菓子を置いた。

「兄上、お大事にして下さい」
そう言ってエリレオは部屋を出た。

部屋の扉が静かに閉まる。

ルインはエリレオが置いていったお菓子を見ていた。

「覚えて…いたのか…」
ルインは懐かしそうな目をしている。

それは、昔ルインが食べていたお菓子と同じものだった。

ーー

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