第3章

闇の者たちの動きが活発になってきている。

そのためヴィシャス国は、敵の襲撃に備え警戒態勢を強め、北の国境にある砦の守備も固めていた。

人々の間では、闇の者たちとの戦いが始まるのではないかという噂も広まっている。


ヴィシャスから南西にあるルーニアの街ーー

ヴィシャス城の兵士の、エリレオが歩いている。

怪我をしている兄ルインのお見舞いに行くため、リューエル家の屋敷に向かっていた。

歩いていると遠くの方に人だかりが見えてくる。

「何なのだ?何かあったのか?」
エリレオは近づいて行った。

見てみると、拘束され連れて行かれる少女がいる。

ショートの赤い髪はボサボサだった。
服はボロボロで体は傷だらけ、顔にも痣があり、ろくな食事も与えられなかったのか痩せている。
表情もなく生気のない目をしていた。

目を逸らしたくなるような気持ちになるエリレオ。

その少女が街の人たちから注目されていた。

「あいつが、闇の者たちがいる収容所に送られるヤツだな」
「なんでもリューエル家の屋敷の地下牢に囚えられていたんですって。一体どんな罪を犯したんでしょうね」
「あの女!ユーセリアス様と一緒にいたのよ!なんて図々しい女なのかしら!許せない!」
街の人々の声が聞こえてくる。

「忌々しい闇のヤツめ!さっさと街から出ていけーー!」
「二度と来ないでおくれよ!汚らわしい!街が呪われたらあんたのせいだからね!」
少女に罵声を浴びせる者。

「コイツめ!これでも喰らえっ!」
「よし!オレもやるぜ!そらよっ!」
少女に石や生卵などを投げつける者。

「さあ!みんなで闇の奴を追い出そう!この街の平和のために!」
「おう!オレたちの街を守るんだー!」
便乗して盛り上がる者までいる。

半数以上の者たちは、エリレオのように黙って見ているだけだった。

嫌な感情が湧いてきて見ていられなくなったエリレオは、その場から逃げるようにして屋敷へと歩いていった。

ーー

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