第3章

200年前、英雄セインレスは光の聖剣レクレヴァスを持ち、闇組織ヴァルツの野望を阻止して世界を救った。

あれから世界は平和に見えた。

…しかし、その裏では、闇の力を持つ者への差別や迫害があった。

世界を救ったのは、英雄セインレスの持つ聖剣の光の力であったため、光の力は敬う力とされ、光の力を持つだけで高い地位に就く者もいた。

世界を支配しようとしていたヴァルツ達が闇の力を持つ者の集団であったため、闇の力に対する偏見や嫌悪感が更に悪化してしまっていた。


7年前――


光の力を持つ無名の集団が、アリストラ国へと乗り込んで来た。

強大な魔力を持つ闇の力は危険なため、安全のために保護するという名目を立てて、魔力の高い者を捕らえていった。

「返してよー!おとうさんとおかあさんを返してよー!」
子供が、光の集団のうちの一人に必死にすがりついて泣いている。

そこへ、位の高そうな男が歩いてきた。

「おい。その子供を黙らせろ」
位の高そうな男が、子供がしがみついている部下の男に低い声で命令する。

「しかし…まだ子供で…」
言われた部下の男が困っていると…

「もういい!私がやる」
位の高い男が子供に魔力を放つ。

子供は魔力の衝撃で気を失って倒れた。

「我々の仕事を邪魔する者は、誰であろうと容赦はせん」
位の高い男が、冷淡に言い放つ。

隠れながら移動していた少女と少年が、遠くからその様子を見ていた。

当時、13歳のレシエナと11歳のロルウェだ。

「なんて人達なの…!もう許せない!」
黙っていられなくなったレシエナは飛び出して行ってしまう。

「姉さんっ!」
ロルウェが止めるが無駄だった。

「いいかお前達。我々がなぜここへ来たのかわかるか」
位の高い男が部下達を見た。

部下達は黙って話を聞く。

「危険な闇の力が強まれば200年前の悲劇をまた繰り返してしまう恐れがある。それを阻止するために動いているのだ」
位の高い男が主張していた。

「勝手なことばかり言わないで!」
レシエナが声をあげた。

「なんだ貴様は?子供が何をしている?」
位の高い男をはじめ、周りの者達が、急に出てきたレシエナに注目した。

「闇の力があるからなんだっていうの!私たちは何もしてないじゃない!」
レシエナは大声で言い切る。

「その闇の力は恐ろしい魔力なのだ。その力でまた世界に厄災が降り掛かってはかなわんからな。だからこそ我々はこの世界の平和を守るために行なっているのだ」
位の高い男は、自分達の行いを正当化した。

「私達はこの場所で静かに暮らしていただけよ!それなのに、どうしてこんなことするの!」
更に怒りが上昇したレシエナが強い口調で言い放つ。

だが、レシエナの言葉は位の高い男には届かず、子供の言っていることとして聞き流されていた。


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