第3章

ヴィシャス国から離れた北の大陸には、他国とは隔絶された国アリストラがあった。

200年前、闇の力を持つ者は理不尽な扱いを受け、陸の孤島アリストラへと追いやられ、その地での生活を余儀なくされていた。

もともと、アリストラに王はいなかったが、追いやられた者達の中に王族の者が存在し、アリストラの国を治めることになり、アリストラ王国が誕生した。

そして現在ーー  

現在、アリストラの小さな城は所々崩れて壊れており、建て直すお金もなく資材も不足していた。
王族の者も今はいない。

城から少し離れた場所には大きな屋敷があった。
屋敷の広場にリフィーレ家の貴族と、執事や護衛兵達。
そして、他国からやってきた者や、黒い鎧を身に付けている者達が集まっていた。

「オルベーツ!」
広場に一人の女性が怒った様子で駆け込んできた。
紫の長い髪に水色の瞳。
綺麗な顔立ちをしており、外見からは高貴そうな印象を受ける。

「レシエナ様!?どうしてここに!?」
オルベーツと呼ばれた中年の執事は驚いた。
品質の良い服装をしている。

「ロルウェ!あなたにも聞きたいことがあるのよ!」
レシエナはオルベーツの近くにいた人物にも言った。

「姉さん!?どうやって来たんだ…!?くっ…見張りの兵は何をやっていたんだ!?」
ロルウェという人物も驚いていた。
レシエナと同じ紫と水色の瞳をしており、長めの髪を後ろで束ねている。

「どういうことなの!?きちんと説明して!」
レシエナは二人に問い詰めた。
ある日、レシエナだけがいきなり軟禁されたのだ。

「オレは、姉さんを危険な戦いに巻き込みたくなかったんです。相手はあの強国ヴィシャス…。もしもの時には姉さんだけでも生き延びてもらおうと思ったんです」
ロルウェの言葉は嘘ではないが、本当の理由は他にもあった。

「私が聞きたいのは今の状況よ!闇の組織シュヴァがここにいるのはどうしてなの!?」
レシエナの口調が更に強くなる。

「見ればおわかりになる通りです。ヴィシャス国を占領するため、シュヴァに力を貸してもらうのです」
対するオルベーツは落ち着いた様子で当然のように口にする。

「ヴィシャス国に戦争を仕掛けるの!?これじゃまるで私達が侵略者じゃない!?」
レシエナの表情が険しくなる。

「それは言いすぎです!これはオレ達の国、アリストラ国を滅びから救うためです!国が安定すれば人々の暮らしが良くなり、多くの者を助けることができるんです!」
ロルウェは、国を豊かにしたいという強い願望があった。

アリストラ国にも情報が入っていた。

ヴィシャス国のネルス王が亡くなったという話だ。

現在の国王であるモーリムの評判は悪かった。
我儘で横柄な態度に加え、金や力を求めている強欲な王だという。

ヴィシャスの国力低下を狙った闇の組織シュヴァが、ヴィシャス国に侵攻を計画。

それを知ったアリストラ国の執事オルベーツは、闇の組織シュヴァに協力を申し出ようとロルウェに話を持ちかける。

国や家族を助けるためなら手段を選ばないロルウェは、オルベーツに賛成し闇の組織シュヴァと連絡を取る行動に出た。

一方レシエナは、得体の知れないシュヴァに対して良い印象はなかった。

しかし、レシエナの知らないところで話が先へ先へと進んでいき、現在にまでいたってしまったのだ。

様子がおかしいとは思っていたが、こんな大規模なことを考えているとは思わなかった。

それに、あの闇の組織シュヴァと協力していたとは……


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