第3章

ネルス王が崩御し、息子のモーリムが国王に即位した。

だが、モーリムが王位を継ぐことを快く思わない者が多数いた。

先代の王ネルスは、温厚で思慮深く、誰からも信頼される人物であった。

しかし、モーリムは傲慢で高飛車な性格のため人望がなかった。

王になったモーリムは優越感に浸り、権力を誇示していた。


城の謁見の間にてーー

「陛下。あの子供たちに罪はありません」
ラスレンはモーリムに話をしていた。

「ええい!まだ、そんな甘いことを言っているのか!奴らは闇の者なのだぞ!」
モーリムは怒鳴る。

「確かに、あの子供たちは闇の力を持っていますが、私は罰を与えることには反対です」
ラスレンが意見を伝えた。

「口を慎め!」
王を護衛する兵士が声をあげる。

その人物は30代半ばくらいの近衛隊長バルトだった。

「ラスレンよ。言葉だけはご立派なことだな。平和主義者にでもなったつもりか?青臭いだけの若造の理想論で何が変わるというのだ?」
バルトはモーリム王に忠実な部下であり、ラスレンをよく思っていない人物だった。

「バルトの言う通りだぞラスレン。お前は英雄の子孫だからといって自分が英雄気取りになっているのではないか?いつまでも自分の世界に浸っていないで現実を見ろ。わかったな」
モーリムは横柄な態度でラスレンに忠告した。


モーリム王の暴政や弾圧に国の情勢は悪化していく。

城の仕事を辞める者も出始め、街を出て行く者や、反発を覚える者も出てきた。

ヴィシャスの国は不安定になり始めている。

国力が低下してきたヴィシャス国を狙う者達が目を光らせていた。

この機会を逃してはならないと――


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