第2章

ラスレンは、自分のせいで大切な妹を亡くしてしまったという強い自責の念に捕われていた。

そして、ラスレンはソルゴに自ら辞任を申し出た。

「辞めれば、お前は二度とこの国の兵には戻れんぞ。本当にそれでもいいのか?」
ソルゴは、兵士長としてではなく父としてラスレンに聞いた。

「…それはわかっています…。俺は自分が許せないんだ。俺は…」
ラスレンは、それ以上言葉が出なかった。

「どうするのか決めるのはお前自身だ。お前に考える時間をやろう。明日までに答えを出せ」
ソルゴは、父としては辞めてほしくなかったが、あくまで兵士長としての言葉を伝えた。

ーー

ラスレンはシディエスと話をした。

「私なら継続する。責任を感じているなら投げ出さずに最後まで隊長としての責務を果たす。どんなに辛くても私はそうするだろう」
シディエスは自分の考えを述べた。

(俺は…英雄の子孫として子供のころから諦めずに頑張ってきたのに、ここで終わっていいのか?)
ラスレンに迷いが見える。

「お前がどうしてもというなら私は止めない。ただ、お前を信じてついてきている部下たちがいる。そしてお前は人々の期待を集めているのだ。個人的な問題だけでは済まされない」
シディエスの目は真剣だった。

「!…」
(…俺は、自分のことしか頭になかった。周りのことも考えず自分が辞めるだなんて勝手すぎる…。ここにヴィリーがいたら叱咤されてるだろうな)
ラスレンは、英雄の子孫としての立場の重さ、そして周囲の存在に助けられていたことに気付いた。


そして次の日ーー


「さて、どうするのだ?ラスレン」
ソルゴがラスレンに問う。

「ソルゴ兵士長。俺は自らの過ちを受け入れ、これからも隊長としての職務を全うします」
ラスレンは、はっきりとした口調で返した。

「…そうか。ならば自分の持ち場に戻れ」
ソルゴは安心したような顔を見せた。


――――


ラスレンが一人で歩いていると、二人の兵士がやって来た。

「貴方がラスレン隊長ですね」
二人とも見慣れない顔の兵士だった。

「モーリム様がおっしゃっていた方ですか…」
兵士の一人が言い出すと、ラスレンは嫌な予感がした。

「あなたが英雄の子孫だから隊長の着任に優遇されたんですよね」
もう一人の兵士が嫌味を言ってくる。

「そういえば、降服した敵との交渉が失敗してソルゴ兵士長の娘が命を落としたのは、貴方の行動が軽率だったからですよね」
その兵士の言葉はラスレンにとって痛烈だった。

「やめろお前ら!」
ラスレンの部下のナータが様子に気づいて駆け付けた。

「ナータ!」
ラスレンはナータを止めた。

「しかし…ラスレン隊長!」
ナータがラスレンの方を見る。

「俺が隊長として相応しいかどうかは、俺自身の実力で証明しなければならないんだ」
ラスレンは、隊長としての決意をしていた。


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