第1章

城の外では、証明書を一生懸命探しているエリレオの姿があった。

「ああ…どこへいったのだ?あれがないと僕は…」
目を凝らし、あちこち見回している。

「エリレオ」
名前を呼ばれて顔を上げたエリレオの前には20代前半の青年が立っていた。

金髪に緑の瞳。他の兵士達とは違う青い鎧に赤いマントを着ていた。

「ラスレン隊長」
エリレオが青年の名前を口にする。

ラスレンという青年はエリレオが所属している部隊の隊長だった。

「ほら、お前これを探してたんだろ」
ラスレンは紙をエリレオに差し出す。

「ああっ!僕の証明書であります!」
エリレオは喜んで受け取った。

「拾ったらお前の名前が書いてあったんで、届けようとしてたところだったんだ」

「ありがとうございます!心から感謝しているであります!」
エリレオはラスレンに礼を言い頭を下げる。

「よかったな。もうなくしたりするなよ。大事なものだからな」
ラスレンは優しく笑う。アシェドのあの笑みとは正反対だ。

そして、ラスレンが行ってしまうと…

「おい」
いつのまにかエリレオの隣にアシェドがいた。

「もしや、探しに来てくれたのか?」
「違う」
エリレオの質問に速答で否定するアシェド。

「さっきお前と話していた奴は?」
「奴、とは失礼な!あの人はラスレン隊長だ」

ラスレンは伝説の英雄セインレスの血を引いており、伝説の聖剣レクレヴァスの継承者だ。
ソルゴ兵士長の次に強く、王国で二番の剣士だった。

「ふ~ん」
エリレオの話に、アシェドは気の抜けた返事をする。

唐突にアシェドがスッと歩き始めた。

「どこへ行くのだ?」
エリレオは歩いていくアシェドを呼び止める。

「ラスレンに会いに行く」
「隊長を呼び捨てにするな!こらっまてっ!」
エリレオは早歩きでアシェドに追い付く。

「お前がどんな振る舞いをするのかわからんからな。僕もついて行こう」
疑うような目をしているエリレオはアシェドを見張る気でいる。

「勝手にどーぞ」
アシェドは投げ捨てるように返した。

「ラスレン隊長に無礼なマネをしたら許さんぞ」
エリレオはアシェドにしっかりと警告した。

しかし、アシェドはエリレオの声を無視して歩き続けている。

「おい!聞いているのかアシェド!わかっているのだろうな!」
エリレオが念を押すように再度警告をするが、アシェドは無関心な様子だった。

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