第2章

――3年前‐ラスレン20歳、カシル14歳――


「ラスレン兄さん!」
街はずれで少女がラスレンを見つける。

少し長めの紫髪に黄緑色の大きな瞳をした可愛らしい少女。
ラスレンとシャークの義理の妹のヴィリーだった。

「兄貴、ここにいたのかよ」
ラスレンの弟シャークもヴィリーと一緒だった。
少し後ろにはカシルもいる。

「シャーク、ヴィリー。それにカシルまでどうしたんだ?」
ラスレンは、のんびりとしていた。

「どうしたのじゃないわよ!シャーク兄さんと一緒に探してたのよ。いなくなっ…」
ヴィリーは話を続けようとするが…

「やあカシル!久しぶりだな。元気だったか?シディエスが待ってるんだろう。早く行こうか!」
ラスレンはヴィリーから逃げるようにカシルに話しかけて早々と歩きだした。

「わっ!ラスレンさん?」
カシルはラスレンに引っ張られるように連れていかれた。

「ちょっと!ラスレン兄さん!」
ヴィリーは追いかけた。

そしてーー

「またヴィリーに怒られてしまったな」
ラスレンは苦笑する。

「あれでもあいつは兄貴のこと心配してたんだぜ」
「わかってるよ。いつもうるさいしな」
ヴィリーのことについて話すラスレンとシャーク。

「あ〜ら。うるさいって誰のことかしら〜?」
いつの間にかヴィリーが怖い顔をして立っていた。

「いや!今のは…!そんな顔するなってヴィリー」
慌てた様子のラスレン。

「本当に楽しそうだな。いいな…」
ラスレンとヴィリーのやりとりを離れた場所で見ていたカシル。

「あの二人がか?」
「…!」
隣にいるシディエスに言われてカシルはハッとした。

「以前からヴィリーのことを見ていただろう」
「兄さんっ!ぼ、僕はそんな…っ!」
シディエスの言葉にカシルは動揺する。

「なあシディエス。久しぶりに俺と勝負しないか?」
歩いてきたラスレンが声をかけてくる。

「お前はいつもそれだな」
「そうそう。兄貴らしいよな」
シディエスもシャークも、ラスレンの剣ひとすじである性格を知っていた。

「じゃあ、私も手合せに参加したいな」
ヴィリーが言い出した。

「ヴィリー。これは俺とシディエス、男同士の戦いなんだぞ」
ラスレンはシディエスと戦ってみたかった。

「いいじゃない。私もこの国の兵士だから剣の腕を上げたいわ。今は女だって戦う時代なのよ」
ヴィリーは、はりきっているようだ。

「わかったよ。ただし、俺とシディエスとの勝負が終わってからだからな」
「うん。わかったわ」
ヴィリーはラスレンの言葉を素直に聞いた。

「あの、ヴィリーさん。僕はまだ未熟ですが参加してもいいですか?」
緊張しながらカシルは頼んだ。

「いいわよ。よろしくね。カシル」
ヴィリーは元気よく答えた。

「は、はい。お手柔らかにお願いします」
カシルは嬉しそうな表情になる。

「一人で見てるだけってのもつまんねぇしなぁ。よし、オレもやるぜ」
シャークも手合せに参加することになった。

この5人はいつもこんな感じだった。


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