第2章

夕方、セディルはリファラのお見舞いに行った。
セディルは、綺麗な紙に包まれたお菓子をリファラに差し出す。

「試食しておいしかったから買ってきたんだ。よかったら食べてみてよ」
セディルはお菓子を手渡した。

「ありがとうセディル。…ん?」
リファラがふと見ると、セディルの左腕に包帯が巻いてあることに気付く。

「その腕はどうしたの?大丈夫?」
リファラが心配そうに言う。

「派手に転んじゃってさ。ははは。まあ大したケガじゃないよ」
明るく答えるセディル。

セディルはしばらくリファラと話をする。

「無理しないで元気になったら、また一緒に旅しようね」
「うん。また3人でね」
セディルとリファラは穏やかに言葉を交わした。

その後セディルは医務室を出て、街の宿屋へと向かった。

――


セディルは、宿屋の食事をとる場所で、昼食に買ったパンの残り一枚を食べ、コップ1杯の水を飲んで終わる。 

財布の中は雀の涙ほどのお金しかなく、明日の朝食の分はなかった。

泊まる所は相部屋の宿泊施設で、一部屋に10人くらいのベッドがあり、駆け出しの冒険者や旅の初心者がよく泊まる宿だった。


セディルはベッドに横になった。

(なんだか、前の生活を思い出してしまったな)

逃亡生活していたころは、素材を売っては泊まる場所を探し、宿に泊まれない場合は野宿していた。

いつ追手に見つかってしまうかわからないので、同じ場所には長居しないようにした。

食べ物は保存できる物を持ち歩き外で食べていた。
食べられる食材を調べて採って食べたりもしたが、初めのころは失敗をして苦しんだ経験もあった。

逃げ延びることが最優先だったので靴は安物は買わず、走りやすく長旅に適した靴を選んでいた。
服は破れれば繕っていた。

その頃は女だとバレないように男装して男のフリをしながら生きてきた。
今は、完全に女の格好でいるため、なんだか変な気分だ。

(前に比べれば今の方がずっといい。追手もいないし、性別を偽る必要もない。何よりも仲間がいる)

セディルは色々と考えていた。

過去のことを考えていても仕方ない。

今はもう゛あの時゛じゃない。
200年後の゛今の時゛がぼくの現実だ。

そして、ぼくはもう一人じゃない。

あの時は、誰かと一緒にいることなんてほとんどなくて、いつも一人だった。

でも、今のぼくには仲間がいる。

ユーリス、リファラ、エリレオ、カシル。 
みんなと過ごせて本当に嬉しい。

ぼくは、今いるこの時代を生きていくんだ。


セディルはそのまま眠ってしまった――


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