第2章

昼過ぎーー

大僧正レハラルドと従者のルインが城に来ることになった。

セディルがエリレオとカシルと話をしているとユーリスがやって来た。

「オヤジとルインがもうすぐで来るってさ」
ユーリスが言い出した。

「そ、そうなのか」
セディルは平静を装っていた。

(まずい…!ぼくはユーリスのお父さんと従者の人には顔が知られている…!)
セディルは、顔を合わせれば大変な事になると思った。

「みんなゴメン。ぼくは体調があまりよくないから休んでいるよ」
セディルは悪いと思いながらも仮病を使った。

「ぼ、僕はセディルが心配だから、セディルを医務室まで送るであります!」
エリレオもなぜか焦っていた。

セディルとエリレオの二人は歩いていった。


そして――


城の中にある休憩室の椅子にセディルとエリレオは座っていた。

「医務室に行かなくて大丈夫なのでありますか?」
エリレオが心配そうにセディルを見た。

「少し休んでいれば大丈夫だよ。エリレオはカシルたちと一緒にいなくていいのかい?」
セディルは気を使ってくれるエリレオに申し訳ないと思っていた。

「僕は行かないであります…。あの人とは顔を合わせずらいのであります…」
エリレオの表情が曇る。

「あの人…?」
セディルが不思議そうな顔をした。

「実は…レハラルド様の従者は、僕の兄上なのであります」
エリレオが静かに口にした。

「お兄さん!?」
セディルは驚いた。

(あの人はエリレオのお兄さんだったのか…!あの時は夜で暗かったから、はっきりとした顔はわからないんだよなあ)
セディルは、ルインの顔を暗闇の中でしか覚えていなかった。

「僕の兄上のルインは…」
エリレオは話し始めた。

エリレオの兄のルインは、幼いころから魔力が高く魔法の才能があった。
先天的に魔法の才能がある者は珍しく、ルインは魔法の道に進むことを強く望んでいた。

エリレオの父のゴーケンは、それを反対していた。
先祖代々伝わる剣技を長男であるルインに継がせ、この国の兵士として仕えるように育てたかった。

しかし、ルインは剣の道を選ばず頑なに拒否し、家にいない時間が多くなった。
ルインの部屋には魔法関係の本があり、こっそりと魔法の修業をしていたのだろう。

そしてルインは、エリレオが9歳の時に謝罪の手紙を残していなくなった。
それ以来、家に帰らなくなってしまった。
 
「もう何年も兄上とはまともに顔を合わせたことがないのであります。小さいころは兄上と遊んでいた記憶があるのでありますが…」
エリレオは、兄ルインとは他人のような関係になっていた。

「…」
セディルは黙ってエリレオの話を聞いていた。

「急にこんな話をしてしまってすみませんであります」

「いいんだエリレオ。話してくれてありがとう」
セディルは、謝るエリレオに優しく答えた。

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