第2章

カシルは兄シディエスから聞いた話を伝えたーー

「初めは、自分がどこからきたとか、何者なんだとか気にしていたけど。僕を探してくれた兄さん、僕を養子に迎えてくれた父さん母さんがいてくれたから幸せだった」
そう話すカシルは、優しい瞳をしていた。

「僕は、今の人生を大事にしたい。これからもそう生きていくんだ」
カシルは生きる思いを伝えた。

(カシルにそんな過去があったなんて…)
セディルは、カシルの話を強く心に感じていた。

ぼくは、戦い方だけを忘れるという、一部の記憶が抜け落ちているだけだもんな。

こんな中途半端な記憶喪失なんかじゃなく、いっそ全ての記憶なんかない方が…
闇の力も過去も…何もかも忘れてしまった方が良かったんじゃないのか?

そうなれば、自分を“”普通の人“”として思いながら過ごせたかもしれない。

闇の力にも過去にも捕らわれずに生きていった方が幸せに…

…いや!
何を考えてるんだ、ぼくは…!

母様のことだけは絶対に忘れちゃダメなんだ!

それに、記憶がなくなっても闇の力はなくならないだろう…

それに…
本当に記憶喪失になっているカシルやリファラに失礼じゃないか。

真実を知るために生きていくリファラ。
真実を知らなくても今を生きるカシル。
お互いの道は違うけれど、
二人とも前向きに生きているんだ。

リファラもカシルも強いなあ。

ーー

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