第2章

四人が部屋へと歩いている途中――

「ラスレン隊長!」
大柄で少し太りぎみの兵士がラスレンに声をかけた。

「お、ナータ。午後のランニングは終わったのか?」
ラスレンは、友人のように気さくに返した。

「へへっ、おかげ様で前よりも速く動けるようになってきましたよ」
兵士ナータはタオルで汗を拭いていた。

「そうか。なら今度は、キヤと手合せしてみるのもいいかもしれないぞ」
「そうですね。あいつの一撃は速くて的確ですしね」
ラスレンの言葉にナータも同意している。


「あんな風に、個人の能力に合わせた訓練方を考えて、一人一人にアドバイスしているんだ」
ユーリスがセディルとリファラに説明した。


「ラスレン隊長」
「おお、どうしたキヤ?」
他の兵士に声をかけられたラスレンは、振り向いて答えた。

「今日は女の子とぶつかってしまったと聞きましたよ」
キヤと呼ばれた女性の兵士は、黒い髪に目鼻立ちの整った顔立ちをしていた。

「誰からその話を…っ?」
ラスレンの表情が少し変わる。

「アシェドが言っていました」
兵士キヤは落ち着いた口調で答えた。

「アシェド!?」
ラスレンは名前を聞いて驚く。

「ラスレンさんどうしたんですか?アシェドとは誰ですか?」
不思議に思ったユーリスがラスレンに話しかける。

「その者の話も部屋でしましょう」
ラスレンは真面目な顔で答えた。

――

ラスレンの部屋には、小さな本棚と机が置かれてあった。

セディルがふと部屋を見回すと、壁に肖像画が飾られているのを見つけた。

一つは20代くらいの男女が並んでいる肖像画だ。

男の方は橙色の髪、女の方は金髪でラスレンと似た顔立ちをしていた。

(ラスレンさんのご両親かな)

その肖像画の隣にもう1つあった。

少し長めの紫髪に黄緑の瞳、セディルと同じ年くらいの美しい少女が描かれていた。

(あの綺麗な人は誰だろう…)

「セディル?」
隣にいたリファラに声をかけられる。

「あっ、ごめん」
セディルはハッとした。


ユーリスは父レハラルドと話したことを、ラスレンに伝えた。


「…これは俺の一存だけでは決断できません。王様にお会いして話をしなければならないですね」
ラスレン一人だけで決められるような事ではなかった。

「ラスレンさん。これは父上からの手紙です。これを王様にお渡しするよう父上から言付かって参りました」
ユーリスは手紙を差し出す。

「ありがとうございます。これを王様に読んでいただければ、王様も協力して下さるかもしれません」
ラスレンは手紙を受け取った。

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